つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

未来の……

2006-10-10 21:58:15 | SF(国内)
さて、仕方ないとは言え、これは……な第679回は、

タイトル:未来形J
著者:大沢在昌
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H13)

であります。

お初の作家さんです。
長編ですが、割と短い(200ページ)ので手に取ってみました。



ある日、三人の人間が同じ文面のメッセージを受け取った。
「午後五時、丸池公園噴水前。あなたの助けが必要です。J」
菊川真は通信機能のないワープロで、茂木太郎は自分のパソコンで、立花やよいは携帯電話で……。

午後五時、指定された場所には四人の人間が集まっていた。
件の三人だけでなく、自分の占いで何かを感じ取った卜占術師・赤道目子がいたのだ。
これに、偶然通りかかった山野透を加えた五人は、謎の人物Jを救うため動き始める――。



菊川のワープロで謎の人物Jと連絡を取りつつ、彼女を救うために五人組が奔走するSFです。
カバー裏の解説によれば、長編ファンタジック・ミステリーらしいのですが……そうか?
序盤の展開がとにかく強引で、気付いた時には皆さんJを救う使命感に燃えてらっしゃいました。何なんだこいつら?

Jの特徴は――

・自分が誰か思い出せないこと。
・どこか遠いところにいること。
・過去の自分に危険が迫っていて、助かるには五人の助けがいること。
・天使さん(笑)に今いる場所に連れてきてもらったこと。
・天使の協力のおかげで五人組とコミュニケーションを取れていること。

他にもあるのですが、一応このぐらいにしときます。
貴方達は選ばれた戦士です、とか言い出す怪しい人物にしか思えませんね。
これを素直に信じて、彼女を助けるために頑張ろう~、なんて動き出すのはかなり無理があります。

そこで作者は、もっと怪しい人物を出すことでバランスを取ろうとしました――卜占術師・赤道目子がそれです。
重々しい口調で突飛な発言を繰り返す彼女は、Jに匹敵するぐらい怪しいオーラを放っており、このおかげで異常な状況がある程度緩和されています。
納得いくかは別として、一応先を読んでみるか……という気にはなりました。上手いと言えば上手い。
(ちなみにこの目子さん、先に進むにつれて的を射た発言が増え、実はかなりの常識人であることが判明します……味のあるキャラだ)

その後の展開は割と素直でした。
五人組は手探りでJのことを調べ、彼女に関係があると思われる人物を当たります。
実はその人物は現在行方不明で――と、この先は本編で。

あとがき読んで初めて知ったのですが、この作品、携帯電話で配信された作品だったらしいです。
多少展開が強引でも、短いページ数で読者の興味を引く必要があったのですね。ちょっと納得。
もっともそれで評価が上がるかと言われると……。

深く突っ込まなければ、気楽に読める作品として拾ってみてもいい……かも。
一応、事件は作者の手で終わらせているのですが、Jに迫る危機が何なのかは最後までぼやかしてあり、すべての謎が解けるエピローグは一般公募の中から選ぶという形式を取っています。
で、選ばれた最優秀作なのですが……悪くはないし、謎も解けてるんだけど、さほどインパクトはなかったですね。(爆)


☆クロスレビュー!☆
この記事はSENが書いたものです。
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