さて、晴れだろうが何だろうが寒くて暖房器具を増やしたの第923回は、
タイトル:薬指の標本
著者:小川洋子
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H10)
であります。
電気座布団買いました。
でも家ではいいものの、職場はまだまだ寒いので、そのうちちっこいセラミックファンヒーターでも買ってきて冷え性対策する予定~(爆)
さておき、前にいつ読んだかと目録を見てみると去年の10月以来のご登場の小川洋子さんです。
意外にも総評の○が少なかったりするんだけど……何故かたまに手に取ってしまうのよねぇ(笑)
で、本書ですが、表題作を含む中編2作の作品集。
なので各話ごとに。
○薬指の標本
『以前勤めていたサイダーの工場で機械に薬指を挟まれ、指先を失ってしまったことで辞職し、あらゆるものを標本にし、保存すると言うところでわたしは働いていた。
そこでは事務や雑用をするわたしと、持ち込まれた物を標本にする弟子丸氏以外に、働いている者は誰もいなかった。
飼っていた文鳥の骨、失った恋人の作った曲、キノコなど、あらゆる物が持ち込まれ、標本にされていくこの場所で、わたしは弟子丸氏から靴をプレゼントされる。
ずっと履いているようにと言われたそれは、とても足にはまっていて、訪れた靴磨きをしているおじいさんから、ずっと履いていると靴に飲み込まれてしまう、とまで言われるくらいのものだった。
その靴をプレゼントされてから、わたしは弟子丸氏と密やかな逢瀬を重ねるようになり……』
第一印象は、不思議な透明感のある作品。
いちおう、恋愛小説とは言えるのだろうが、そういうものが前面に押し出されているわけではなく、静かに進行していっている。
とは言え、表題の「薬指」や「標本」、プレゼントされた「靴」と靴磨きのおじいさんが語る「靴の話」などがいいアクセントになっていて、恋愛小説としては独特の雰囲気を醸し出している。
ただ、作品として好きか、と言われれば悩むところ。
○六角形の小部屋
『スポーツジムの更衣室で友人らしき老婦人を待っているミドリさんと言う中年の女性が、わたしは何故か気になっていた。
大切な約束があるにもかかわらず、ミドリさんに話しかけてしまっていた。おかげで約束の時間に遅れ、友達から恋人へのステップを踏み外してしまった。
けれど、ミドリさんへの興味は薄れず、ついに友人らしき老婦人とともに家路につくミドリさんを追って、古ぼけた社宅にたどり着いた。
そこで出会ったユズルさんから、ここには六角形の小部屋があり、そこでひとは、ただ様々なことを……苦楽はもちろん、真実でも嘘でも語っていくだけの場所を提供するところだと言うことを聞いた。
最初はミドリさんを追いかけてきただけだったわたしは、小部屋には入らなかったが2度目に訪れたとき、小部屋に入った。
そしてその後、ミドリさんとユズルさんとお茶を飲みながら話をするのがいつものことになった。
小部屋で語る者は小部屋のことを黙して語らないルールだったが、わたしにはそれは当てはまらなかった。』
こちらは小部屋の中で、終わった恋愛を語る形を取った恋愛小説。
ほんの些細なきっかけで変化してしまった「わたし」の心が独白の形でよく描かれていて、透明感はあるが「薬指の標本」よりは人間味があるように感じる。
と言っても、両方ともに独特の雰囲気があり、そうしたところは楽しめるし、著者らしい作品だとは思うけど、なんかいまいち感じられるものが少ない。
「薬指の標本」はある意味、ホラーだし、読むひとにとっては「靴」の話なんかはかなり怖い印象を持ったりするだろう、とは思う。
Amazonのレビューもいいのが多いし、確かに悪いとは言わないけど……。
微妙なところ。
てなわけで、総評は及第。
合うひとにはとことん合うだろうけど、そうでなければおもしろみは少ないと思うので、ね。
タイトル:薬指の標本
著者:小川洋子
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H10)
であります。
電気座布団買いました。
でも家ではいいものの、職場はまだまだ寒いので、そのうちちっこいセラミックファンヒーターでも買ってきて冷え性対策する予定~(爆)
さておき、前にいつ読んだかと目録を見てみると去年の10月以来のご登場の小川洋子さんです。
意外にも総評の○が少なかったりするんだけど……何故かたまに手に取ってしまうのよねぇ(笑)
で、本書ですが、表題作を含む中編2作の作品集。
なので各話ごとに。
○薬指の標本
『以前勤めていたサイダーの工場で機械に薬指を挟まれ、指先を失ってしまったことで辞職し、あらゆるものを標本にし、保存すると言うところでわたしは働いていた。
そこでは事務や雑用をするわたしと、持ち込まれた物を標本にする弟子丸氏以外に、働いている者は誰もいなかった。
飼っていた文鳥の骨、失った恋人の作った曲、キノコなど、あらゆる物が持ち込まれ、標本にされていくこの場所で、わたしは弟子丸氏から靴をプレゼントされる。
ずっと履いているようにと言われたそれは、とても足にはまっていて、訪れた靴磨きをしているおじいさんから、ずっと履いていると靴に飲み込まれてしまう、とまで言われるくらいのものだった。
その靴をプレゼントされてから、わたしは弟子丸氏と密やかな逢瀬を重ねるようになり……』
第一印象は、不思議な透明感のある作品。
いちおう、恋愛小説とは言えるのだろうが、そういうものが前面に押し出されているわけではなく、静かに進行していっている。
とは言え、表題の「薬指」や「標本」、プレゼントされた「靴」と靴磨きのおじいさんが語る「靴の話」などがいいアクセントになっていて、恋愛小説としては独特の雰囲気を醸し出している。
ただ、作品として好きか、と言われれば悩むところ。
○六角形の小部屋
『スポーツジムの更衣室で友人らしき老婦人を待っているミドリさんと言う中年の女性が、わたしは何故か気になっていた。
大切な約束があるにもかかわらず、ミドリさんに話しかけてしまっていた。おかげで約束の時間に遅れ、友達から恋人へのステップを踏み外してしまった。
けれど、ミドリさんへの興味は薄れず、ついに友人らしき老婦人とともに家路につくミドリさんを追って、古ぼけた社宅にたどり着いた。
そこで出会ったユズルさんから、ここには六角形の小部屋があり、そこでひとは、ただ様々なことを……苦楽はもちろん、真実でも嘘でも語っていくだけの場所を提供するところだと言うことを聞いた。
最初はミドリさんを追いかけてきただけだったわたしは、小部屋には入らなかったが2度目に訪れたとき、小部屋に入った。
そしてその後、ミドリさんとユズルさんとお茶を飲みながら話をするのがいつものことになった。
小部屋で語る者は小部屋のことを黙して語らないルールだったが、わたしにはそれは当てはまらなかった。』
こちらは小部屋の中で、終わった恋愛を語る形を取った恋愛小説。
ほんの些細なきっかけで変化してしまった「わたし」の心が独白の形でよく描かれていて、透明感はあるが「薬指の標本」よりは人間味があるように感じる。
と言っても、両方ともに独特の雰囲気があり、そうしたところは楽しめるし、著者らしい作品だとは思うけど、なんかいまいち感じられるものが少ない。
「薬指の標本」はある意味、ホラーだし、読むひとにとっては「靴」の話なんかはかなり怖い印象を持ったりするだろう、とは思う。
Amazonのレビューもいいのが多いし、確かに悪いとは言わないけど……。
微妙なところ。
てなわけで、総評は及第。
合うひとにはとことん合うだろうけど、そうでなければおもしろみは少ないと思うので、ね。