つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

これは少女小説になるのかな?

2012-03-30 21:17:51 | 小説全般
さて、あっさり越えてしまっちゃったなあぁ第1001回は、

タイトル:サマースクールデイズ
著者:深沢美潮
出版社:ジャイブ ピュアフル文庫(初版:'06)

であります。

この人と言えば、「フォーチュンクエスト」シリーズが真っ先に思い浮かびます。
てか、古いですねぇ、「フォーチュンクエスト」(笑)
リアルタイムに読んでいた(あぁ、年がバレる(笑))身としては、しみじみ懐かしいなぁと思ってしまいます。

それはさておき、主に比較的王道のファンタジーを書いている著者ですが、本作はファンタジーではありません。
ストーリーは、

『千里は道に迷っていた。セント・ジェームスというアメリカンスクールのサマースクールに行く途中だったのだが、道がわからなくなってしまったのだ。
近くのコンビニで道を聞こうと思っても、なかなかできないでいるところに出会ったのがセント・ジェームスに通っている少年ジャスティンだった。
ジャスティンに連れられ、無事セント・ジェームスに辿り着いた千里――彼の優しさと際立った容姿に浮かれていたが、サマースクールの始業式で、高校に入ってから突然よそよそしくなって、千里の悪口を吹聴するようになった幼馴染み、瑞穂がいることに気付いて落胆する。

時は少し遡って――引っ込み思案で言いたいこともなかなか言えないような性格の千里は、瑞穂のこともあって学校を休みがちになっていた。
それを見かねて母親に勧められたのがセント・ジェームスのサマースクールだった。
当然、気乗りはしなかったけれど、両親にあれこれ言われるのも面倒くさかったので通うことにしたのだった。

けれど、いいこともあれば悪いこともある。その逆もまたしかり。
大阪から来て親戚の家から通っていると言う有紀と知り合いになり、それが縁でサマースクールに通ってきている子たちとも仲良くなったりもできた。
他にも、コンビニで助けてくれたジャスティン。彼はとても気さくで、見かけると気軽に声をかけてきてくれたりする。
ジャスティンに対する千里の反応から有紀は千里が彼に好意を持っていると思い込んで……』

本作の紹介文を読むと、恋愛小説のように受け取れそうですが、どちらかと言うと友情のお話です。
ストーリーは、引っ込み思案で言いたいことも言えない千里が、サマースクールで出会った有紀たちとの触れ合いやすれ違いを描き、最後には親友だった瑞穂と和解するというもの。
ジャスティンは折に触れて登場しますが、恋愛要素は低く、有紀たちとの関係を描く上で出てくる脇役に過ぎません。
なので、恋愛小説として期待しないほうでいいです。

とは言え、紹介文の「揺れ動く少女の心を瑞々しくもリリカルに描いた、ひと夏の青春物語」というのは、本作を端的に表していて納得できます。
文体は千里の一人称で、引っ込み思案な千里の心情をよく表現しています。
サマースクールの授業の発表で動揺する様子や有紀たちとすれ違いを起こして逃げ出してしまう姿など、千里のキャラは生き生きと描かれています。
逆に、有紀たちやジャスティンと言った脇のキャラたちが相対的に薄くなっているのが難点かな。

まぁ、千里以外のキャラの薄さを除けば、枚数も少なめで、文体も一人称で読みやすく、手に取りやすい部類に入るでしょう。
ただし、男性向きではありません。
女性ならば、友達との関係で仲良くしたりぶつかったり――そんな若い時代の感慨にふけることができるかもしれません。
千里と同世代ならば、共感できる部分もあるでしょう。
解説でも同趣旨のことが書いてありますので(もちろん、解説者は女性です)、女性には比較的オススメしやすい作品です。

と言うわけで、総評ですが、悪くはない作品なのですが、及第とさせてもらいます。
どちらかと言うと女性向けですし、良品と言えるほどの感動や雰囲気があるわけでもないので、良品未満と言わざるを得ないでしょう。
ただ、及第とは言っても点数は高めです。Amazonの5段階で☆をつけるなら4つくらいはつけられるとは思います。

なお、少女小説としたのは千里が高校生だからです。
これが中学生くらいの話だったら児童文学に分類してもいいかもしれませんね。


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