さて、この文庫は初めてだったりする第792回は、
タイトル:煌夜祭
著者:多崎礼
出版社:中央公論新社 C★NOVELS(初版:H18)
であります。
第二回C★NOVELS大賞受賞作。
死海に隔てられた十八諸島を舞台に、人と魔物の接触を描く物語です。
*
故郷も名も持たず、島から島へとさすらう者達がいる。
仮面で素顔を隠し、異国の話を伝えて歩く漂泊者。
人は彼らを語り部と呼ぶ。
冬至の夜、語り部は島主の館に集い、夜通し物語を語る。
容易に越えられぬ死海の向こうの島の物語は金に等しく、良き話には島主が褒美を出す。
数多の知恵と知識が披露される語り部の大祭、人はそれを煌夜祭と呼ぶ。
今年もまた煌夜祭が始まる。
島主のいない館で、ナイティンゲイルとトーテンコフ、たった二人だけの煌夜祭が。
習いに従って、ナイティンゲイルが先に語り始めた……煌夜祭の真の目的を明かす物語を――!
*
読み終わった後の素直な感想――
うわ~、壁だわこれ。
第一回ファンタジーノベル大賞を受賞した『後宮小説』のように、これも以後の投稿者の前に立ち塞がる壁となるのは間違いありません。そのぐらい出来がいい。
物語としては、いわゆる『千夜一夜物語』タイプです。
おとぎ話のような短編の間に、語り部と聞き手の話が入っているというもの。
ただ、千夜一夜物語と異なるのは、ナイティンゲイルとトーテンコフはどちらも語り部かつ聞き手であり、しかも偽名と仮面で正体を隠しているということ――このミステリ調の設定が実に秀逸。
当然と言えば当然ですが、二人が語る物語は、彼らの人生に大きく関わっています。
そのため、ある程度読み進めていくと、得体の知れない二人の正体がおぼろげながら解ってきます。
片方の正体はすぐに判明するのですが、もう片方がなかなか難物で、それだけで終盤までぐいぐい引っ張られてしまいました……読ませる力が半端じゃないぞ、この方。(爆)
各個の短編の出来も素晴らしいものでした。
人を食う罪に葛藤する魔物、魔物を愛し憎悪する人間、二つの種族の接触を実に丁寧に描いています。
それぞれの話は独立していますが、スポット的にリンクしており、流れと共にゆっくりと収束して終章で結合します。連作短編のお手本ですね。
ストーリーの腰を折ることなく自然に情報がばらまいてあり、悲しい宿命を背負って生まれてくる『魔物』と、不思議な世界『十八諸島』のことがすんなり理解出来るようになっているのも見事。
魔物はなぜ生まれてくるのか?
ナイティンゲイルとトーテンコフ、二人の正体は?
何のために煌夜祭は存在し、数百年もの間続けられてきたのか?
数々の謎を解き、物語は静かに幕を閉じます――
ここ近年で読んだ一冊完結物の中では、ぶっちぎりでトップですね。
文句なし、五重丸のオススメです。
ファンタジー好きを自認する方は、必ず一度は読んどきましょう。
☆クロスレビュー!☆
この記事はSENが書いたものです。
LINNの書いた同書のレビューはこちら。
タイトル:煌夜祭
著者:多崎礼
出版社:中央公論新社 C★NOVELS(初版:H18)
であります。
第二回C★NOVELS大賞受賞作。
死海に隔てられた十八諸島を舞台に、人と魔物の接触を描く物語です。
*
故郷も名も持たず、島から島へとさすらう者達がいる。
仮面で素顔を隠し、異国の話を伝えて歩く漂泊者。
人は彼らを語り部と呼ぶ。
冬至の夜、語り部は島主の館に集い、夜通し物語を語る。
容易に越えられぬ死海の向こうの島の物語は金に等しく、良き話には島主が褒美を出す。
数多の知恵と知識が披露される語り部の大祭、人はそれを煌夜祭と呼ぶ。
今年もまた煌夜祭が始まる。
島主のいない館で、ナイティンゲイルとトーテンコフ、たった二人だけの煌夜祭が。
習いに従って、ナイティンゲイルが先に語り始めた……煌夜祭の真の目的を明かす物語を――!
*
読み終わった後の素直な感想――
うわ~、壁だわこれ。
第一回ファンタジーノベル大賞を受賞した『後宮小説』のように、これも以後の投稿者の前に立ち塞がる壁となるのは間違いありません。そのぐらい出来がいい。
物語としては、いわゆる『千夜一夜物語』タイプです。
おとぎ話のような短編の間に、語り部と聞き手の話が入っているというもの。
ただ、千夜一夜物語と異なるのは、ナイティンゲイルとトーテンコフはどちらも語り部かつ聞き手であり、しかも偽名と仮面で正体を隠しているということ――このミステリ調の設定が実に秀逸。
当然と言えば当然ですが、二人が語る物語は、彼らの人生に大きく関わっています。
そのため、ある程度読み進めていくと、得体の知れない二人の正体がおぼろげながら解ってきます。
片方の正体はすぐに判明するのですが、もう片方がなかなか難物で、それだけで終盤までぐいぐい引っ張られてしまいました……読ませる力が半端じゃないぞ、この方。(爆)
各個の短編の出来も素晴らしいものでした。
人を食う罪に葛藤する魔物、魔物を愛し憎悪する人間、二つの種族の接触を実に丁寧に描いています。
それぞれの話は独立していますが、スポット的にリンクしており、流れと共にゆっくりと収束して終章で結合します。連作短編のお手本ですね。
ストーリーの腰を折ることなく自然に情報がばらまいてあり、悲しい宿命を背負って生まれてくる『魔物』と、不思議な世界『十八諸島』のことがすんなり理解出来るようになっているのも見事。
魔物はなぜ生まれてくるのか?
ナイティンゲイルとトーテンコフ、二人の正体は?
何のために煌夜祭は存在し、数百年もの間続けられてきたのか?
数々の謎を解き、物語は静かに幕を閉じます――
ここ近年で読んだ一冊完結物の中では、ぶっちぎりでトップですね。
文句なし、五重丸のオススメです。
ファンタジー好きを自認する方は、必ず一度は読んどきましょう。
☆クロスレビュー!☆
この記事はSENが書いたものです。
LINNの書いた同書のレビューはこちら。