久しぶりにRadioheadなんぞを聴いている。今聴いているのは2000年に発売された4th『KID A』。前作『OK コンピューター』でギターロック界の頂点を極めた彼らがその音楽性から大きく離れ、テクノ、エレクトロニカの領域に突っ走ってしまった衝撃作である。メロディーをバラバラに解体し、一音一音を分子レベルで研ぎ澄ませたような、電子顕微鏡が必要なくらい超繊細な音世界をもつ(なんだそりゃ)『KID A』。いきなりこんなに音楽性変わったらとりあえず「トム・ヨーク(Radioheadの中心人物)に何があったんだ!?」と勘ぐりたくもなる問題作であり話題作である。本当、いろんな音楽雑誌が大騒ぎだったよ。
Radiohead、私は美麗メロディー連発の1st『Publo Honey』(椎名林檎もカバーした名曲「creep」収録)が大好きだったので、巷で問題作とばかり言われている『KID A』が自分の耳にどんな風に入ってくるか非常に興味があった。2000年当時、エレクトロニカなんて全然聴かなかったし。でも一曲目「EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE」を試聴し、静かで不穏なイントロが耳に入り、30秒で心を奪われてしまった。あの衝撃は今でも忘れられない。自分がこんなに暗めの音楽の虜になるとは思わなかったから。で、買って、対訳を読みつつ聴く。そうそう、歌詞。まず、アルバムタイトルの「KID A」は、おそらく世界のどこかで既に誕生しているはずの、世界初のクローン人間を示唆しているそうだ。アルバム全体を貫くシリアスな音世界に乗って押し寄せてくる、誰もが見て見ぬフリをして楽観的に振舞おうとしてきた、この世界に確かに存在する救いようの無い現実を容赦なく切り取るような言葉の数々。「あなたは現実を知っている癖に、妄想の世界で生きている。これから先もこの現実を見ないフリして生きていくの?」と問われているような感覚。悲しい現実に対して何かアクションを起こせとまでは言わないが、その現実を感じることまでをも放棄してしまうのか?放棄して、嘘だらけの現実で上手く取り繕いながら生きていくなんて、正気?…最後の曲「MOTION PICTURE SOUNDTRACK」で、「来世で会おう」という言葉を残してこのアルバムは幕を下ろす。今じゃあRadiohead史上ダントツで一番好きなアルバムだなぁ。
聴いた当時が中学生だったのでこのアルバムの世界観にややビビりつつも夢中になって聴いていたのだが、ある日このアルバム全体を貫く言葉たちがhideの「ピンクスパイダー」の世界観に少しだけ似ていることに気づいた。自分が張った糸の世界が全てだった蜘蛛。そんな世界から自由を求めて空に飛び出してみたが、結局空に浮かぶ雲の一部に組み込まれてただ流れるだけだった。空=自由という価値観自体が間違っていた。もっと広い世界を見ろ、という意思。なんか似てる気がしない?『KID A』の混沌を、飲み込み易いように凝縮したような曲みたい、「ピンクスパイダー」。
そういえば『KID A』は、村上春樹の『海辺のカフカ』の主人公の少年が聴いた作品として登場してるらしい。村上春樹自身、「こんなアルバムが自分の思春期にあればよかった」とコメントしたそうだが、Radiohead側も、トム・ヨークが村上春樹愛読者だったりする。Radioheadの6th『Hail to the theif』発売時(2003年)のインタビューで、製作中に『ねじまき鳥クロニクル』を読んで、自身の新作と重なる思想を見出し頭がスッキリしたとコメントしたトム・ヨーク。両思いである。『海辺のカフカ』、読んでみようかなぁ。
追記
明日は4日。ビックコミックオリジナル早売りの日だ。刑事でるかな刑事。
Radiohead、私は美麗メロディー連発の1st『Publo Honey』(椎名林檎もカバーした名曲「creep」収録)が大好きだったので、巷で問題作とばかり言われている『KID A』が自分の耳にどんな風に入ってくるか非常に興味があった。2000年当時、エレクトロニカなんて全然聴かなかったし。でも一曲目「EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE」を試聴し、静かで不穏なイントロが耳に入り、30秒で心を奪われてしまった。あの衝撃は今でも忘れられない。自分がこんなに暗めの音楽の虜になるとは思わなかったから。で、買って、対訳を読みつつ聴く。そうそう、歌詞。まず、アルバムタイトルの「KID A」は、おそらく世界のどこかで既に誕生しているはずの、世界初のクローン人間を示唆しているそうだ。アルバム全体を貫くシリアスな音世界に乗って押し寄せてくる、誰もが見て見ぬフリをして楽観的に振舞おうとしてきた、この世界に確かに存在する救いようの無い現実を容赦なく切り取るような言葉の数々。「あなたは現実を知っている癖に、妄想の世界で生きている。これから先もこの現実を見ないフリして生きていくの?」と問われているような感覚。悲しい現実に対して何かアクションを起こせとまでは言わないが、その現実を感じることまでをも放棄してしまうのか?放棄して、嘘だらけの現実で上手く取り繕いながら生きていくなんて、正気?…最後の曲「MOTION PICTURE SOUNDTRACK」で、「来世で会おう」という言葉を残してこのアルバムは幕を下ろす。今じゃあRadiohead史上ダントツで一番好きなアルバムだなぁ。
聴いた当時が中学生だったのでこのアルバムの世界観にややビビりつつも夢中になって聴いていたのだが、ある日このアルバム全体を貫く言葉たちがhideの「ピンクスパイダー」の世界観に少しだけ似ていることに気づいた。自分が張った糸の世界が全てだった蜘蛛。そんな世界から自由を求めて空に飛び出してみたが、結局空に浮かぶ雲の一部に組み込まれてただ流れるだけだった。空=自由という価値観自体が間違っていた。もっと広い世界を見ろ、という意思。なんか似てる気がしない?『KID A』の混沌を、飲み込み易いように凝縮したような曲みたい、「ピンクスパイダー」。
そういえば『KID A』は、村上春樹の『海辺のカフカ』の主人公の少年が聴いた作品として登場してるらしい。村上春樹自身、「こんなアルバムが自分の思春期にあればよかった」とコメントしたそうだが、Radiohead側も、トム・ヨークが村上春樹愛読者だったりする。Radioheadの6th『Hail to the theif』発売時(2003年)のインタビューで、製作中に『ねじまき鳥クロニクル』を読んで、自身の新作と重なる思想を見出し頭がスッキリしたとコメントしたトム・ヨーク。両思いである。『海辺のカフカ』、読んでみようかなぁ。
追記
明日は4日。ビックコミックオリジナル早売りの日だ。刑事でるかな刑事。