ロック・ピープル101―Rock handbook
1995 佐藤良明・柴田元幸 編
このところ新しいCDを聴いてないので手持ちの本を紹介。
1955年から1993年までのロックスター101人について、佐藤氏を含め22人の執筆者がアーティスト1人(組)について書く。一組1~3ページくらい。先に紹介した「洋楽inジャパン」が雑誌が本になったようなにぎやかな感じなのに比べこちらはぐっと落ち着いた雰囲気。執筆陣は音楽ライターもいるが辻仁成、岡崎京子、手塚眞といった本業のほかrock好きな人たちもいて文章は読み応えがある。今だったらblogの1画面みたいだ。なにせ編集者の二人は東大の文学の先生。帯が「先生、ロックって何でしたっけ」である。執筆者の年齢は1950年代生まれが多い。
書いてるのは編集者の2人が一番多いが、他に見知った人では辻仁成はレッド・ツェッペリンとピンク・フロイド、キッスを書いてる。自身もバンドを組んでたが初めて聴いた時はどうだったかとか自分の経験を書いてる。私はこういうのが好きなのだ。
村上春樹がビーチボーイズ、手塚眞はノイバウテン、岡崎京子はクラフトワーク、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを書いてる。
時期を1955-1959「ロックが若さを、若さが自由を意味した頃」、1970-1976「70年代について70年代的に語ること」、1977-1993「迷走する快感のシステム」と銘うち3つにわけている。
このなかで「70年代について70年代的に語ること」で’54生まれの柴田元幸が文を書いてるが「70年代はシラケの時代というと誰でも相槌をうつがとりたてて気が滅入る時代ではなかったよ」と言っていて、なぜそういう言われ方をするかというと「熱い60年代、寒い70年代という図式から抜け出せないように思えてそれが我々(70年代が青春だった者にとっては)の気を滅入らせる原因だ」と言っている。「もちろん70年代のヒット曲はゴマンとあるけど」60年代のビーチボーイズと70年代のホテル・カリフォルニアを較べて「70年代」を確認する循環論法にはまりこんでいく、それがまた70年代的アイテムだ・・と 最後はやはりなにか論文みたいにしめてる。
ああ、でもこの感覚だなーとこう文章にしてもらうと実感する。この本はもう10年も前ので今となってはちょっと時代に関する感覚が違ってるが、当の70年代当時ヒット曲をききつつも熱かったという60年代に憧憬があったのは確かだ。