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『10.4南北首脳宣言』8周年記念、国際シンポジウム

2015年10月07日 | 南域内情勢

『10.4南北首脳宣言』8周年記念シンポジウム(10.2,ソウル)


2007年10月4日、ピョンヤンで第二回南北首脳会談が開催されました。その場で、2000年『6.15南北共同宣言』の実践綱領とも言える『10.4南北首脳宣言』が採択されています。両宣言が誠実に履行されていたなら、南北の和解と協力はより具体的に進展し、朝鮮半島の状況も平和統一に向かう鼓舞的なものとなっていたでしょう。

両宣言を本心では全く歓迎しない朴槿恵政権は、『10.4南北首脳宣言』の8周年を記念する何らの記念行事も行いませんでした。しかし、南北関係の改善を求める市民団体が合同で、国際シンポジウムを開催しています。その内容を伝える10月2日付『プレシアン』の記事を、以下に要訳しました(JHK)。


10月2日、ソウル市の世宗(セジョン)文化会館では、「ノ・ムヒョン財団」、「韓国未来発展研究院」、「韓半島平和フォーラム」、「統一マジ」など諸団体が主管し、『10.4宣言』8周年記念の国際シンポジウムが開かれた。シンポジウムには英国の「チェタームハウス」も参加している。

この日のシンポジウムにコメンターとして参加した「統一マジ」運営委員長のイ・スンファン氏は、“平和問題が南北会談の議題として具体化された事例がなかった。北が、平和問題はアメリカと議論すべき議題だと規定し、南とは主に交流・協力に関する議題を扱うという傾向があったからだ。『10.4宣言』はそうした限界を超えて、平和と統一問題における核心的な課題を取り上げたことに大きな意味がある”と評価した。

仁済(インジェ)大学のキム・ヨンチョル教授も、“『10.4宣言』は停戦体制を恒久的な平和体制にどのように転換させるかに関して、具体的な代案を提示したという点で重要な宣言だ。今後の対北政策では、李明博政権の登場とともに対北政策から消えた'平和'を強調しなければならない”と主張した。

『10.4宣言』は確かに、朝鮮半島の平和定着において南北主導の協力と努力を明示したという点で重要な意味を持つものだ。しかし一部では、盧武鉉政権の末期だったのでその後の履行が難しかったのではないか、という指摘も出ている。これに対しキム・マンボク(当時の国家情報院長)氏は、盧大統領もこのような危惧を述べていたと回顧している。

キム・マンボク元国家情報院長は“盧武鉉大統領も、政権が終わろうとする時点で南北首脳会談をすべきなのか自問し、関連部署との協議を重ねた。そして、『南北基本合意書』から『6.15南北共同宣言』へと続く南北関係の歴史的流れの中で、飛び石を置くことで渡るべき方向を提示しなければならない、との結論を出した”と明らかにした。

また、『10.4宣言』は歴史的意味を有しているが、先行政権の業績を消そうとするその後の政権によって、実際には正当な評価を得ていないという指摘も出た。

イ・スンファン委員長は“李明博政権は、盧武鉉政権が推進したいかなる政策も継続しないという、いわゆる'ABR'(Anything But Roh)政策で一貫した。朴槿恵政権もほとんど同じ立場だが、和解・協力政策を抹殺する上では、より強硬だ”と主張した。

イ委員長は“朴槿恵政権は南北関係で力の論理を貫徹させている。当局間対話でも、議題の設定や合意履行において、‘力で押しつけると北が屈服した’との対内宣伝を展開している。これまでの成果を消滅させるために、現政権の対北政策が推進されているようだ”と皮肉った。

キム・ヨンチョル教授は、去る8月5日に行われた京元線(南のソウルと北の元山を結ぶ鉄道路線:訳注)の起工式を例にあげて、朴槿恵政権で‘政権の成果つぶし’が実際に進められていると診断した。キム教授は“南北鉄道を大陸横断鉄道に連結しようとするのだろう。だが、京義線(ソウルと北の新義州を結ぶ路線:訳注)は2007年に試運転もしたし、すでに連結されている”と指摘した。

彼は“南北間に信頼さえあれば、いくらでも京義線を再運行して大陸鉄道と連結できるはずだ。しかし、京義線は盧武鉉政権の成果なので自分たちは新しい成果を作りたいのだろう。政派的な利害だけで南北関係を扱うのは深刻な問題だ”と付け加えた。

朴槿恵政権が、国内政治的な目的から高度な戦略を展開しているという見解も出てきた。実際には吸収統一と南北関係改善のどれも真剣に推進しないのに、平和統一と安全保障の両カードを手にした現政権が、支持率を高めるうえで適切に活用しているというのだ。

韓東大学のキム・ジュンヒョン教授は“朴正熙大統領は1972年の『7.4南北共同声明』が気に入らなかった。米-ソのデタントと国民世論に押され、やむを得ず合意した声明だった。今と同じように、当時も声明後に離散家族の対面だけが行われた。朴槿恵大統領は、南北関係改善に誠意を見せなかった父親と瓜二つだ”と一喝した。

コメンターたちは、朴槿恵政権の対北政策と金正恩政権の対南政策がそれぞれ、国内・対外政治的な目的によって動いているので、8月25日の合意で南北関係改善の糸口がもたらされたが、今後の関係改善は容易ではないと見通した。

イ・スンファン委員長は“南北が互いの必要によって一時的に対話局面を形成しても、相互の敵対と不信は解消されずに残っている。そのために、南北関係の不安定性が持続し固着する様相を見せている。「8.25合意」後も、変わらない様相だ”と述べた。

キム・ジュンヒョン教授も“北は、軍縮もするし6者会談も参加すると表明して、適当な水準での対話意志を対外的に示すだろう。南北が互いに、こうしたジェスチャーを取ることで残りの2年半を送るのではないか”と見通した。

加えて、国内世論も南北関係改善にそれほど友好的ではない状況だ。 キム・ヨンチョル教授は“南北関係や北への視点がとても悪化した。最近、除隊して復学した学生たちと話して驚いた。彼らは北を‘北傀’と呼ぶ。『7.4南北共同声明』当時、イ・フラク中央情報部長が、これからは‘北傀’という用語を使わないようにしようと言った。ところが、21世紀の今日に‘北傀’という言葉が、若者たちの意識に刻印されている”と憂慮した。

彼は“『10.4宣言』の履行と関連してその哲学は継承するものの、説得方法においては根本的な転換が必要だ。 特に若い世代を説得するためには、自身の人生と統一政策の方向がどのように連結されるのか、もっと具体的で実質的に説明しなければならない”と強調した。

また、“金正日総書記が『6.15南北共同宣言』は‘もぬけの殻’になったと発言した”との共著本の内容に関して、キム・マンボク元国家情報院長は“金正日総書記は‘『6.15南北共同宣言』が出た以後に情勢の変化があって、(共同宣言が)一枚の紙切れになってしまった’と話したのだ。『6.15宣言』が‘紙切れ’になったことに対して、金正日総書記が遺憾を表現したものだ”と説明した。


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