つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

王女人形売り出し中

2006-09-25 17:01:32 | SF(国内)
さて、先週に続いて、な第664回は、

タイトル:星界の紋章II――ささやかな戦い
著者:森岡浩之
出版社:早川書房 ハヤカワ文庫(初版:H8)

であります。

老舗ハヤカワが社運を賭けた(半分冗談ではない)、スペースオペラ長編の二巻目です。
実は私、スペオペには物凄い偏見がありまして、これもなかなか手出す気になれませんでした。
ま、基本はボーイミーツ・ガールだし、気楽に読めばいっか~、と自分の背中をテラトンハンマーで押してみたのですが……さて、結果は?
(一部前回の記事と重複する箇所があるように見えますが、目の錯覚です)



帝都に向かう途上、ジントとラフィールの乗る巡察艦は正体不明の敵に補足された。
勝ち目が薄いことを悟った艦長は、二人を小型連絡艇に乗せて艦外に送り出す。
二日後、連絡艇はフェブダーシュ男爵領に到着した。

男爵領での『ささやかな戦い』にケリを付け、二人は再び平面宇宙に入った。
だが、スファグノーフ門を前にして、敵の戦列艦に出くわしてしまう。
どうにか追跡を振り切り、通常空間へ戻ったものの、目指す惑星クラスビュールは戦場と化していた。

ジントとラフィールは、通信艦隊の基地から帝都行きの便に乗るという当初の計画を破棄し、クラスビュールに強行着陸するのだが――。



というわけで、作者は見事、ジントとラフィールを二人っきりにすることに成功しました。(笑)
前巻でかなり世界説明をしたおかげか、二人の会話の分量も多くなり、大分ラブコメの色が濃くなっています。
長衣姿のラフィールを見て感動的な抱擁を期待するジント君、敵軍に向かって乙女が口に出来ないようなスラングを叫ぶラフィール、敵の占領下にある街に入るために半分趣味で選んだ服をラフィールに着せるジント君! 等々、御子様二人の小冒険に相応しい(?)お遊びイベントは概ねやってますね。

物語は二部構成で、前半は宇宙を舞台にした脱出行、後半は地上を舞台にした隠密行といったところ。
宇宙ではラフィールの技能が頼みの綱でしたが、地上はジント君の独壇場となり、立場が逆転します。
地上育ちの成り上がり貴族ジントが、不慣れな世界に戸惑う王女ラフィールをフォローするという展開からして、冗談抜きで地上編は『ローマの休日』ごっこかも。

結構危険な状況にも関わらず、二人のノリが割と軽いので、空気が重苦しくなってないのは良いです。
でも、ジントが検問突破する時に脇にいるラフィールのことを、「人形です」と言って誤魔化したり、終盤辺りで、反帝国クラスビュール戦線を自称する馬鹿丸出しな連中が出てきたのはどうかと……。
まぁ、アーヴのルーツをたどっていくと地球の弧状列島にたどり着くなんていう呆れた設定に比べりゃ可愛いもんですが。

それと、前回の記事でも指摘した『奇妙なひらがな表記』ですが、さらにひどくなっています。

「しょうじき(正直)」
「きょくりょく(極力)」
「どうよう(同様)」
「ちょくせつ(直接)」
「そうばん(早晩)」

これが台詞の中だけの話なら、ジントとラフィールの年齢を設定から七歳引き(つまり十歳と九歳になる)にすることで何とかフォローできるのですが、地の文でもやっちゃってる時点で――
お話になりませんね。

飽くまで、ジントとラフィールのラブコメとして見るならギリギリ及第点……にしようかと思ったけど、やっぱ駄目な物は駄目。
二人のズレた会話とすれ違う認識は見てて楽しいんですが、それ以外がひどすぎる。
一応、次巻も読みましたが――。


最新の画像もっと見る