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朴槿恵政権のアキレス腱

2013年10月21日 | 南域内情勢

第16回ローソクデモ(2013.10.19、ソウル広場)



昨年12月の大統領選挙に際し、国家情報院が組織的な選挙違反(インターネットやツイッターの書き込みを通じた世論操作)をしたことで起訴され、裁判が進行中です。ところが最近、国家情報院だけでなく、軍隊のサイバー司令部でも同様の違法行為があったと摘発されました。朴槿恵大統領は相変わらず、自身の関知せざることだとの立場で、諸国を歴訪しての首脳外交に余念がありません。

 また、平和と民主主義、人権を掲げた全国教職員労働組合(全教組)が、政府の不当な干渉(解雇された教員の組合員資格剥奪)を拒否したことで、非合法化の危機に直面しています。かつて、軍事クーデターで執権した朴正熙元大統領も民主的な教員労組を強制解散させました。そして朴槿恵氏は与党の代表委員であった頃から、全教組を“アカ”呼ばわりし露骨な敵意を表明してきました。どの国の歴史においても、言論と教育を掌握することで、権力者は独善的な政権運営を行ってきたものです。民主化運動の成果が、じわじわと奪われていく状況に憂慮を禁じえません。韓国社会の現状を告発した、2013年10月21日付『ハンギョレ新聞』の社説を紹介します。(事務局) http://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/607832.html


これでも「去年の大統領選挙は公正だった」と言うのか!

 国家情報院(旧中央情報部:訳注)の心理戦チーム職員は昨年の大統領選挙期間に、朴槿恵(パク・クネ)候補のオンライン違法広報運動員として活動したことが明らかになった。ソウル中央地検に設置された「国家情報院の大統領選挙介入事件特別捜査チーム」が裁判所に提出した「公訴状の変更許可申請書」がそれを実証している。申請書に記載された国家情報院の職員によるツイッターの内容を見れば、開いた口がふさがらない。

 野党候補に対する従北(北朝鮮の指令で動く:訳注)攻勢、地域感情の助長、野党候補への中傷宣伝、虚偽事実の流布など、最も低質で卑劣な方式が総動員されている。さらには、朴槿恵候補の後援口座を積極的に広報する内容まで入っていた。

 “湖南(全羅道=野党の支持地域:訳注)に心から接する朴槿恵と、湖南を利用するだけの安哲秀(アン・チョルス)、文在寅(ムン・ジェイン)”“文在寅が当選すればは従北政権だ。だまされるな。金日成王朝の治下で奴隷生活したいなら、文在寅に投票しろ”“安哲秀や文在寅が大統領になるぐらいなら、いっそ犬や牛にさせろ”“朴槿恵候補の後援口座です。大統領選挙の勝利に大きな力になります。ARS後援電話060-700-2013….”

 国家情報院はこれまで、自分たちの大統領選挙への違法介入疑惑について「北朝鮮と国内従北勢力の宣伝に対抗する目的でコメントを書き込んだ。選挙介入という意識はなかった」と主張してきた。だが、今回明らかになったツイッターの内容は、このような主張が真っ赤な嘘であることを証明している。朴槿恵候補の後援口座まで案内するほどの違法な選挙運動を行ったのに、“北朝鮮に対する心理戦”を云々するとは、盗人猛々しいと言わざるを得ない。

 伝達文の内容も衝撃的だが、この短文をばら撒いた方法とその規模も驚くばかりだ。「自動リツィット(再転送)」というプログラムを利用し、昨年9月1日から12月18日までツイッターによって、何と5万5689回も上記のような悪意に満ちた内容が配布されたのだ。オンラインによる書き込みコメントに比べ、規模とその波及効果において次元が異なる途方もない違法な選挙運動である。ツイッターが選挙に及ぼす強大な影響力を考慮すれば、去る大統領選挙の全体的な公正性について、深刻な疑問を提起せざるをえない状況と言えよう。

 検察が「国家情報院の大統領選挙介入事件捜査特別チーム」責任者であるユン・ソギョル驪州(ヨジュ)支庁長を、電撃的に捜査責任者から解任した本当の理由が何かも、より一層明確になった。国家情報院の職員を逮捕・押収捜索する過程で“上司に事前報告がなかった”という解任理由は、取って付けたような難癖に過ぎず、本当の理由は、捜査チームが新たに探り出した国家情報院の犯罪行為が、メガトン級の破壊力を持っているためだ。政権の正統性を揺さぶるまでの深刻な国家情報院の違法行為に、捜査の手が伸びることを何としても阻止したかったからだろう。

 検察の上層部が“公訴状の内容変更要請を撤回することもありうる”と話すに至っては、全く呆れてものが言えない。捜査チームがせっかく明らかにした不法行為の証拠を隠ぺいすることが、果たして正義と法治を前面に掲げる検察のなすべき事なのか。捜査チームが上層部に対し“秘密作戦”を選択せざるを得なかった事情も、より一層ひしひしと理解できる。裁判所に提出した控訴状の変更要請すら撤回しようというのだから、国家情報院の職員逮捕や押収捜索を、上層部が承認するはずはないからだ。

 検察の最近の姿を見れば、自尊心も誇りもない惨めな組織と思えて仕方がない。「国家情報院の職員を拘束するには、あらかじめ国家情報院長に通知しなければならない」という規定は、どこに由来するのか。当初「中央情報部職員法」を作る時に、何の立法的な根拠もなく中央情報部に絶対権限を与えるために挿入された規定だ。検察が本来の使命感を持っているなら、こうしたいかがわしい規定に問題意識を持って当然なのに、ナム・ジェジュン国家情報院長が部下職員の逮捕に“激怒”したという一言で萎縮し、検察庁が大騒動になったというのだから嘆かわしくて言葉も出ない。

 ナム・ジェジュン国家情報院長の居直りと恫喝は、“国家情報院のオールマイティ時代”が再来したことを示している。部下組織員の途方もない違法行為が明らかになったなら、ひたすら自粛し謹慎すべきところを、あろうことか怒り猛って検察を責め立て、それに対し検察はひたすら平身低頭の有り様である。父親の朴正熙大統領が作った中央情報部の後身が、その娘のために不法選挙運動を行い、当時のとんでもない規定が彼らの違法行為を覆ってしまうというあきれ果てた現実。これがまさしく、逆立ちした大韓民国の現在の姿だ。

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