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日韓国交正常化50年

2015年06月25日 | 三千里コラム

「韓国挺身隊問題対策協議会」の記者会見(6.23,ソウルの日本大使館前)



6月22日は、日韓両国の国交正常化から50年を迎える日だった。当日、ソウルと東京での祝賀会には両国首脳が参加し、それぞれ祝辞を述べている。

日本大使館主催の宴会で朴槿恵大統領は「今年を、韓日両国が新たな協力と共栄の未来に向かう転換点にしなければならない。最大の障碍となっている歴史問題の重い荷物を、和解と共生の心で降ろせるようにすることが重要だ」と述べた。

一方、韓国大使館主催のレセプションでは安倍晋三首相が、歴史問題には全く触れずに「韓国と日本の協力強化、日米韓3国の協力強化がアジア太平洋地域の平和と安全に重要だ」と強調し、歴史ではなく安全保障の現実に力点を置いた。

「祖父・岸信介の日韓正常化における関与」を引き合いに余裕綽々と未来志向を語る安倍首相に比べ、ひたすら日本の善処を切望するかのような朴大統領のスピーチは、どこか悲壮感すら漂わせるものだった。わずか数日前までは、「日本軍慰安婦問題は現在、交渉の最終段階にきている」と意気高らかだっただけに、一体、彼女と韓国政府に何があったのだろうか。

「慰安婦」問題に関する彼女の発言は、6月12日付『ワシントン・ポスト』に掲載されたインタビュー記事だった。もっとも、朴大統領の見解に対し菅官房長官は6月15日、「発言の趣旨がはっきりしないので、コメントは差し控える」と、一蹴している。そして「日韓請求権協定で解決済みである、との日本政府の立場に変化はない」と付け加えることを忘れなかった。

朴大統領の豹変は推測するに、米政府から強い“警告”があったからではないだろうか。オバマ政権は北朝鮮を敵視し、中国への包囲政策を強化することを東アジア戦略の中心に据えている。米日韓の三国同盟がその要であるが、「慰安婦」問題など歴史清算がネックとなって日韓関係は極度に悪化している。

当初は中立を装っていた米政府も、今年に入って、朴槿恵政権の姿勢に露骨な不満を示し始めた。4月に訪米した安倍首相を歓待し、その未来志向を讃えて“歴史問題には目を瞑る”ことも躊躇しなかった。まるで、“国内の反対にもめげず集団的自衛権行使にひた走る”安倍晋三は優等生で、“国内世論に押され歴史問題に執着して大局が見えない”朴槿恵は問題児、と言わんばかりである。

米政府の関心は歴史問題の解決ではなく、日韓両国が米国の主導する三国軍事同盟において、各自の役割を忠実に果たすことだ。上述した朴大統領のインタビュー記事に接し、業を煮やした米政府が「イエロー・カード」を出したとしても不思議ではあるまい。

中東呼吸器症候群(MERS)への対処に失敗したこともあって、朴槿恵政権は厳しい局面に置かれている。「対日関係を改善せよ」との米政府の“要請”を受け入れるうえで、6月22日は格好の舞台だったようだ。

そして米国務省は同日、「肯定的な精神で50周年を記念しようとする日韓両国の努力を歓迎する。域内諸国の強力で建設的な関係が平和と安定を増進させ、それが各国の利益だけでなく、アメリカの国益にも合致すると信じている」とのコメントを発表している。

しかし、心から日韓の和解と友好を願う両国市民にとって、そして強制的に「慰安婦」とされた被害女性たちにとって、日韓両国首脳のコメントは看過できない内容である。

6月23日、日本軍「慰安婦」被害者である金福童(キム・ボクトン)さんと吉元玉(キル・ウォンオク)さんをはじめとする『韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)』の会員たちが、ソウルの駐韓日本大使館前で緊急記者会見を行った。この日は火曜日だ。毎週の「水曜デモ」以外の日に被害女性たちがこの場で会見するのは、珍しいことだった。記者会見には、日本の市民団体からもメッセージが送られている。

記者会見では、韓国政府の対日姿勢に関する糾弾が続いた。「慰安婦」被害者のキム・ボクトンさんは「韓国政府は一体、どこまで無能なんだ。この老いぼれが、何十年間もここに座って‘謝罪せよ’と言わなければならない」と、怒りを露わにした。

『挺対協』はコメントを出し、「アジア・太平洋地域の平和が脅かされているのは、日本政府が過去を反省しないからであり、軍事的に再武装したからである。アメリカが背後で操る軍事同盟の強化は、より一層緊張を高める要因となる。...安倍総理が太平洋戦争のA級戦犯である母方の祖父、岸信介を取り上げて国交正常化50年を祝う姿は、東アジアの平和な未来を威嚇する兆候のように見える」と批判した。

朴大統領の祝辞に対しても「これまでになく韓日関係が悪化した状況で、顕著な成果を出そうとした政府の焦りと無原則な外交政策が、何の意味もない祝辞を言わしめた。朴大統領が語る‘和解と共生’は、加害国日本が過去の侵略歴史を直視し、真摯な反省と謝罪、それに相応しい責任ある実行措置があってこそ可能だ」と強調した。

ユン・ミヒャン『挺対協』代表は「昨日の大統領発言を聞いて、慰安婦問題の解決なしに幕引きされるかも知れないとの危機感を持った。日本軍慰安婦と侵略戦争被害者の人権と名誉を回復せずに、真の解放はあり得ない」と強調した。

ユン代表はさらに「記者会見で安倍首相は、加害者なのに特別な権利があるかのように振る舞った。一方の朴大統領は、まるで弱みがある者のように日本政府の前で萎縮していた。韓国政府の外交姿勢は屈辱的だった」と一喝した。

そして「慰安婦被害者をはじめ日帝の侵略戦争による被害者の人権と名誉が回復され、歴史の清算が正しく行われない限り、韓国と日本の‘未来志向的な関係’は、他の新たな葛藤を誘発する欺瞞に過ぎないだろう」と付け加えた。

『挺対協』法律専門委員のイ・サンヒ弁護士は、50年前の日韓協定が問題の根源だと診断した。「50年前の協定は、50年にわたって韓日の関係改善に足かせとなった。その過誤を繰り返してはいけない。人間の尊厳に基づいた外交と、そうした外交に依拠した韓日関係を作っていくべきだ。歴史問題は‘降ろさなければならない荷物’ではない。‘解決しなければならない課題’なのだ」と主張した。

『挺対協』の指摘は、悉く正当だ。植民地支配と侵略戦争の責任を不問にし、賠償権を放棄して「経済協力資金」を受け入れた1965年の日韓協定は、民衆の広範な反対を武力で鎮圧した朴正煕軍事政権だったからこそ、可能だった。

軍事政権には正当な基盤も道徳性もなかったので、日本政府と対等な交渉力を発揮することができなかった。交渉に関わった者たちの多数は、植民地統治に服務した下級官僚や日本軍の将校だった。彼らにとって日本の植民地支配は被害や苦痛とは無縁であり、立身出世の手段でしかなかった。国交交渉の相手である日本側の代表団とは、実質的にも心理的にも、主従関係にあったといえるだろう。

1961年5月16日、クーデターで執権した朴正煕は同年11月に訪日し、岸信介や池田勇人(当時の首相)、佐藤栄作らを前にして、流暢な日本語で次にように述べたという。

「私は日本の陸士出身です。強い軍隊を養成するには日本式の教育が最適です。...先輩の皆さん、わが国を助けて下さい。日本は先進国ですから、私たちは弟として仕えます。どうか、兄のような心情で私たちを育てて下さい。」(李東元・元外務長官の回顧録を参照)。

この言葉に日本側が感動したのは言うまでもない。「ようやく、話の通じる相手に会えた」と、交渉の前途を楽観したそうだ。一般の国家間外交ではあり得ない非正常な“主従関係”による交渉は、さまざまな弊害をもたらすことになる。米中央情報局(CIA)の特別報告書『日韓関係の未来』(1966.3.18)によると、「1961年~65年にかけて、朴正煕の民主共和党に6600万ドルの政治資金が提供された。同党の総予算の3分の2に相当する金額で、日本の6企業が支援した」と記録されている。

日本は、親日的な軍事政権の安泰を望み、組織的に裏金を提供することで韓国政治に介入してきたのだ。その過程で、1962年の「金-大平メモ」が誕生する。賠償権を放棄し「無償3億ドル、有償2億ドル」の財産請求権で決着させたこの交渉は、当時の韓国中央情報部長・金鍾泌が担当した。

情報機関のトップを特使として派遣するのは外交慣例上、極めて異例のことだろう。しかも、交渉の場所が会議室ではなく、赤坂の料亭だった。韓国軍事政権が愛用した料亭政治は、自民党にも馴染み深いものだったようだ。いや、これも朴正煕らが日帝時代に、関東軍高位層から学んだものかもしれない。

朴正煕政権が進めた日韓会談は、どの時期を取り上げても、こうした野合の悪臭に満ちている。韓国の民衆にとって、軍事政権が締結した日韓協定は屈辱であり恥辱でもある。歴史の過ちは正さなければならない。被害当事者の要求を受け入れ日韓協定の関連文書が公開されるのは、民主化が進んだ盧武鉉政権の2005年1月だった。

同年3月には日韓請求権協定の見直しに向けた「民官共同委員会」が発足し、同8月に、以下の公式見解が発表される。

「請求権協定は日本の植民地支配の賠償を請求するためのものではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づき、韓日両国の財政的・民事的債権・債務関係を解決するためのものだ。日本軍慰安婦問題をはじめ、日本政府と軍隊など日本の国家権力が関与した反人道的な不法行為に対しては、請求権協定で解決したと見なすことができない。日本政府の法的責任は残っており、サハリンの同胞問題と原爆被害者問題も請求権協定の対象に含まれなかった」。

その後、韓国内ではこの公式見解に依拠して元徴用工とその遺族たちが、三菱重工業や旧日本製鉄に損害賠償を求めて提訴した。2012年5月、韓国最高裁は原告敗訴の原判決を破棄し、差し戻した。それを受け高裁と地裁では、2013年に相次いで原告勝訴の判決が出ている。言うまでもなく日本政府と各企業は「日本の法廷で敗訴しており、すでに日韓請求権協定で解決済み」と、強く反発した。

しかし、皆さんにはどうか冷静に考えてほしい。両国関係の核心である「植民地支配」という厳然たる歴史的事実に目を背け(基本条約)、その被害と苦痛を封印したまま、両国間の問題が“完全かつ最終的に解決された”(請求権協定)と言えるのだろうか。

解決されたのは、日本政府の言う「単なる領土分離の際の国の財産及び債務の継承関係」(『日韓請求権問題に関する分割処理の限界』1952年、外務省)だけであって、植民地支配や戦争被害への補償問題は何も解決されていない。少なくとも国連人権委員会と国際社会は、日韓請求権協定を“錦の御旗”とは決して見なさないだろう。「請求権は個人を対象にしたものであり、政府間の合意によって個人の請求権は消滅されない」というのが、国際的な人権意識の現状である。

歴史の過誤を正す作業は、被害国の一方的な意欲だけでは前進しない。「自国史の闇と不都合な真実」に向きあう加害国の勇気ある一歩があってこそ、巨大な虚偽の壁に穴を穿つことができる。日本社会の良心に期待したい(JHK)。

解放70周年・光州民衆抗争35周年・6.15共同宣言15周年

2015年06月15日 | NPO三千里鐵道ニュース

ノリぺ神命 マダン劇 スルレソリ

2000年6月、金大中大統領が平壌に飛び、金正日国防委員長と直接会談し、6.15共同宣言が発表された時、私たちは、これでやっと南北の和解と平和の時代が到来したと喜び、統一の夢に胸を膨らませました。

2007年5月、京義線が復元され試験運転がされた時、私たちは、人々が南北を往来し物資が行きかう姿を想像し、釜山から汽車に乗ってソウル、平壌を経て、ユーラシア大陸を横断する夢に胸を膨らませました。

しかし、2008年に李明博政権が誕生し、6.15と10.4の二つの南北共同宣言が無視されるにいたり、南北関係は冷え去り、2007年5月を最後に離散家族再会事業も途絶えてしまいました。
朴槿恵政権になったのちも南北関係は悪化の一路をたどるばかりです…

三千里鐵道は、6.15共同宣言以来毎年記念行事を開催してきましたが、今年は、光州からノリぺ神命を迎え、マダン劇≪スルレソリ≫を上演いたします。韓国の近現代史を伝統芸能カンガンスルレに乗せて振り返ります。ぜひご来場ください。

プログラム
主催者挨拶 NPO法人三千里鐵道都相太理事長
記念講演 康宗憲 韓国問題研究所所長
記念公演 ノリぺ神命 マダン劇≪スルレソリ≫
入場券 2,000円

名古屋公演 2015年8月5日(水)午後6時半  ちくさ座(千種文化小劇場) 
名古屋市千種区千種3-6-10  地下鉄桜通線吹上駅 徒歩3分

大阪公演 2015年8月7日(金)午後6時半  KCC会館大ホール
大阪市生野区中川西2-6-10        

主催:ノリぺ神命日本公演実行委員会  主管:NPO法人 三千里鐵道
連絡先 名古屋公演0532-53-6999  大阪公演080-3777-2566(呉)

■ ノリぺ 神命   
  1982年に創団され、光州全羅南道地域を基盤として活動している。 地域マダン劇の最初の作品“さつまいも”に始まり、‘安の物語’, ‘立ち上がる人々’, ‘いつか春の日に….’ など、作品を通じて‘全羅道マダン劇’の典型を受け継ぎ、定期公演と全国巡回公演を通じて、マダン劇専門芸術団体として位置づけられている。

■ 作品概要
·作品名:マダン劇≪スルレソリ≫
·出演者:俳優/ 오숙현, 지정남, 김은숙, 김혜선, 정찬일, 김호준, 홍지현, 소충섭, 백희정, 박해라, 이샛별 楽士/김종일
·企画・音響:한은주 ·演出:박강의 ·公演時間:80分 

■ 作品紹介
マダン劇 ≪スルレソリ≫は、韓国の民俗芸能である“カンガンスルレ”を作品化の基本の幹として、韓国の屈曲した近現代史を表現した。 壬辰倭乱(豊臣秀吉の朝鮮侵略)と日帝侵略など外勢の侵略、朝鮮戦争と5・18光州民衆抗争そして現在までのとうとうたる歴史の流れの中で、厳しく困難な時代ごとにその真価を発揮した民衆の共同体の力を歌と遊びを通じて表現した。
前マダン 윽신 악신 뛰어나 보세  -演者が登場してお祈りの舞をします。
第1マダン 남생아 놀아라  -壬辰倭乱が起こると、村の人々がすすんで外敵に対抗し一緒に戦う。
第2マダン 어서 가자 고향에  -日章旗を先頭に日本の軍人が村に入ってきたので、人々は村を脱出して、解放のために命を懸けた抗戦が繰りひろげる。.
第3マダン 새신랑 새각시 되었네  -解放を迎えた村の人々が帰ってきて、村には久しぶりに笑い声が響く。しかし、間もなく朝鮮半島は戦争の狂気に包まれ、村人たちは理由もわからないまま洞窟に連行される。
第4マダン 어디만큼 강가 당당 멀었네  -朴正煕政権18年の独裁が終わり、5·18光州民主化抗争を経験し、民主化のため
に一歩ずつ歩んでいたが、歴史の車輪は再び逆方向に進む。
第5マダン 남한산청 도척이야  -新世紀を迎えた現在、資本と権力は人々を無限競争の構図の中に追いやり、村の共同体は壊れ個人の生は破壊され蹂躙される。
後マダン 뀌자 뀌자 마음의 실을 뀌자  -人間性を回復して共同体を正しく立て直すために人々の意志が集められる。踊りを通じて、未来世代である子どもたちが良い暮らしができる健康で安全な社会を祈る。

■ 代表挨拶 ノリぺ神命 代表 呉淑賢
6.15共同宣言15周年を記念する席に≪ノリぺ神命≫を招請してくださり感謝申し上げます。
韓半島の統一と平和のために日本で行動する≪三千里鉄道≫をはじめとする在日同胞の皆さんに心より敬意を表します。
私たちが互いに両手を取り合って、歩いて、走って、向き合って、民族共同体の“興”をおこすことができるよう、祈ります。




「6.15南北首脳会談」15周年の学術会議

2015年06月11日 | 三千里コラム

学術会議で開会辞を述べる林東源・元統一部長官(6.9,ソウル)



6月9日、『金大中平和センター』と『韓半島平和フォーラム』が共催する学術会議が、延世大学・金大中図書館で開かれた。この日の学術会議は、南北首脳会談15周年を記念して開催されたものだ。林東源・元統一部長官が開会辞を述べた。

当時、金大中大統領の最側近として南北首脳会談の成功に献身した林・元長官は、開会辞で次のように語った。

“首脳会談と「6・15共同宣言」から15周年を迎えるが、最近の南北関係を見ると心苦しく胸が痛む。「6・15共同宣言」は南北関係の歴史において、分断克服のための集約的な表現だ。対話が中断され、接触が途絶え、緊張が高まるばかりの現状で、平和と協力の道を再び探そうとするならば、「6・15共同宣言」に道を問わねばならない。

...強大国がひしめく東北アジアの国際政治において、わが民族がその犠牲にならないためには、私たちの運命を自ら作り出すべきだ。韓国外交の力は、南北関係を改善してこそ生じる。朝鮮半島の秩序を私たちが決定してこそ、東北アジアにおいて韓国外交はその機能を充分に発揮できる。「6・15共同宣言」がそのことを証明してくれた。

...韓国政府に南北関係改善の意志があるならば、朴槿恵大統領が「6・15共同宣言」の遵守と引き続き発展させる意志を表明することから始めるべきだ。そうしてこそ突破口を開くことができるだろう。

...私たちの時代の最も重要な課題は分断の克服であり、朝鮮半島の冷戦構造を解体することだ。「6・15共同宣言」の精神に依拠し、そうした希望を創っていくことを切実に期待する。”

また、当時の主役の一人だった朴智元・金大中平和センター副理事長は、基調演説で次のように提案した。

“朴槿恵政府は、内政に続き外交も危機に直面している。政府に最後の機会があるとするなら、南北関係の改善を積極的に模索することだろう。そのためにも、李明博政権が下した「5・24措置」を解除し、北を改革開放に導いて南北が共生する経済共同体を作らなければならない。

...開城工業団地は、お金も儲けて平和も得る真の創造経済だ。ドイツ式の吸収統一、ベトナム式の武力統一とは違う、私たちが作った韓国型の統一モデルだ。南北の両政府が開城工業団地を始め、海州、元山、新義州、羅津・先鋒、咸興、清津など、北朝鮮全域にこのような創造経済、統一モデルを建設するように提案する。”

この日、学術会議の第1セッションは「分断70年、6・15共同宣言、統一の新しい地平」がテーマだった。「躍動する東北アジアと朝鮮半島の新しい可能性」というテーマの第2セッションは、ソン・ミンスン北韓大学院大学総長が司会を担当し、イ・ジョンウォン早稲田大学教授、チン・チンイ北京大学教授、ソ・ジェジョン国際基督教大学教授らが発表している。

「北朝鮮・中国・ロシアの三角関係と朝鮮半島」という主題で発表したチン・チンイ(金景一)北京大学教授は、次のように分析した。

“現在の東北アジアにおける地政学的な危機は、朝鮮半島の分断からそのエネルギーを補充されているといっても過言ではない。しかし、過去の冷戦時期と現在の状況は違う。冷戦期の同盟関係は共同のイデオロギーと政治的目標に基づいていたが、このような要素は消滅しつつある。「アジア インフラ投資銀行(AIIB)」にアメリカの同盟国も呼応していることが、その反証だ。

...朝鮮半島の分裂が東北アジア危機の「根源」ならば、逆に、朝鮮半島の平和と統合はこの危機を克服する道になり得る。朝鮮半島の地政学的な価値がいくら高くても、分裂状態でなければ大国が朝鮮半島に介入する理由がなくなる。その意味で、東北アジアにおける地政学な危機を克服する決定的要素は、韓国と北朝鮮にある。

...南北の和解・協力、あるいは平和的統一が達成されるなら、北朝鮮とアメリカ・日本との「対立的依存関係」は解消されるだろうし、米日の戦略的な指向も改変されるだろう。反対に、朝鮮半島が現在の緊張状態を維持するなら、米・日・韓同盟をベースにしたアメリカの対中国・ロシア牽制は、持続される可能性が高い。”

また、早稲田大学教のイ・ジョンウォン教授は、“朝鮮半島の地政学的な構図を考慮するなら、選択肢が決して多くないことがわかる。周辺国との二国間関係を深化・拡大して協力的な地域秩序を引き出さねばならない。

...朴槿恵政府・対外政策の核心である「東北アジア平和協力構想」や「ユーラシア・イニシアチブ」も、韓国が東北アジア秩序を主導するという側面では肯定的だが、具体的な実現戦略が不透明だ。構想はあるが現実化するだけのロードマップがない。東北アジアにおける核心的な二国間関係である韓日関係は、首脳会談もできずに行き詰まったままだ”と指摘した。
(6月9日付『統一ニュース』、『プレシアン』の関連記事を参照。JHK)

南北関係の現状を憂う

2015年06月05日 | 三千里コラム

「平和を願う書道作品展」を主催した『錦山塾』のカン・ミンジャ代表(6.2,ソウル)



『6・15南北共同宣言』の15周年を期して、民族共同行事をソウルで開催する準備が進められてきました。しかし、南北の政府当局は互いに不信と対決の基調を維持しており、共同行事の実現は困難な状況です。

6月1日、『6・15共同宣言実践北側委員会』は南の民間団体に書信を送りました。「韓国政府が“政治色のない純粋な社会文化次元での行事に限って許可する”という条件を付けている状況では、民族共同行事のソウル開催は不可能だ。ソウルとピョンヤンで分散開催せざるを得ない」との趣旨でした。

南の統一運動団体は「無条件でのソウル開催保障」を政府に要求し、14日までの期限で抗議の籠城中です。南北の政府当局が相互に和解・協力への姿勢に転じ、関係改善に向かうことを訴えます。最近の南北関係に関するニュースとして、以下の3編を紹介します(JHK)。

①在日民族芸術団体『錦山塾』が、ソウルで開催した「平和を願う書道作品展」。
②韓国での中東呼吸器症候群(MERS)感染拡大を受け、南北が防疫に協力する動き。
③韓国政府の『国際鐵道協力機構』への加入が、北の反対で挫折。


①日本でも“私たちの願いは統一”:「平和を願う書道作品展」(6月3日付『統一ニュース』)

5月31日~6月3日にかけ、ソウル市仁寺洞の白岳美術館で「平和を願う書道作品展」が催された。主催したのは在日同胞民族芸術団体の『錦山塾』。2日、記者の取材を受けたカン・ミンジャ『錦山塾』代表は「ここに来たくても来れない会員たちがいます。とても残念なことだし、解決すべき問題だと考えます」と、遺憾の思いを語った。

彼女は還暦を過ぎた年齢だとは信じられないほど、活気に満ちていた。そして、一緒に来れずに作品だけ参加した会員たちの思いを代弁するかのように、切々と語るのだった。「韓国籍」でない「朝鮮籍」を保有する在日同胞は、まだ韓国の地を踏むのが容易ではない。

カン代表は書道展の開催趣旨を、次のように語った。「統一は直ぐに実現するだろうと思って生きてきたのだが...。このごろは、死ぬ前に統一するのだろうかと、懐疑的になったりもする。それでも、在日同胞の民間団体が韓国との交流を続けながら、日本でも統一への思いを持って生きていることを知らせたかった。」

カン代表と会員たちは『錦山塾』を結成し、金大中政権の2003年、『釜山日報社』で初めての展示会を開いた。2007年(盧武鉉政権)には高麗大学校で二回目の展示をし、今回が三回目だ。
「‘平和を願う書道作品展’ですから、平和が来るまで継続するのでしょう?」と冗談まじりに尋ねたら、「続けないとね。会員たちが私より熱心に望んでいます」という返事が、矢のように帰ってきた。

48点に達する展示作品のなかには、統一に対する熱望を筆にしたためた作品をはじめ、『訓民正音』の解例本を几帳面に写した作品などが目を引いた。また、日本語で作家の心境を込めた作品も幾つかあった。

会員たちは設立33年になる『錦山塾』で、カン代表の指導を受けながら南の「宮書体」は言うまでもなく、北の「清峰体」や「玉流体」などもあまねく習得している。ハングル書道の実力を、10年以上も磨いてきた実力派たちだ。

「『錦山塾』の他にも、在日同胞2世たちが主軸になってハングル書道を研究する団体が少なくない」と、カン代表は耳打ちしてくれた。


②北から「MERS」検疫設備を要請、政府は支援の用意(6月4日付『聯合ニュース』)

韓国政府統一部によると、6月2日、北朝鮮当局から「熱感知カメラ」など検疫装備を支援してほしいとの要請があったという。開城工業団地に出入りする人員の、マーズ(中東呼吸器症候群)感染有無を判定するためである。

韓国政府は昨年11月、北側の要求でエボラ・ウイルスの検疫装備を支援した前例がある。それで、今回も北側の要請を受け入れる方向で検討中だという。

政府当局者は「エボラ・ウイルス拡散の際に、熱感知カメラ3台(1台当たり1500万ウォン)を北側に貸与し、返却してもらった。当時の熱感知カメラを北に支援する計画だ。これらの装備は、南の勤労者が出入りする北側事務所と、北の勤労者が開城工業団地を行き来する際に通過する出入口に、それぞれ設置されるだろう」と語った。

韓国政府も、開城工業団地を行き来するすべての南側人員を対象に、発熱検査を実施することにした。統一部の当局者は「これまでは開城工団から復帰する人員に対してだけ発熱検査をしたが、今後は開城工団に入る人員に対しても発熱検査をする計画だ。マーズ・ウイルスが北側地域に拡散しないよう、万全を期するつもりだ」と述べた。

外貨獲得のために中東地域へ大量の勤労者を派遣している北朝鮮は、韓国で発生したマーズ・ウイルスの感染に注目している。2013年度に北朝鮮が中東地域に派遣した労働者数は、カタール:約2千人、クウェート:約4千人、アラブ首長国連邦:約1千人、リビア:約250人、などである。

先月23日、『朝鮮中央通信』は「南朝鮮で死亡率が高い呼吸器性伝染病の感染」という題名でマーズ・ウイルス発病のニュースを初めて伝えたが、その後も時々刻々、関連したニュースを報道している。

『朝鮮中央放送』も3日、マーズ感染による韓国での死亡者発生を伝え、「呼吸器系の伝染病ウイルスが南朝鮮全地域で急速に伝播している。感染患者が30人に達しており、人命被害が拡大している」と報道した。

今回の事態伴い、北朝鮮が開城工業団地への出入りを統制したり、7月開催予定の「光州・2015夏季ユニバーシアード大会」への参加を見合わせるなど、南北交流にも悪影響を与えないか、憂慮されるところである。

政府関係者はこれに関して、「北側は我が方のマーズ患者発生に対して憂慮しているが、この問題は、北も“南北が一緒に対処すべきだ”との立場だと理解している。マーズ拡散による開城工業団地への出入り制限は、今のところ確認していない」と説明した。

キム・ヨンヒョン(東国大学・北韓学科)教授は「前例を見ると、国内の防疫能力が不十分な北朝鮮は、伝染病に極めて敏感に反応する。“初期に封じ込める政策”を堅持してきたので、ある時点で南北間の人的交流を制限する可能性もある」と憂慮した。


③韓国の『OSJD』加入、北の反対で挫折(6月4日付『統一ニュース』)

6月2日からモンゴルのウランバートルで、第43回『国際鉄道協力機構(OSJD)』の長官会議が開催された。『OSJD』はユーラシア大陸の鉄道運送を総括する機構だ。韓国政府が正会員としての加入を推進していたが、北朝鮮の反対と中国の棄権で失敗に終わった。

国土交通省は6月4日、「全方向的な加入活動により会員国の全面的な支持を確保し、去る4月の社長団会議を順調に通過した。最終段階の長官会議で北朝鮮が強力に反対の立場を貫いたので、残念ながら次回を期することになった」と明らかにした。『OSJD』は27ヶ国の全会一致制による運営なので、会員国のうち一国だけが反対しても、議案が否決される。

国土交通省は「韓国代表団長のヨ・ヒョング次官が、本会議の直前に北朝鮮側団長のチョン・ギルス鉄道相と会った。“韓国の加入は南北間の鉄道連絡を強化し全域の鉄道発展の契機になるだけでなく、北朝鮮にも大きな実利になる”と説明して協力を要請した。長官会議での公式演説を通じて、会員国の賛同と拍手を引き出すことにも成功した」と述べ、その間の活動を紹介した。

また、「今年は正会員に加入できなかったが、積極的な加入活動により、北朝鮮を除くすべての会員国から韓国加入の共感を得ることができた。新入会員の加入手続き変更(全員一致⇒2/3の同意)に対しても、活発な議論が進められたので改善を期待する」と明らかにした。

『国際鉄道協力機構』のショズダ議長は、「北朝鮮を除くすべての国が韓国を支持したわけで、近いうちに正会員としての加入を確信する」と語った。今回、北朝鮮と中国を除いた全会員国が韓国を支持した。特に、ロシア、ポーランド、モルドバ、グルジア、ウクライナ、チェコ、カザフスタン、リトアニア、ハンガリー、ラトビアなどの諸国が、本会議で韓国の加入を支持する発言をしたという。

ヨ・ヒョング次官は「今回の長官会議を通じて、北朝鮮を除く会員国から明確な支持を引き出した。会議録に韓国支持の意見が公式記録されたので、正会員加入に一歩近寄ったといえるだろう。正会員加入に向け引き続き努力する一方、朝鮮半島縦断鉄道と大陸鉄道を連結するための準備も、関係機関と協議して滞りなく推進するつもりだ」と明らかにした。

今回、韓国の正会員加入に関する投票で、なぜ北朝鮮が反対票を投じたのか。ある消息筋は「投票前日の6月3日、韓国政府は射程距離500km(北朝鮮全域を網羅:訳注)のミサイル発射実験をしたではないか。南北の両当局には、関係改善の意志がないように見える」と評した。

韓国の『OSJD』正会員加入が挫折したことで、朴槿恵大統領が掲げる「ユーラシア・イニシアチブ」と「シルクロード・エクスプレス構想」は、今後も説得力を失うだろう。北朝鮮における「新義州~開城」の鉄道・道路を連結する事業も、習近平主席が強力に推進している「一帯一路」事業に優先権を奪われる可能性が高くなった。