NPO法人 三千里鐵道 

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(続)朴槿恵大統領への支持率、どこまで落ちるのか?

2015年01月28日 | 南域内情勢

昨年12月15日以来、40日ぶりに首席秘書官会議を主宰する朴槿恵大統領(1.26)



朴槿恵大統領への支持率低下に歯止めがかかりません。遂に30%の大台を割り、20%台に入りました。人事の刷新を求める国民の声に、大統領は国務総理(首相)や一部の秘書官を入れ替えることで乗り切ろうとしています。しかし、世論が更迭を求める大統領秘書室長(キム・ギチュン)や最側近の秘書官3名に対しては、留任を表明しました。

今は韓国も確定申告の時期ですが、昨年度の源泉徴収と関連して庶民には事実上の増税となったこともあり、政権への不満がくすぶっています。また、南北対話に向けた政策転換の兆しも見えず、民心の離反が加速されそうです。以下に、1月28日付『民衆の声』に掲載された記事を要訳します。(JHK)


朴槿恵大統領への支持率が20%台にまで落ち、就任後の最低値を記録している。支持率の下落に対処するために‘人事刷新’カードを切ったものの、大統領の支持率を反騰させることができないのだ。

27日、世論調査機関『リアルメーター』の日刊集計結果によれば、朴槿恵大統領の国政運営に関する肯定的な評価は、29.7%を記録した。反面、否定的な評価は62.6%まで上昇している。前日の日刊集計結果と比較すると、肯定評価が0.4%下落、否定評価が0.6%の上昇となる。

週間集計値で見ると、民心の離反傾向はより顕著に表れる。先週、朴槿恵大統領の国政運営に対する肯定評価は34.1%、否定評価は58.3%だった。一週間で約5%も支持率が低下しているわけだ。

大統領への支持率下落と共に、与党(セヌリ党)への支持率も低下している。セヌリ党への支持率は27日付けで、35.4%だった。前日に比べて0.1%のマイナスである。

今回の調査は26~27日の二日間、全国の成人1,000人を対象にした電話面接および自動応答方式で実施された。標本誤差は、95%信頼水準で±3.1%。

朴槿恵大統領への支持率、どこまで落ちるのか?

2015年01月23日 | 南域内情勢

朴槿恵大統領への支持率。実戦=支持、点線=不支持(1.16『韓国ギャロップ』)



世論調査機関の『韓国ギャロップ』は1月16日、朴槿恵大統領の国政運営に対する国民世論の調査結果を発表した。それによると肯定的評価は35%、否定的評価が55%だった。調査は全国の成人男女1002名を対象にして、13~15日にかけて実施されたものだ。同社は毎週この評価を実施しており、事実上の支持率を問う調査といえる。

現政権の出帆以降、肯定評価が40%以下になったのは、昨年12月第3週目(37%)以来のことだ。否定的な評価の理由として、①独善的な政局運営(19%)、②人事の失敗(13%)、③選挙公約の不履行(11%)などが挙げられている。今回の調査結果には、1月12日の年頭記者会見に対する厳しい批判が反映されているようだ。

朴槿恵政権には以前から、“側近の秘書官たちが絶対的な権限を行使し、密室で国政を運営している”との批判が集中していた。しかし、大統領は年頭記者会見で“国政運営に関する疑惑は事実無根だ。今後も秘書官たちを信頼し政局を運営する”と述べ、国民の批判を一蹴した。

大統領の傲慢な姿勢には与党内部でも憂慮の声が高まっており、民心の離反も加速されているようだ。世論調査機関『リアルメーター』が22日に発表した数値によれば、朴槿恵大統領への支持率は33.2%と最低値を更新している。また、不支持が58.8%まで上がった。これも就任以来の最高値である。

朴槿恵政権には不動の固定的支持層(主に50歳以上の世代、慶尚北道地域の住民)があり、全有権者の1/3に達すると言われてきた。33.2%という数値は、そうした固定的な支持層以外は、もはや現政権に見切りをつけ始めたことを示しているのかもしれない。ちなみに『リアルメーター』の調査で政党への支持率を見ると、与党・セヌリ党が37.4%、野党・新政治民主連合は23.3%である。

1月22日、ソウル大学の『民主化教授協議会』は時局宣言文を発表した。宣言文は「韓国社会は今、総体的な難局に直面しており、その責任の大半は大統領と青瓦台(大統領府)が負うべきだ」と指摘している。

宣言文は末尾で、朴槿恵政権への要求として次の三項目を挙げている。
①大統領は危機を直視し、大統領府の人事刷新と全面的な内閣改造を直ちに実行せよ。
②対話と妥協、共生の政治を実現するために必要な、あらゆる措置を取れ。
③経済民主化と福祉の拡大、南北関係の改善に関する大統領選挙の公約を実践せよ。

韓国の大統領は任期5年で、再任が認められない。朴槿恵大統領は今年が3年目だ。実績を残すには最適の時期かもしれない。金大中政権は3年目に首脳会談を実現し、南北の和解と協力に向け新たな時代を切り開いた。盧武鉉政権も3年目に六カ国協議の合意達成に貢献し、朝鮮半島の非核化と東北アジアの平和構築において重要な役割を果たした。朴槿恵政権が大胆に政策を転換することで、南北関係の改善を主導するよう促したい。(JHK)

南北対話再開への課題

2015年01月19日 | 三千里コラム

「5.24措置」の解除と民間交流の拡大を求める市民団体(1.13,ソウル光化門広場)



2015年が明けて、すでに半月が経過しました。祖国の解放と分断から70年を迎える今年、地球上で唯一の分断国家となった朝鮮民族の一人として、南北の和解と平和統一に向けた何らかの希望を見出したいものです。そうした切実な思いは、南北の為政者や政府にも共通しているようで、新年早々から対話再開に向けたエールが交換されています。

北は1月1日の新年辞で、金正恩・国防委第一委員長が次のように提案しています。
①祖国解放70年の今年に、民族分断の悲劇に終止符を打ち自主統一の大路を切り開こう。
②緊張を激化させる戦争演習(韓米合同軍事演習)を中断し、平和的な環境を作り出そう。
③自らの思想と制度を絶対視して体制対決を追求すべきではない。
④高位級会談を再開し部門別会談を行う。雰囲気と環境が整えば首脳会談の開催も検討。

一方、南の朴槿恵大統領も1月12日の新年記者会見で、いくつかの提案をしました。
①光復と分断の70年を同時に迎える今年、断絶と葛藤にまみれた分断の歳月を終えよう。
②「統一準備委」を中心に国民の合意を集約し、平和統一への確固たる土台を構築する。
③必要なら首脳会談も検討するが、北が非核化への誠意を見せることが前提だ。
④民間次元の支援と交流を通じて、実質的な対話と協力への道を模索する。

双方の主張には、いくつかの共通点と差異があります。まず、共通点から見ましょう。南北ともに、節目の年を迎え関係改善と対話再開への意思を表明しました。しかし同時に、根深い相互不信から、“誠意を持って信頼に値する措置を先行させよ”と相手に要求しています。

関係改善の必要性は互いに認めつつも、実際に対話の席に着くのではなく、自らの主張を一方的に公表して相手の反応を見守る姿勢なのです。実質的な進展のない「声明合戦」に終始しているのが、南北関係の偽らざる現状と言えるでしょう。

次に差異ですが、分断の構造的な要因に根ざすだけに、その克服が容易ではありません。対話再開の条件に掲げた“信頼措置”として、南は「北の非核化」を、北は「韓米軍事演習の中断と制度対決(吸収統一)政策の撤回」を求めています。

ところで、「北の非核化(正しくは朝鮮半島の非核化)」は六カ国協議の議題であって、南北対話で解決が可能な問題ではありません。北の核開発は朝米敵対関係の産物だからです。朝米の関係改善(朝鮮戦争の終結と平和協定、米朝修好)と並行して推進しない限り、「北の核放棄」を先行して要求することは非現実的です。これは筆者の持論ではなく、2005年9月の「第四回六カ国協議共同声明」に明記された合意内容です。

しかも、南は昨年、韓国軍の戦時作戦指揮権(事実上の統帥権)を無期限で米軍に譲渡する(返還の無期延期)と表明しました。北が自らの体制保全に緊要な核問題について、軍事上の最高権限を保有しない南と真剣に協議することはないでしょう。

同様に、北の要求する「韓米軍事演習の中断」は、統帥権のない南が単独で決断できる事項ではありません。米政府の同意が必要です。よって、逆説的に思われるでしょうが、北が韓米軍事演習の中断を望むなら、先ず南北関係を改善し、南をして米政府を説得させるのが有効な手段となります。1991年の事です。南北対話を積み重ねることで、翌年の「チーム・スプリット韓米軍事演習」中断という、米政府の決定を導き出した前例があります。

また、南が昨年に結成した「統一準備委員会」(大統領が委員長)を、北は“吸収統一を目指す前衛組織”だと警戒しています。その組織を南は“統一政策立案の中心に据える”と表明したわけですから、対話再開への大きな障害になりそうです。

「統一準備委」には、統一問題の専門家よりも各分野の保守的な人士が主に網羅されています。この機構は“自由民主主義と資本主義経済による体制統一”を掲げることで、国民世論を牽引する目的で結成されたと推測されます。政権基盤の脆弱な朴槿恵政権が、国論集約を繕うための国内用組織と言えるでしょう。昨年12月29日、「統一準備委」が北に当局間の対話再開を呼びかけましたが、北からの反応はありませんでした。

このように、南北双方が相手の譲歩を要求して自ら積極的な和解策を実行しようとしない現状は、対話再開への展望を悲観的なものにしています。しかし、これまでに南北間で実現した首脳会談や高官級会談の経緯を見ると、すべての条件や環境が整備されてから開催されたわけではありません。首脳会談が行われた2000年と2007年にも、韓米軍事演習は実施されています。ただ、規模を縮小し北を刺激しないという配慮はありました。

相互不信に囚われ相手を批難するだけでは、南北関係は一歩も進みません。相手の真意と本気度を確かめるためにも、先ずは対話の席に着き交渉することから始めるしかないのです。その際に、「北の非核化」や「韓米軍事演習の中断」という難易度の高い軍事安保問題を優先するよりも、南北双方にとってハードルの低い、民間交流と経済協力の拡大に重点を置くのが賢明でしょう。

そして、互いに相手が望む内容に関心を示すことが肝要です。南は、北の指導者と体制を罵倒する宣伝ビラの対北散布を禁止し、北は、南が常に掲げる離散家族の再開事業に応じることです。対話再開にふさわしい条件と環境は、何もしないのに自然発生するものではありません。互いの意志によって作り出すしかないのです。それが、解放と分断の70周年に政権を担当した、南北当局者の民族的な使命ではないでしょうか。

最後になりましたが、南北関係に重大な影響を及ぼす米政府の朝鮮半島政策を検討してみましょう。残念ながらオバマ政権は、北に対して極めて厳しい対決姿勢を堅持しています。“戦略的忍耐”という名目で北との一切の交渉を拒否し、軍事的圧力と経済制裁を加重することで屈服を強要しています。金正恩体制の転換(レジーム・チェンジ)が主要な目標のようです。

昨年は「核・ミサイルの先行放棄」という従来の要求に加え、人権問題を通じた政治攻勢と、ソニー映画社へのサイバー・テロ問題を契機に国際的な孤立化を図りました。12月19日、米連邦捜査局(FBI)はソニー社へのハッキングを“北の犯行”だと結論づけましたが、具体的な確証を提示しませんでした。『ニューヨーク・タイムズ』をはじめ、米国内のコンピューター専門家たちが、政府の発表に疑問を提示しています。内部犯行の可能性を排除できないとの見解でした。

しかし、オバマ大統領は翌日に“北朝鮮への報復措置を取る”と表明し、“テロ支援国家リストへの再登録も辞さない”と意気込みました。そして1月2日には、北に対する追加の金融制裁措置に署名しています。新年早々に、しかもハワイで休暇中だった大統領が緊急に対処するほどの重大問題だったのか、甚だ疑問です。時期的には、年末年始にかけて南北双方から対話再開への意思表示があった事と、無関係ではないようです。

新年冒頭から首脳会談の可能性が台頭するなど、南北関係改善の兆候が感知されることに、米政府は極めて敏感な反応を示しているのです。1月2日、大統領が慌てて北への追加制裁を発表したのは、“現時点で、早急な南北和解と朝鮮半島の緊張緩和を望まない”という米政府の明確なリアクションと言えます。

オバマ政権の「アジア回帰政策」の本質は、対中国包囲網の形成と言えます。その象徴が“北の核・ミサイル脅威”を口実にした、対中国(北朝鮮)ミサイル防衛網の構築です。米日韓の同盟強化によって中国を牽制するためにも、朝鮮半島で一定の緊張と危機の造成が必要となります。オバマ政権の強硬な対北政策が、今後も続くようです。1月12日には、今年も韓米軍事演習を実施すると発表しました。

米政府の敵対政策を緩和させる動力は、対話再開による南北関係の改善しかありません。南北の政府当局は無意味な「声明合戦」を止揚し、速やかに対話を再開すべきです。そうした意味からも、李明博政権の下で断行された民間交流と経済協力の制限(5.24措置)を撤回することは、行き詰まった現状を突破する英断となるでしょう(JHK)

新年の国民世論調査-韓国市民が望む社会とは?

2015年01月08日 | 南域内情勢

歴代大統領への好感度-朴正煕↓、盧武鉉・金大中↑(2015.1.1『ハンギョレ新聞』)


今年は、日本帝国主義の植民地統治からの解放(光復)を迎えて70年になります。『ハンギョレ新聞』は元旦の特集として、国民世論調査の結果を報道しました。「光復100年となる2045年に向け、残り30年をどのように準備するのか」という問題意識から。今回の世論調査を実施したそうです。今回の調査は12月12~15日、全国の成人男女1000人を対象にした電話面接調査によって実施されました。調査の誤差範囲は、95%の信頼水準で±3.1%。以下に、その内容を要訳して紹介します。(JHK)


1. 望ましい社会とは?

“私たちの社会が今後、どのように発展することを願うか”という質問に、最も多い47.3%の回答が“貧富格差が少なくて社会保障の整備された社会”だった。

私たちの社会が追求すべき望ましい未来像として、「福祉と平等」を挙げた人が10年前に比べて急増した反面、「経済的豊かさ」を選択した人は急減している。未来に対する不安が深くなるに連れ、社会的連帯に対する欲求が強くなっているようだ。10年前の2004年5月に行った世論調査でも、同じ質問に「社会保障」を挙げた人が最も多く、37.3%だった。

10年間に10%ポイントが増えたわけだ。こうした変化は、上位1%の平均所得が全体平均所得の12.97倍へと貧富格差が激しくなった現況と、契約職の増加や退職年齢の下降といった雇用不安が深刻化する世相を反映しているのだろう。

「社会保障」に続き、「弱者も平等に保護される社会」が28%で2位を占めた。「平等な社会」は、10年前の調査では22.5%で3位だった。「弱者」に共感して「社会的連帯」の必要性を感じる比率が、ますます増加している。 双龍(サンヨン)自動車の解雇労働者をはじめとする非正規職労働者の闘争、母が二人の娘を連れて生活苦から自殺した事件など、社会的弱者が隈に追いやられる現実の影響であろう。

「社会保障」と「平等社会」に対する応答を合わせると75.3%で、10年間に15.5%が増加した。 これに対し、10年前に2位(31.9%)だった「経済的に豊かな社会」を選んだ比率は、半分以下の14.8%で3位に落ちた。

理念指向別に調べると、進歩層の「平等社会」に対する選好度が34.7%で、保守(25.6%)層や中道層(25.9%)に比べて10%ほど高かった。「社会福祉」に対する応答比率も、進歩(50.6%)が保守(47.3%)や中道(47.0%)より多かった。一方、「豊かな社会」に対する願望は、保守(18.3%)と中道(16.2%)が進歩(5.7%)に比べて圧倒的に多かった。

世代別に見れば、40代(54.6%)と50代(50.6%)で「社会福祉」の応答率が最も高く、これら年齢層が、現実問題である“老後不安”に悩んでいることがわかる。社会福祉のために増税が必要だという意見も、この10年間に多くなった。「税金を上げた方が良い」という意見は27.4%で、10年前の18.6%に比べて10%ほど増えている。

「今の水準で維持した方が良い」という意見も、37.1%から46.4%と、やはり大きく上昇している。「低くした方が良い」という応答は、10年前の42.9%から22.1%に急減した。福祉のための増税に対する抵抗感が、以前より減ったわけだ。


2. 若者がなぜ希望を持てないのか?

「三棄世代(恋愛と結婚、出産を放棄した世代)」と呼ばれる20代の若者たち。彼らの社会に対する悲観が深まっている。“悩んでこそ青春”と言われるが、最近の20代は過去と比較しても、あまりにも苦悩がひどい。 未来の主役である20代を励ます解決策が、至急に求められている。今回の世論調査で20代は、社会の「現在と未来」に対して最も否定的な展望を示した。

20代はまず、「私が暮らす韓国」に対する満足度から低かった。10人中3人(28.4%)足らずが‘満足する’と答えただけだ。全世代平均(38.7%)より10.3%も低い数値だ。満足度が最も高い60代以上(55.5%)と比較すると、半分ほどの水準にしかならない。

さらに、「社会の未来展望」にはより一層否定的だった。社会に対する評価を問う諸項目で、20代は10人中7人(71.6%)の圧倒的多数が‘良くない方向に行っている’と答えている。この中で(16.4%)は、‘非常に良くない方向に行っている’と見ている。反面、‘良い方向に行っている’との回答は、20代では3人中1人にも達しなかった(26.1%)。

20代は、「改善の可能性」に対しても否定的意見が優勢だった。我が国の未来が今より‘良くなる’と答えたのは(36.1%)で、すべての世代をあわせて最も少なかったし、‘悪くなる’という意見が最も多かった(34.1%)。

10年前と比較すれば、20代の悲観的な状況認識が深刻であることがわかる。2004年5月の世論調査結果と比べると、今回の調査で30~60代以上の世代では、「私が暮らす韓国」に対する肯定的世論が7%~20%も増加している。ところが唯一、20代では「満足している」との回答が、10年間に0.3%(2004年は28.1%)増えるのにとどまった。ほとんど変わっていないのだ。

また、かつて「社会の未来展望」に対して60代の次に楽観的だった20代は、10年を経て最も悲観的な世代に変貌した。2004年には20代の57%が「より良い未来」を予想したが、10年後にその比率は36.1%へと墜落した。一方、未来には「状況がさらに悪くなる」という意見が、9.2%から34.1%へと4倍近く増えている。

20代は、高い青年失業率と学資金ローンなどの借金増から、‘三棄世代’(恋愛と結婚、出産を放棄した世代)と呼ばれている。しかし今や、‘五棄世代’(マイホームの夢と社会的な人間関係まで棄てた世代)に転落したとも言われる。このように暗澹とした20代の現実が、そのまま反映された結果といえる。

今回の調査で20代は、‘経済的な不安定性’(67.8%)と‘社会的な成功および認知を得ることの困難’(20.7%)を、自身の人生に満足できない主な原因に選んだ。経済的な困難に苦しむためか、20代は今後の社会が進むべき方向として「貧富格差が小さくて社会保障が整備された国」(36.8%)、「弱者も平等に保護される国」(30.6%)を優先的に選びながらも、これに伴う‘増税’には最も否定的だった。「社会福祉拡大のための増税」が最も多かった30~50代に対し、20代は「今の水準を維持」(60.7%)、あるいは「低くした方が良い」(23.8%)という意見が多かった。

ところで、他世代の「社会に対する今後の展望」も、そんなに良い方ではない。全世代平均で「社会が良くない方向に行っている」との意見が、60.5%に達するからだ。加えて、「我が国の未来状況がさらに悪くなる」との予測(26.2%)が、10年前(16.1%)に比べて10.1%も増えている。わが国に対する全体的な満足応答が10年前(26.9%)より11.8%上昇したものの、「まずまずだ」(40.5%)と答えた中の69.5%は、私たちの社会が「良くない方向に行っている」と見ている。全般的に、楽観から悲観へと重心が移っていく様相だ。


3. 歴代の大統領で誰が最も好かれているか?

李明博-朴槿恵と続く保守政府を体験する過程で、国民の間には「強力な指導力」に対する期待が低下する反面、「民主的なリーダーシップ」を待望する声が高まっている。「望ましい国家指導者像」を質問したところ、「民主的な意志決定を重要だと考える人」を望む回答が51.4%で、「権威主義的でもいいから強力な指導力を持つ人」を望むという答(45.9%)よりも多かった。

2004年の世論調査では、「強力な指導者」を望むとの答(53.2%)が「民主的指導者」(44.7%)よりも多かった。10年ぶりに‘疎通’が‘権威’を逆転したわけだ。世代間、理念指向にともなう回答でも差異が目立った。

20代は「民主的指導者」に対する選好度(70.3%)が圧倒的に高い反面、60代以上は「強力な指導者」(62.2%)に対する要求が多かった。保守指向では68.8%が「強力な指導者」を望み、進歩指向の回答者は「民主的指導者」(73.7%)を好む。ただ、中道層では「民主的指導者」に対する選好度(61.2%)が、「強力な指導者」(35.7%)よりはるかに高かった。

こうした傾向は、歴代大統領への選好度調査でも具体的にあらわれている。「最も好きな国家指導者」を尋ねた質問に、朴正煕元大統領を挙げた答(38.5%)が最も多かったが、2004年の調査結果(50%)に比べると、11.5%も減少している。反面、盧武鉉元大統領は2004年の11.6%から2014年に32.1%へと、選好度が3倍近くも上がっている。

朴正煕・盧武鉉の元大統領はそれぞれ、「強力な指導者」と「民主的指導者」を象徴すると見れる。「強力な指導者」を好む回答者の65.1%が朴元大統領を最も好きだと答えたし、「民主的指導者」選好層の半分以上(52.1%)は、盧元大統領を挙げている。保守指向は朴正煕(66.4%)、進歩指向は盧武鉉(55.8%)を好む比率が高かった。中道層では、朴正煕(25.8%)よりも、盧武鉉(39.2%)の選好度が高かった。

特に、世代別の差異が際立っている。20代と30代では盧武鉉に対する好感度がそれぞれ49.4%、48.5%で高かったし、朴正煕14.2%、18.9%にl過ぎない。40代では盧武鉉(35.8%)と朴正煕(35.6%)に対する好感度に大差なかったが、50代と60代では、朴正煕への支持がはるかに多かった。特に60代では朴正煕への選好度が63.9%に達した反面、盧武鉉は10.6%に過ぎない。

二人の大統領に続き、金大中(11.5%)、李明博(1.7%)、金泳三(1.1%)の各元大統領が「好きな大統領」として挙げられた。金大中に対する選好度は2004年の8.6%から2.9%上がっている。「民主政府」を象徴する金大中-盧武鉉の両大統領に対する支持を合わせると43.6%[朴正煕への支持38.5%を上回る:訳注]で、10年前(20.2%)の調査より、2倍以上も高まったことが分かる。


4. 韓国が協力すべき国は?

「今後わが国の発展のために協力が最も必要な国はどこか」という質問に、回答者の58.5%が‘中国’と答えた。‘アメリカ’を挙げた応答は34.5%だった。これは、中国の経済大国化と韓中関係の拡大がもたらした認識の変化と判断される。2004年8月、『韓国社会世論調査研究所』の世論調査結果では、中国(43.7%)とアメリカ(41.8%)が拮抗していた。10年間に中国への関心が非常に高くなったことがわかる。

中国に対する選好度が高まったことは、2008年の世界金融危機以後、東アジアを中心に中国の浮上が目立っているのに伴う結果だろう。直接的には、韓中貿易の規模が韓米貿易の2倍に達しており、最近は韓中自由貿易協定(FTA)まで締結されたうえに、観光と留学をはじめとする人的交流も急速に増えるなど、韓国と中国の密接度が高まったからだと分析される。

加えて、アメリカに安保を過度に依存してきた「韓米同盟」に対する疲労感も、影を落としていると思える。理念指向に照らしてみると、進歩(70.3%)と中道(61.6%)が、保守(50.1%)に比べて中国側に傾斜している。概して保守層が「韓米同盟」を強調する雰囲気と、無関係ではないようだ。

世代別に見ると、職場で‘中国の力’を日常的に体験する40代(71.0%)と50代(65.7%)が、今後の協力国家として中国を挙げている。‘月収401万ウォン以上’の所得層で中国への協力選好度が高いこと(70.5%)も、中国と直間接的に事業面での利害関係が絡まっているためだろう。

これに対し、20代の若年層ではアメリカ(45.7%)と中国(47.9%)の比率が近接している。幼い頃から、ドラマ等を通してアメリカ文化にたくさん触れてきた20代の特性だろう。今後の協力国家で‘日本’を挙げた応答は、2004年の8.9%から今回は3.1%となり、半分以下にまで落ち込んだ。日本軍慰安婦問題など過去の歴史認識をめぐる「韓日葛藤」で、日本に対する好感度がかなり低下していることに注目したい。日本への選好度は、理念指向と関係なく等しく低下している。


5. 統一問題への視点は?

統一問題に関しては、「負担する代償が大きくても、できるだけ早期に達成すべき」が13.5%、「急ぐことなく徐々に統一条件を作るべき」が71%だった。「現状のままで良い」と、「関心があまりない」との応答はそれぞれ、10.7%と4.4%である。統一の当為性は認めながらも、急激な変化や災難を招きかねない「吸収統一」方式よりは、南北間の異質性克服を通した「漸進的統一」方式を好んでいることがわかる。

理念的指向や支持政党にともなう差異は、殆ど見られなかった。ただ、20代では「負担する代償が大きくても、できるだけ早期に達成すべき」という応答は4.5%で、平均を大きく下回った。「現状のままで良い」も18.9%で、平均のほとんど2倍に達している。20代において、「統一の当為性に対する認識」が最も弱いわけだ。

2003年5月、 『ハンギョレ新聞』の 創刊記念日をむかえて実施した世論調査では、「現状のままで良い」と「関心があまりない」はそれぞれ、7%と4.2%だった。今回のアンケート調査と比較すると、朴槿恵政府が昨年、「統一大当たり論」等で統一問題に対する関心を喚起させようとしたものの、統一に対する全般的な無関心が微増していることがわかる。