さて、いつの間にやらここまで来てたんだなぁの第1009回は、
タイトル:幸せのかたち
著者:松村比呂美
出版社:双葉社 双葉文庫(初版:'06)
であります。
著者は携帯小説出身らしいです。
携帯小説と言うと、どうしてもあの狭いディスプレイで読むことを考えて、書いていくものだろうから、いろいろと偏見があったりなかったり……^^;
なので、はっきり言ってまったく期待はしていなかったのですが……。
ストーリーは、
『買い物からの帰り道、紗江子は中学時代のクラスメイトだった美幸に声をかけられた。
クラスメイトと言っても卒業前に転校して、半年くらいしか一緒にいなかった美幸をすぐには思い出せなかったが、地味でおとなしかった当時とは打って変わって美幸は積極的に紗江子に話しかけ、住んでいると言うマンションに向かう。
そこで見つけた自分の顔が3Dで映し出されるクリスタル――薄気味悪さを覚え、美幸と電話番号の交換はしたものの、二度と会うことはないだろうとマンションを後にする。
一方、紗江子の昔ながらの友人の香織は、紗江子と共同経営で開いたリサイクルショップで暇をもてあましていた。
共同経営と言ってもすでに紗江子は手を引いていてひとり。その原因は香織が持ち込まれた品を言い値で買い取ってしまうからだった。
高値で買い取ってくれると評判になり、売り手は来るが買い手がなく、立ちゆかなくなっていたのだ。
結局、リサイクルショップは失敗、紗江子とも喧嘩別れしたままで味気ない生活を送っていた。
そんな紗江子と香織に転機が訪れる。
紗江子には夫の浮気疑惑、香織には夫の浮気による浮気相手の産まれたばかりの子供、と言う出来事だった。
紗江子はそのことから耳を背けるように、美幸が提案した輸入雑貨の店を出すと言う計画に飛びつき、香織は働いていたころの先輩の様子から育児は無理だと思っていたし、夫の浮気で離婚なんて惨めだと思って動けずにいた。
美幸は美幸で紗江子との輸入雑貨の店をオープンすることに満足していた。
三者三様、それぞれの出来事と思惑が入り乱れる中、紗江子は意外な事実を知ることになる……。』
まず、文章のことですが……。
偏見その1(笑)
どうしても携帯というもので見せる場合には、文章的な制約があって軽い文章を想像していたのですが、いやはや、まともでした。
と言うか、ラノベの文章の乱れっぷりを見ていると、かなりこちらのほうがマシでした。
表現に難はないし、文章の作法も乱れることなく、そつなく書いていて、期待していなかったぶんだけ意外な好感触でした。
ストーリーは、タイトルどおり紗江子、香織、美幸の3人の「幸せのかたち」を描いたもの。
美幸と出会ったことで起きる紗江子の夫の浮気騒動や、それを仕組んだ美幸。
また、美幸のほうも実際は早くに結婚していて子供もいたが、それに伴う苦労、そして夫の両親を含めての交通事故による家族の死、地味でおとなしかった中学時代に出会った紗江子への憧憬と執着……。
そうしたものが過去話とも絡んでしっかりと描かれていて好感が持てます。
ただ、物語の軸が紗江子と美幸にやや重点が置かれているせいか、香織の存在が蚊帳の外と言ったふうに見えるのが残念ですが、夫の浮気相手が生んだ赤ん坊と接し、名前もつけてやったりしているうちに、その子を育てるように思えるようになる下りには無理がありません。
3人の女性が選んだ「幸せのかたち」――タイトルのとおり、それぞれの幸せが何であったのかがしっかりと描かれています。
これまた期待していなかったぶんだけ、ストーリーも好感触です。
でも紹介文にある「人生の岐路に直面した三人の女性の姿を描く、ミステリアスな物語」のミステリアスってどういう意味なんでしょうね(笑)
「人生の岐路に~」という下りはわかりますが、この作品のどこにミステリアスな部分があるのか教えてほしいくらいです。
あえて挙げるとすれば、美幸の仕組んだ紗江子の夫の浮気騒動くらいでしょうか。
でもそれは美幸が持つ紗江子への憧憬と執着という面を描くためのもので、ミステリアスと呼ぶほどのものではないでしょう。
この言葉が持つ印象からストーリーを期待すると、はっきり期待外れになってしまうので注意しましょう。
と言うわけで総評ですが、期待していなかったぶんだけ好印象が多く、文章もストーリーもそつなくこなしてくれている本書ですが……。
及第以上良品未満――悪くはないんだけど、そこまでオススメできるほどの雰囲気があるわけでも勢いがあるわけでも秀逸な点があるわけでもないので、こういったところに落ち着いてしまうでしょう。
決してハズレではないので、手に取ってみてもいいとは思いますが、強いてオススメできる点がないのでこういう総評に落ち着いてしまいます。
――【つれづれナビ!】――
◇ 『つれづれ総合案内所』へ
タイトル:幸せのかたち
著者:松村比呂美
出版社:双葉社 双葉文庫(初版:'06)
であります。
著者は携帯小説出身らしいです。
携帯小説と言うと、どうしてもあの狭いディスプレイで読むことを考えて、書いていくものだろうから、いろいろと偏見があったりなかったり……^^;
なので、はっきり言ってまったく期待はしていなかったのですが……。
ストーリーは、
『買い物からの帰り道、紗江子は中学時代のクラスメイトだった美幸に声をかけられた。
クラスメイトと言っても卒業前に転校して、半年くらいしか一緒にいなかった美幸をすぐには思い出せなかったが、地味でおとなしかった当時とは打って変わって美幸は積極的に紗江子に話しかけ、住んでいると言うマンションに向かう。
そこで見つけた自分の顔が3Dで映し出されるクリスタル――薄気味悪さを覚え、美幸と電話番号の交換はしたものの、二度と会うことはないだろうとマンションを後にする。
一方、紗江子の昔ながらの友人の香織は、紗江子と共同経営で開いたリサイクルショップで暇をもてあましていた。
共同経営と言ってもすでに紗江子は手を引いていてひとり。その原因は香織が持ち込まれた品を言い値で買い取ってしまうからだった。
高値で買い取ってくれると評判になり、売り手は来るが買い手がなく、立ちゆかなくなっていたのだ。
結局、リサイクルショップは失敗、紗江子とも喧嘩別れしたままで味気ない生活を送っていた。
そんな紗江子と香織に転機が訪れる。
紗江子には夫の浮気疑惑、香織には夫の浮気による浮気相手の産まれたばかりの子供、と言う出来事だった。
紗江子はそのことから耳を背けるように、美幸が提案した輸入雑貨の店を出すと言う計画に飛びつき、香織は働いていたころの先輩の様子から育児は無理だと思っていたし、夫の浮気で離婚なんて惨めだと思って動けずにいた。
美幸は美幸で紗江子との輸入雑貨の店をオープンすることに満足していた。
三者三様、それぞれの出来事と思惑が入り乱れる中、紗江子は意外な事実を知ることになる……。』
まず、文章のことですが……。
偏見その1(笑)
どうしても携帯というもので見せる場合には、文章的な制約があって軽い文章を想像していたのですが、いやはや、まともでした。
と言うか、ラノベの文章の乱れっぷりを見ていると、かなりこちらのほうがマシでした。
表現に難はないし、文章の作法も乱れることなく、そつなく書いていて、期待していなかったぶんだけ意外な好感触でした。
ストーリーは、タイトルどおり紗江子、香織、美幸の3人の「幸せのかたち」を描いたもの。
美幸と出会ったことで起きる紗江子の夫の浮気騒動や、それを仕組んだ美幸。
また、美幸のほうも実際は早くに結婚していて子供もいたが、それに伴う苦労、そして夫の両親を含めての交通事故による家族の死、地味でおとなしかった中学時代に出会った紗江子への憧憬と執着……。
そうしたものが過去話とも絡んでしっかりと描かれていて好感が持てます。
ただ、物語の軸が紗江子と美幸にやや重点が置かれているせいか、香織の存在が蚊帳の外と言ったふうに見えるのが残念ですが、夫の浮気相手が生んだ赤ん坊と接し、名前もつけてやったりしているうちに、その子を育てるように思えるようになる下りには無理がありません。
3人の女性が選んだ「幸せのかたち」――タイトルのとおり、それぞれの幸せが何であったのかがしっかりと描かれています。
これまた期待していなかったぶんだけ、ストーリーも好感触です。
でも紹介文にある「人生の岐路に直面した三人の女性の姿を描く、ミステリアスな物語」のミステリアスってどういう意味なんでしょうね(笑)
「人生の岐路に~」という下りはわかりますが、この作品のどこにミステリアスな部分があるのか教えてほしいくらいです。
あえて挙げるとすれば、美幸の仕組んだ紗江子の夫の浮気騒動くらいでしょうか。
でもそれは美幸が持つ紗江子への憧憬と執着という面を描くためのもので、ミステリアスと呼ぶほどのものではないでしょう。
この言葉が持つ印象からストーリーを期待すると、はっきり期待外れになってしまうので注意しましょう。
と言うわけで総評ですが、期待していなかったぶんだけ好印象が多く、文章もストーリーもそつなくこなしてくれている本書ですが……。
及第以上良品未満――悪くはないんだけど、そこまでオススメできるほどの雰囲気があるわけでも勢いがあるわけでも秀逸な点があるわけでもないので、こういったところに落ち着いてしまうでしょう。
決してハズレではないので、手に取ってみてもいいとは思いますが、強いてオススメできる点がないのでこういう総評に落ち着いてしまいます。
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