視人庵BLOG

古希(70歳)を迎えました。"星望雨読"を目指しています。
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アルプ 特集串田孫一

2007-08-30 08:04:37 | 読書
アルプ特集串田孫一
山口 耀久
山と溪谷社

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 酷暑も一段落した昨日、一昨年の7月、89歳で亡くなった串田孫一を”語る”「アルプ 特集串田孫一」(2007年 山と渓谷社刊)をひろい読みしていた。
 その中で辻まことが「山と高原」1965年1月に書いた文に引き寄せられた。
1965年、辻まこと52歳、串田孫一50歳のころである。
辻まことは1975年62歳で亡くなっている。

「アルプ 特集串田孫一」P124

串田さんのこと  辻まこと

直接串田さんを知らない人でも、ラジオやテレビで会ったことのある人なら気付くことだろうが、串田さんはとてもいい声をしている。バリトンであるけれども私のいい声という意味は歌手の声を指しているのではない。それはうまく言葉で表現できないけれど、耳にとどく最終のところできっぱとした男性的で誠実な勇気とでもいうような感じを与える強さがあるとともに、発声の最初にきわめてデリケートな顫音をもっていて、素直な感性と沈潜した思想が喉のスクリーンに漉過されてでてくる化学的な条件をよく示している。音色の点からいえば、その声はやや暗いオリーブ色であるが決してメランコリックではない。
 疑いもなく串田さんの声は串田さんの人格の一部であって、またその人柄のあたたかさをよく示している。
 解る人には、串田さんに一度会えば、この位のことは解るのである。然し、どんな人間も表現よりはもっと深いものだ。串田孫一は彼の表現したものだけでももっとずっと遠くて深い。

戦後いくばくもない日、まだ国電の窓ガラスが破れている頃のことだが、外地から帰った私は三十三歳位だった。電車の中でも街でも、見掛ける男は老人と少年ばかりであった。
 彼等は死に損なった年代であり或は死をまぬがれた年代のものだ。そして自分といえば、一度死んでしまった年代であった。
 傷ついたものはもとの生に立戻る努力をするだろうが、死んじまったものは、新しい生命を発見して、やり直さなければならない。赤ン坊のように眼ざめ、初めてのように世界を見付けなければならない。
 私は半ば無意識に自然に向った。「われ山に向いて眼をあぐ」という聖書の言葉が深い意味をもって意識され、中断していた山登りをはじめた。
 ある日有楽町の駅で串田さんに会った。串田さんは本を抱えてホームにしゃがんでいた。「時々めまいがして立っていられない」といっていた。 山へ出掛けても荷が重くて苦しいといっていた。私も体力がなくてもう登山をやめなければならないのではないかと絶望していたので、その言葉が身に泌みた。
 つぎに矢張り街で会ったとき、すぐに山の話がでて、すこし無理をしても続けていると、だんだん昔に戻ってきますと教えてくれた。
 私はその頃、もうつらくなってやめようかとおもっていたところだったが、それではという気になってまた熱をいれて山へ出掛けるようになった。そして串田説が正しかったことが解った。

 串田さんの書くものから私はずいぶんいろいろなものを教わったが、それ以上に書いている文章が読むものの心に惹きおこす想像の方に強い魅力をもっている。それは半ば自分であり半ば串田孫一である。

 多くの人には理解できないことかも知れないが、串田さんの文学は、戦争の文学であって、戦場の荒廃した焼跡の死から新しい生を証明した一輪の花なのだ。
 しかしその花は地味だから一寸読者が文章の上をぶらついても仲々わからないだろう。

(1981年「山の風のなかへ」所収 画家・エッセイスト)


実はこの文、所蔵している「辻まことセレクション2 平凡社刊」の229ページに掲載されていた。
発刊が1999年となっているが購入時当然目を通していた文であろうが記憶にない。

それが「アルプ 特集串田孫一」に掲載された文を読んだ時、

 ”多くの人には理解できないことかも知れないが、串田さんの文学は、戦争の文学であって、戦場の荒廃した焼跡の死から新しい生を証明した一輪の花なのだ。”

というフレーズの異様な想像力に圧倒されている自分にとまどっている。


辻まことセレクション〈2〉芸術と人 (平凡社ライブラリー)
辻 まこと
平凡社

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『辻まこと全画集』解説 「無言の対話」より 串田孫一
コメント (1)
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東京都庭園美術館「バレエ・リュスの音楽」

2007-08-26 09:29:00 | 文化
昨日、東京都庭園美術館で9月17日まで開催されている「舞台芸術の世界~ディアギレフのロシアバレエと舞台デザイン」展と、その特別企画「バレエ・リュスの音楽」(お話と演奏)にいってきた。
実は小生、バレエなんってまったく関心外だったのだが、8月6日庭園美術館で開催されたミュージアム・コンサートにいった時、初めて視たレオン・バクストやアレクサンドル・ブノアの衣装や舞台デザイン画の斬新さにビックリ!そのときはゆっくり観賞できなかったので、昨日は時間をたっぷりとって観賞した。

写楽の役者絵を視てるような気分になった。何故かエイゼンシュタインの映画「アレキクサンドル・ネフスキー」を見直したくなった。

「レーリッヒの青」で有名なニコライ・レーリッヒもバレエ・リュスに関係していたようだ。

「バレエ・リュスの音楽」(お話と演奏)はサテイで有名なピアニスト島田璃里さんと作曲家山口博史さんのトークと若手ピアニストによる下記楽曲のさわりの連弾だった。

1.「アルミードの館」  (作曲:ニコライ・チェレプニン)
2.「シェエラザード」  (作曲:ニコライ・リムスキー=コルサコフ)
3.「ダフニスとクロエ」  (作曲:モーリス・ラヴェル)
4.「ナイチンゲール/うぐいすのうた」  (作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー) 
5.「ペトルーシュカ」  (作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー)
6.「パラード」  (作曲:エリック・サティ)

久しぶりに「ダフニスとクロエ」のさわりを聴いてCDをこれから買にいくつもり。


夜のファサード。この時間に視るのは初めて。
木星が高く視え、左には月齢12.5の月が上がってきた。8月28日は皆既月蝕だ。
サアーテ、何処で呑みながら視るか?
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トランスフォーマー

2007-08-20 07:48:42 | 猫、猫・・・
先日、変身ロボット活劇(?)「トランスフォーマー」を観てきた。
小生的には思った以上に楽しめたが、小生より下のガンダム世代の反応はどうだろう?
小生が楽しめたというのは、主人公の男の子の親爺の愛車がオースチン・ヒーレー3000だったり(これがとても程度が良さそう!)、米政府の秘密基地でデジタル回線が使えないので、短波無線で連絡をとろうとする通信機にHallicrafters SX-96がチラリと出てきたりしただけで嬉しくなってしまう,オタクの「良かった!」といっているにすぎないが。

マアー、これでますます日本のロボットおもちゃが売れればそれで良しとする?


秋、冬に観たい映画メモ

さらばベルリン (9/22公開)
 1945/4/30
 ソ連軍によりベルリン陥落。ヒットラーのドイツ第三帝国崩壊。
 7/3頃
 アメリカ軍ベルリン到着。
 このころ映画の主人公(ジョージ・クルーニー)はポツダム会談取材のためベルリンに入る。
 7/17-8/2
 ポツダム会談

グッド・シェパード 10月公開
 C.I.A.創設期(1947年~)頃の話
 元CIA欧州支局長、ジェームズ・アングルトンの話を元にしているといわれる。
 ロバート・デ・ニーロ監督

クローズZERO 10/27公開
 監督:三池崇史
 チンピラをやらせたらピカイチのやべきょうすけ出演

ナショナルトレジャー リンカーン暗殺の日記  12/21公開
 ナショナルトレジャーの続編。ダイアン・クルーガーがでていればそれでいい

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定期健診

2007-08-16 03:15:53 | 星望★雨読
働いていたときは一年に一回職場で定期健診があった。
しかし退職した場合はどうだろう?
地元の区では一年に一回、誕生日あとの2ヶ月間、最寄の医療機関で検診がうけられるとのこと。
手続きをし、馴染みの医者にいって検診を受けていた。
検査項目に眼底検査もあり、これはさすがに馴染みの医者では調べられない。
そこで区内の眼科病院で受診した結果がこれである。


「視神経乳頭陥凹」?

早速ネットで調べると緑内障の疑いがあるということか?
それでこの前の水星観望会のときのようなことが起こったのか?
再検診を受けるとやはり緑内障の兆候が出ているとのこと。目薬点眼、定期的に視野検査、眼底検査、眼圧測定をおこなうこととなった。

眼の病気は15年くらい前に網膜はく離を患っている。
網膜はく離のときは発見が早かったため手術後、日常生活に不自由しない程度に回復したが、眼の疾患は痛みがない分、その危険度を察知出来ないので危険である。
養生、養生、ブルーベリーか鰻か!?

コメント (5)
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ペルセウス座流星群観望会

2007-08-13 10:28:01 | 天文関係

昨夜、いつもの星仲間とペルセウス座流星群観望会をおこなった。
観望場所の井の頭公園グランドは全周開けていてとても視界が良く、気にしていた外灯の光も思ったほど気にならない場所だった。欲をいえば国立天文台内みたいに足元のみを照らす照明にしてくれると嬉しい。

参加者はいつもの星仲間、その友達と家族、その他グランドに流星群を見に来られていた方々の飛び入りなど、のべで25名を超えていたのでは?
そのなかで大活躍だったのはNさんとそのお友達のIさん、高橋製の13㎝屈折望遠鏡(上写真)を持ち込まれて、二重星や星団、そして天王星、海王星(!)まで見せていただいた。
とくに感激したのはIさん、まさに人間スターガイダーで、昨夜は夏の東京にしては星が良くみえていたが、それでも星探しは結構難しい。海王星をみごとにオートガイド無しで捕らえて見せていただいたのには、ただただ「凄い」の一言!
いつもパソコン画面上でターゲット星をクリックして、あとはかってに望遠鏡がその星を視界にいれてくれるのを待っている小生にとっては、驚愕の世界である。
Iさんの頭の中の星図には何等星までインプットされているのだろう?

さて肝心の流星群だが、小生は4つ確認。いずれもわりと低い高度だった。
火星が見えてきたころ撤収した。
撤収(午前2時頃)しようとグランドを歩いていると、トラックを何人もの人が黙々と走っている。確かに昼間よりは涼しいだろうが、やはり都会の公園であり都会のライフスタイルを感じた。
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