つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ホタルとマユの三分間書評『二十面相の娘』

2008-06-21 08:00:50 | ホタルとマユ関連
さて、アニメ化に便乗したわけじゃないです……多分、な第975回は、

タイトル:二十面相の娘(全8巻)
著者:小原愼司
出版社:メディアファクトリー MFコミックス(初版:'03)

であります。


「私という人間をもう一人作ろうとしているのです。
 大戦を経て、私は世界に絶望させられた。
 だから私はこの世界を私好みのパノラマに描き変えたい。
 そのためには少しばかりの仲間と――もう一人私が必要です」
   ――一巻。二十面相の台詞より。



―プレステ1って現役ですよね?―


 「こんにちは~♪ 今更ながら、ヴァルキリー・プロファイルをプレイ中のホタルでーす♪」
 「マユだ。つーか……またゲームネタかよ!」
 「やっぱりこのゲームの戦闘システムは楽しいですね~。今でも充分遊べます」
 「まぁ、ストーリーがほとんどダイジェスト状態なのと、某ボスが超弱なのを除けばいいゲームではあるな」
 「ロキ様弱っ! とか言うなっ!」
 「やれやれ……わざわざ言わないでおいてやったってのになァ~」


―漫画版はこんな感じ―


 「さて、本日御紹介するのは――コミックバーズよりはまだマシか? 知る人ぞ知るマイナー月刊誌コミックフラッパー! の看板作品の一つだった『二十面相の娘』です!」
 「現在、番外編の『二十面相の娘――うつしよの夜』が同誌に連載されているが、それについては別の機会に触れることにする。
 タイトルネームから解ると思うが、本作は江戸川乱歩の『怪人二十面相』をモチーフにした60年代風活劇漫画だ。二十面相に救い出された少女・チコが、自分の命を狙う叔母や、二十面相の秘密を狙う者達と対峙しつつ、一人の人間として成長していく様を丁寧に描く良作で、一度このブログでも紹介している。(→過去記事はこちら)」
 「乱歩関係のネタがいくつも出てくるのも魅力ですね。絵まで懐かしい感じなのはちょっと引っ掛かりますが……」
 「あ~、確かにちと粗い絵だが、乱歩世界の雰囲気には合ってると思うぞ。初期はともかく、後期は大分安定するしな」
 「漫画と言うより、絵本っぽい感じなんですよね~。載ってる雑誌がアフタヌーンだったら全く問題ないんですけど、それ以外の雑誌だと何か違和感があります」
 「アフタヌーンは昔っから特殊空間だからなァ……。
 ストーリーは概ね四部構成で、順に――チコと二十面相一味の活躍、離散を描く『二十面相の娘編』、実家に連れ戻されたチコが独自に二十面相の行方を追う『探偵編』、二十面相の過去を知る怪人物との長い戦いを描く『白髪の魔人編』、すべてのキャラが東京に集い、大戦の忌まわしき遺産を巡って絡み合う『二十面相編』――となっている。また、チコの友人の小糸春華が少女探偵団を結成するといった枝葉的エピソードが存在する他、連載前に掲載された読みきり版が一巻に収録されている」
 「なお、『~編』の名称はマユさんが勝手に付けたもので、公式のものではありません。誤って日常会話で使用したりすると白い目で見られるので注意して下さいね♪」
 「いらん解説は入れんでよろしいっ!
 それはさておき、アニメ版は視たか?」
 「絵が微妙に違うんで視てません。視たら視たでハマりそうですけど……。
 ちなみに公式サイトは↓こちらです」


『二十面相の娘』アニメ公式サイト


 「原作者・小原愼司さんのインタビューも掲載されているので、興味のある方は覗いてみて下さい♪」
 「ホタルは否定的な意見を吐いたが、TRAILER見る限りなかなかイケてるぜ。
 んじゃ、例によってキャラ紹介といくか」


―キャラクター紹介やっときます?―


 「ではでは主人公の、美甘千津子――通称チコちゃんから。
 両親を早くに失い、叔父夫婦に引き取られたものの、遺産を狙う二人に毎日毒を盛られていた薄幸の美少女。毒に気付いて食事を拒否し続けていましたが、限界寸前のところで二十面相に救われ、以後、彼と行動を共にします。
 ちなみに年齢は、二十面相と別れる直前で『じき13』とのこと。仲間達と過ごした時間は二年余りだったらしいので、初登場時は十歳ぐらいだった計算になります……聡明過ぎ。
 凛々しいという表現がぴったりくる少女で、年齢にそぐわぬ冷静な思考と、二十面相に仕込まれた(と思われる)体術を駆使して、数々の敵と互角に渡り合います。二十面相を慕い、闇に消えた彼をひたすら追い続けるイメージが強いのですけど、自分の行く先も見据えており、最終回ではしっかりとそれを言葉にしました」
 「では、江戸川乱歩が生み出した日本を代表する大怪盗・二十面相、年齢不詳。
 原作では愉快犯に近いところもあったが、こちらはスーツの似合うナイスミドルで、大戦(これがどの戦争を指すのか作品内では明確にされていない)中のある極秘研究に携わっていた人物とされている。世界各地を巡って様々なものを盗むが、それはすべて過去を清算するためだった……と、これ以上はネタバレになるので割愛。(爆)
 清波製薬の社長によれば、その正体は超人化計画に携わった将校・新田二郎である可能性が高いらしい。また、五巻では魔人が他者に二十面相を紹介する際、白須麻という名を口にしている。しかし、どちらも情報としては断片的で、結局、彼の本名は最後まで明かされることはなかった。
 肉体改造は受けていないようだが、改造人間とも互角に渡り合える高い戦闘能力を有する。銃器の扱いにも長けており、原作と違って、危険と判断した者を殺害することもある。
 チコにとっては、まんま優しいお父さんであり、『自分で見て自分で聞いて自分で考える。これ以外に何かを成す方法はない』等、数々の言葉で彼女の人格形成に多大な影響を与えた」
 「長っ! マユさんて、ひょっとしてオヤヂ趣味ですか?」
 「違うわっ!
 二十面相はもう一人の主人公だし、この作品のすべての登場人物と何らかの関係があるから、これぐらいの長さになるのは仕方ねーだろ」
 「では、チコの兄貴分のケン君。
 二十面相の組織の下っ端で、背伸びしたがりなお年頃の17歳。チコが入った当時は子供っぽさが目立ったものの、凶悪な盗賊『虎』に左目を潰され、仲間と別れた後に覚醒、眼帯と煙草が似合うクールなキャラになりました。と言うか……チコもそうなんですけど、設定年齢より4、5歳上にしか見えません。
 二十面相が自分を捨てたと思い込み、しばらく根に持っていたのですが、自分のボスは自分だと気付いたことで大きく成長。後に、香山望という強力な相棒を得て、一人の盗賊として大成します――喜んでいいのか解りませんが(笑)」
 「名前が出たので、清波製薬の研究員・香山望、24歳。
 同じ研究員の津矢高志とともに、戦時中の超人化計画『人間タンク』の再現を試みるも失敗。清波社長に切り捨てられ、姿をくらまして独自に研究を続けていた。二十面相の遺産に過去の研究資料が含まれていると考え、チコに接触するが、結局何も得られずに終わる。その後はちらっと1カット登場しただけで出番がなかったが、七巻で思い出したように復活した。
 投薬の影響か、顔から胸にかけて血管が異様に浮き上がるという症状が出ているものの、刃すら弾く強靱な肉体と超反応速度を得ており、戦闘力は非常に高い。その比類なき格好良さから、乱歩作品に元ネタがあると睨んでいたんだが……自力じゃ気付けなかった、ちっ。
(なお、最終巻最終ページにて、ネコ夫人であることが判明。やられた、そいつがいたかっ!)」
 「では最後に、乱歩作品もう一人の顔役・明智先生。作中では明智小五郎という名は出てきませんが、『D坂の殺人事件』に言及するシーンがあるので、かの名探偵と考えて間違いないでしょう。
 登場時から一貫して二十面相を追っており、実際、かなり近いところまで迫っていましたが、結局、一度も本人と対面することはありませんでした。『十年は出遅れている』と言っている通り、二十面相よりもかなり若く、事件そのものには間に合わずに後で色々と解説するのが主な役割。
 本作は飽くまでチコと二十面相の話なので、明智先生に暴れてもらっても困るのでしょうが……それにしても扱いがちょっと低かったような気が……。一応、二十面相の正体は突き止めたみたいですけど、それも、すべてが終わった後でした」
 「ん? 最後って、まだ友人と冥土と三下のサブキャラ三人組紹介してないぞ?」
 「あ~……そういう方々もいましたね。
 では、怪人とか魔人とか超人とかと比べると影が薄いのですが、チコの日常に関わってくる、小糸春華&トメ&空根(敬称略)。
 春華ちゃんはチコちゃんの同級生で、小糸財閥の御令嬢です。当初は子分を二人従えて意地悪を仕掛けてくるボス猿でしたが、二十面相絡みの事件を経て、後に親友となりました。16歳になったら政略結婚させられることが決まっており、今を楽しむことに全力を傾ける、ある意味もう一人のチコ。
 トメさんは美甘家のメイドで、チコちゃんの世話係です。数少ないチコちゃんの味方の一人で、微妙に母親のような役回りを演じました。年齢は18歳の筈ですが、大人びた雰囲気のため二十代にしか見えず、本人もそれを気にしてたりします。ちなみに漢字で書くと『留』、岡山出身とのこと。
 空根先生は所謂へっぽこ探偵。本人の能力はとてつもなく低いにも関わらず、他人のおこぼれで手柄を立てることがあったりします。小悪党的な面もあり、かなり鬱陶しいキャラでしたが、後に改心、頼りないけど一応善人っぽい方になります」
 「あからさまにやる気のねー解説だな、おい。
 余談だがこの三人、白髪の魔人編では揃って催眠術で操られ、二十面相編では見事に戦力外通告を受ける……憐れだ」


―総評をどうぞ!―


 「絵さえ気にしなければ非情に良い作品です♪
 少女の中にいるもう一人の二十面相とは? 彼が持っているとされる過去の遺産とは? 二十あるといわれる彼の本当の顔とは? チコちゃん、明智先生、怪しい方々、皆が追っかけ回す中、ふらりと現れては闇に消えていく二十面相の活躍を御堪能下さい」
 「先に言われちまったが……チコを主人公に据え、彼女を囮にして他のキャラを動かすことで、逆に二十面相の魅力を引き出している傑作だ。
 エログロテイストは皆無に等しいが、乱歩作品特有の怪しい空気は受け継いでおり、油断してると、キャラが唐突に別人に変わったり、人形に化けたり、ロケットパンチ(笑)かましたりする。個人的には三巻でチコが解剖台に寝かされて――」
 「ソレ以上ハこーどに触レルゾ」
 「触れねーよ。残念なことに、未遂に終わったからな」



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2 コメント

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Unknown (ハンタ)
2008-06-22 22:57:09
こんばんは。

「二十面相の娘」、数回見逃しちゃったけど、アニメ版見てます(^v^)。
チコちゃん、強くて賢くて良いですね~v
健気に二十面相を慕っているところも好きです。

原作は完結しているのですね。
良かった、安心して見れる(笑)。
(最近は完結してない作品のアニメが多くて、いろいろ心配なのです・・・(^^;))
チコちゃんがおじさまとどういう形で再会するのか、楽しみです♪
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アンノウン (ホタル&マユ……+SEN)
2008-06-23 01:56:59
ホ「こんばんは。いつも御贔屓して頂き、ありがとうございます~♪」
マ「あたしはまだ視てないが、ボンズは『あやかしあやし』の頃から気に入ってるとこなんでまたチェックしとくぜ」
ホ「珍しく殊勝な心がけですね、感心感心」
マ「おい……いつからあたしにそんな口がきけるようになったんだ、あぁ?」
ホ「何ならここで、どっちが格上か白黒付けますか?」
マ「やってやろうじゃねぇか――花札でな!」
ホ「……ルール知らないんですけど」

 * * *

(以下、SEN)
改めまして、こんばんは。
アニメ版御覧になってましたか~。
チコはホント、十三歳とは思えないぐらい強くて賢い!
二十面相に影響は受けているものの、自分で考えることは怠っていないのもかなり良いです。

原作はきちっと完結してます。
今、10話の粗筋をチェックしましたが、ちょうど三巻のエピソードが終わったところですね。
このままのペースでいけば、全26話ぐらいで綺麗に全巻消化できるので、綺麗に終われると思います。
(完結してない作品のアニメ版と言えば、HELLSINGのアニメ版はひどかったなぁ……)

非常にいい感じで二十面相は復活します、御期待下さい。
(改めて思ったけど、チコと二十面相のすれ違い方って、そのまんま恋愛ドラマの王道かも……)
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