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朴槿恵大統領の「平和統一構想」

2014年03月31日 | 南北関係関連消息

ドレスデン工科大学で演説する朴槿恵大統領(2014.3.28)



ドイツを訪問していた朴槿恵大統領はドレスデン工科大学での演説を通じて、北朝鮮に核を放棄し住民の生活向上に向け努力すべきだと主張した。離散家族の面会事業をはじめとする人道的問題と、南北の経済協力などを北朝鮮に提案したのだが、その前提は北朝鮮の非核化であるという点を再度強調したと言えるだろう。

朴大統領は3月28日(現地時間)、同大学で政治法律分野の名誉博士学位を授与された。記念演説で朴大統領は、「人道的支援と南北経済協力が一日も早く実現するよう、北朝鮮は非核化の道に進まなければならない。北朝鮮が核放棄への決断をするならば、これに相応して北朝鮮に必要な国際金融機構への加入、および国際投資の誘致を積極的に支援する」と明らかにした。

朴大統領は北朝鮮に対し、△離散家族面会事業の定例化を含んだ人道問題の解決、△南北共同繁栄のための民生インフラ構築と経済協力の強化、△南北の民族的な一体性回復に向けた交流の活性化、などを提案した。

人道問題に関しては「国連と協力して、北朝鮮の妊婦と2才までの乳幼児に栄養と保健を支援する“母子パッケージ事業”を実施する」との意志を表明した。

また、民生インフラの構築と関連して「北朝鮮地域に農業・畜産・山林を同時に開発する“複合農村団地’”を造成する。そのために南北が力を合わせなければならない」と述べ、農業への支援を提案した。

そして経済協力については「現在、北朝鮮とロシアで推進中の羅津-ハッサン(ロシア領)間の物流センター事業と共に、新義州などを中心に南北と中国の協力事業を推進する」との計画を明らかにした。

さらに、南北の民族的な一体性回復のために「政治目的の事業やイベントよりは、民間次元での出会いを着実に拡大させる歴史研究、文化芸術やスポーツ交流などを奨励していく」と述べ、その実現に向け、相互に「南北交流協力事務所」を設置するよう提案した。

だが、朴大統領の提案が北朝鮮の非核化を前提としている点を考慮するなら、現段階で南北の協議を経て具体的な実現に向かうとは思えない。ソウル大学・統一平和研究員のチャン・ヨンソク専任研究員は、朴大統領の提案に対し「新しいメッセージというよりも、これまでの提案内容をもう一度喚起し、北朝鮮に非核化を強く促したもの」と冷静に評価した。

一方、韓国の市民運動団体『参与連帯』は翌29日に声明を発表し、朴大統領の提案が抱える問題点を次のように指摘している。

「最大の問題点は、現在の南北交流協力における重大な制度的障害物である5.24措置(2010年に李明博政権が採択した包括的対北制裁:訳注)に対し、何らの対策も提示されていないことだ。朴槿恵政府は去年、5.24措置を根拠に民間次元の人道的支援活動を制限した。その結果、民間の対北支援規模が2012年対比で3分の1水準に減少した。民間の人道支援と交流協力を許容する具体的な実行計画なしでは、今回の対北提案も空虚な話に終わるだろう。」

参与連帯はまた、「北朝鮮に核放棄を勧告しているが、不安定な停戦体制の解消と朝鮮半島の平和体制に関しては論議すら回避している」と指摘した。「核放棄を経済支援によって引き出す観点と処理方式は、李明博政府が採択しすでに失敗したことが証明された。前提条件なしで6者会談を再開し、朝鮮半島の核脅威を根源的に解消する方案に関する実質的な議論を始めるべきだ」と強調している。

声明はさらに「今回の演説で朴大統領は、ドイツ統一が歴史的な必然だったと言及しただけで、朝鮮半島統一の実質的なプロセスを提示しなかった。“吸収統一”を目論んでいるとの誤解を招きかねない。7.4共同声明、南北基本合意書、6.15共同宣言、10.4首脳宣言など、南北当局間の既存合意を尊重するとの意志を公開的に表現しないのは、大統領の“平和統一構想”の未来に暗影を投じる要因になるだろう」と憂慮した。

参与連帯の声明はその結びで、「統一問題には北朝鮮という相手と、国民という主体がある。だからこそ統一問題を国内政治に利用しようとする誘惑を捨て、内では民主主義的な手続きを尊重しすべての国民が合意できる代案を用意しなければならない。そして外では、北朝鮮との信頼関係を回復して対話の接点を形成できる実質的な措置を用意しなければならない」と促した。

最後に、3月29日付『ハンギョレ新聞』の社説から、その一部を引用する。

「今回の提案の最も大きな問題点は、北側の要求を考慮しない一方的な内容という点だ。 北側が切実に望むことが何かを考えずに、南側の要求内容だけを羅列したのだ。その結果、現時点で北側が最も必要とする肥料やコメ支援などは抜け落ちた。

 5・24措置の緩和・解除などの大勢を捉えないで、細部事案のみを羅列しているのも限界だ。今回の提案内容はすべて、南北当局間の高位級会談などが正常化すれば議論できる内容だ。その上、今回の提案には政治・軍事分野が全く言及されておらず、現実性に欠けると言わざるをえない。

 現在、南北関係は統一という言葉を持ち出すことすら出来ない状態だ。離散家族の面会事業が再開はしたが、後続の議論は全くなされていない。韓-米軍事演習と北のミサイル発射などで緊張が続くなか、最近では南北の批難合戦も再開している。高位級会談を行うとの2月合意が面目を失うほどだ。今必要なのは朝鮮半島の状況を管理して交流協力を進展させる実質的な方案だ。政府は北朝鮮核問題を解決するための6者会談再開についても、消極的な態度で一貫している。

 今回の提案が南北関係の新しい突破口を開くうえで寄与するには、南北当局間で高位級会談が一日も早く再開されねばならない。“全く違う生活を送ってきた人々を開かれた心(開放的姿勢)で接し、彼らの話にじっと耳を傾けなければならない”というメルケル・ドイツ総理の言葉を、朴大統領が聞き流しにしないことを望む。」

南北関係の改善に向けて(3)

2014年02月13日 | 南北関係関連消息

南北高位級会談で挨拶する南(右)と北(左)の首席代表。(2014.2.12,板門店)



南北高位級会談、成果なしに終わる
    南北、韓米合同軍事演習と離散家族の面会で対立か?(2014年1月13日『統一ニュース』)


朴槿恵政府の出帆後、初めての南北高位級会談が開かれた。会談は12日午前10時から夜11時35分まで、板門店の韓国側「平和の家」にて14時間近いマラソン会議となったが、成果なしに終わった。

南北はこの日の会議で、「キー・リゾルブ、フォール・イーグル、韓米軍事演習」と離散家族面会行事に関して、相互の見解差を見せた。

統一部の説明資料によれば、この日の会談で南側は、政府の対北朝鮮政策の基調である「韓半島信頼プロセス」の基本趣旨を北側に説明し、来る20日に金剛山で開かれる離散家族の面会行事が滞りなく開催されるべきだと強調した。

これに対し北側は「韓半島信頼プロセス」の基本趣旨に共感しながらも、朝鮮国防委員会の重大提案と公開書簡で明らかにした△相互の誹謗中傷を中断、△軍事的敵対行為の中断、などを受け入れるように要求した。

北側は特に、来る24日に始まる「韓米合同軍事演習」を離散家族の面会行事後に延期することを要求した。北側が離散家族の面会後に訓練を延期するように提案したのは、今回が初めてだ。

これに対し南側は、「離散家族の面会と軍事演習を連係するのは、純粋な人道的問題と軍事的事案を連係させないという原則に背くことで、受け入れることはできない」との立場を明確にした。

北側が離散家族の面会行事と韓米軍事演習の連携を表明したことから、来る20日に開かれる離散家族面会行事の行方が注目される。

統一部の当局者は「離散家族面会行事の行方を注視しなければならない。私たちが要求を受け入れなければ北側はどう対応するかに関しては、北側から特別な言及がなかった。状況を見守りながら、離散家族行事を準備しなければならない」と話した。

これと共に、北側は「最高指導者の尊厳と体制に関する南側言論の報道内容」を問題視し、韓国政府が統制すべきだと主張した。これは2月6日、朝鮮国防委員会政策局のスポークスマンが発表した声明を再度強調したものだ。

これに対し政府は「私たちの体制では、言論に対する政府の統制はありえない」と反論した。

南北は今回の高位級会談の決裂にもかかわらず、議論された懸案については引き続き協議していくとし、今後に余地を残した。

今回の高位級会談に南側は、キム・キュヒョン国家安保室第1次長が首席代表を務めた。北側ではウォン・ドンヨン統一戦線部第1副部長が団長だった。今回の会談は、2月8日、朝鮮国防委員会が韓国大統領府国家安保室宛に、西海の軍通信線を介した電話通知文によって提案された。大統領府がこれを受け入れ、実現したものだ。

今回の会談を提案するにあたって北側は非公開を望んだが、韓国政府はこれを拒否した。北側との協議を経て公開会談とすることで合意し、一日後に公式発表した。北朝鮮の官営『朝鮮中央通信』も、今回の会談を報道している。

北側が今回の会談を非公開にしようとした理由は知らされなかったが、南北関係を“ガラス張り”にするという朴槿恵政府の基調が、今回、南北高位級会談の公開に反映されたようだ。

南北関係の改善に向けて

2014年01月11日 | 南北関係関連消息

洪思徳(ホン・サドク)「民族和解協力汎国民協議会(民和協)」代表常任議長



 2014年の幕明けとともに、南北の最高指導者が新年のメッセージを表明しています。1月1日、金正恩国防委第一委員長は新年辞を発表し、「南北関係の改善をもたらす環境作りが必要」と説き、「同じ民族なのに互いに誹謗し反目し合うことは外部勢力を利するだけだ」と強調しました。そして、「民族を重視し統一を願う人なら、誰とでも手を携えて行くし南北関係の改善に向け積極的に努力する」と宣言しました。

 これに対し韓国政府は「北の真意が疑わしい」と否定的な反応を見せていましたが、6日に開かれた朴槿恵大統領の新年記者会見で、「旧正月(1月31日)を機に離散家族の再会を実現しよう」と提案しました。翌日、大韓赤十字社が実務会談の10日開催を提議したところ、北は朝鮮赤十字会ではなく、祖国平和統一委員会(祖平統)書記局が9日に回答を寄せました。

 「拒否」の回答でしたが、いくつかの条件が付与されています。先ず、旧正月は厳寒の季節であり時間的にも差し迫っている点を指摘しています。そして、「南で他ならぬ事が起きず、我が方の提案も同時に協議する意思があるなら、よい季節に対座できるだろう」と、余韻を残しました。北が言及した“他ならぬ事”は3月~4月に予定されている米韓合同軍事演習であり、“我が方の提案”は、中断されている金剛山観光の再開です。

 祖平統書記局の文書には「大規模軍事演習が予定され銃砲弾が飛び交うようでは、離散家族が心穏やかに出会うことができるだろうか」と皮肉った箇所があり、北も「南の真意を疑う」ことに変わりはないようです。相互不信の溝は深いですが、今回の北の回答は「実務会談への拒否」であって、「離散家族の再開事業」そのものへの拒否ではありません。赤十字ではなく祖平統が前面に出てきたのも、離散家族の再会事業だけではなく、南北関係全般に渡る交渉の意欲を持っているからだと判断されます。

 恒例とはいえ、米韓軍事演習が北を挑発し南北関係を悪化させてきた側面を看過してはなりません。中止できないまでも、その規模と期間を縮小することで関係改善へのメッセージを送るなら、演習が終わる頃には「対座するにふさわしい季節」を迎えることができるのではないでしょうか。(JHK)

 以下に、1月7日付『プレシアン』の記事を要訳します。ホン・サドク「民族和解協力汎国民協議会(民和協)」代表常任議長のインタビュー記事です。
 http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=10140107165458&Section=01



「南北の交流協力に消極的なのは恥ずかしいこと-対北コメ支援、4000億ウォンあれば可能。1945年体制を克服すべき」

ホン・サドク「民族和解協力汎国民協議会(民和協)」代表常任議長が、北朝鮮に対してもう少し果敢で積極的な行動を取るべきだと主張した。民間交流の重要性を強調したホン議長の主張は、パク・クネ大統領が新年記者会見で明らかにした構想に沿ったものだけに、今後の南北交流協力が活性化するのか注目される。

ホン議長は民和協のウェブ・マガジン『民族和解』に掲載されたインタビューで、昨年、南北交流が不振だったのは北朝鮮の内部事情のためだと述べている。「惜しむらくは、私たちがもう少し果敢で積極的な行動を取るべきだったのに、出来なかった」と自評した。彼はまた「何よりも、民間団体が人道的支援のために準備した物品すら十分に送ることができなかったのは、誰が何と弁明しようとも遺憾なことだ」と強調した。

チャン・ソンテク処刑で北朝鮮内部の情勢が不安定になり、南北関係にも否定的な影響を及ぼすのではないかという質問に対して、ホン議長は「今回のチャン・ソンテク粛清過程を見れば、キム・ジョンウン委員長が非常に果敢な決断力を有しているようだ。そういう果敢性を北朝鮮の改革・開放の方向に導くことができるならば、南北関係の発展と改善にも大いに役に立つだろう」との見解を表明した。

ホン議長はその間、南北間の協力事業がまともに展開できなかったことに関して、「政府も恥ずかしいと考えるべきだ」と指摘した。彼は「北朝鮮が開城と平壌、新義州を連結する高速鉄道および高速道路の建設を、中国との合作で推進するという報道があった。これはまさに南北交流と協力を疎かにした結果である。中国にこのプロジェクトを持って行かれたことを、韓国政府は恥じるべきだ」と政府に反省を促した。

彼はまた、「投資先がなくて悩んでいる国内20大企業の遊休資金が500兆ウォン、国民年金は400兆ウォンだ。わずか15兆ウォンに過ぎない工事を受注できなくて中国が請け負ったのは、あまりにも残念なこと」と語っている。ホン議長は「通行料の収益を北朝鮮がすべて徴収するとしても、韓国の政府と企業が担うべきプロジェクトだった」と表明した。

最後にホン議長は、「南の力量を発揮して1945年(分断)体制を克服しなければなければならない。北の同胞たちには年間100万トンの米が不足しているが、4000億ウォンあれば簡単に解決できる。私たちにはその何十倍もの力量があるのに、その力量を使えずにいる」と指摘した。そして「能力や力量だけを見れば、私たちが解決できる問題だ。地球上に残っている最後の“1945年体制”を克服しなければならない」と付け加えた。

『10.4宣言』から6年

2013年10月04日 | 南北関係関連消息

『10.4宣言』の6周年を記念する民族統一大会(2013.10.3,韓国江原道高城郡)



 6年前の2007年10月4日、盧武鉉大統領と金正日総書記はピョンヤンで首脳会談を開き、『南北関係発展と平和繁栄に向けた首脳宣言(以下、10.4宣言)』を採択しました。
 2000年6月の第1回首脳会談で採択された『6.15南北共同宣言』を具体化させた『10.4宣言』は、文字通り、南北関係を発展させ民族の平和と共同繁栄を目ざす実践綱領でした。

 とりわけ第4項では、南北が協力して朝鮮戦争の終結と平和体制構築に向け、主動的な役割を推進すると宣言しています。
 「南と北は現在の休戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を構築していくべきとの認識を同じくし、直接関連した3カ国または4カ国の首脳らが朝鮮半島地域で会い、終戦を宣言する問題を推進するため協力していくことにした。」

 また第3項の「西海での偶発的衝突防止に向け共同漁労水域を指定し、この水域を平和水域とする」、第5項の「海州地域と周辺海域を包括する”西海平和協力特別地帯”を設置し」などは、そのまま履行されていたなら、2010年秋の痛ましい軍事衝突(延坪島砲撃)は未然に防止できたと思われます。

 しかし、李明博政権から朴槿恵政権へと継承されるなか、『10.4宣言』の意義は大きく損なわれています。何よりも、国家情報院が南北首脳会談の対話録を違法に流出させ、与党がそれを恣意的な解釈で歪曲して昨年の大統領選挙に悪用したことが、今も尾を引いています。

 両首脳が合意した「北方限界線(NLL)」から「平和協力特別地帯」への転換は、画期的な未来志向の発想でした。対決の産物である「線」を和解の象徴である「面(地帯)」で覆うことにより、平和共存への道を切り開いたからです。

 朴槿恵政権と与党は、”盧武鉉大統領が金正日総書記の歓心を買うために領海問題で譲歩した”と批難しています。”北方限界線を放棄した”との主張ですが、部分的に公開された首脳会談対話録のどこを読んでも、そのような解釈は成立しないでしょう。ところが、保守メディアを総動員しての宣伝に、国民世論も少なからず影響されているようです。

 留意すべきなのは「北方限界線」が、決して国際法的に有効な境界線ではないという事実です。南が一方的に主張しているだけで、北はそれを承認しておらず、米政府ですら境界線として認定していません。もちろん、休戦協定の合意事項でもありません。

 『10.4宣言』は南北の当局間で交わした貴重な合意であると同時に、南北海外同胞の平和と繁栄への意志が込められた全民族的な叡智でもあります。『10.4宣言』を蘇生させ、着実な履行を推進したいものです。

 10月3日、「6.15共同宣言実践南側委員会」が主催する「10.4宣言の6周年記念民族統一大会」が、江原道の高城郡で開催されました。『統一ニュース』の関連記事を要訳して紹介します(http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=104356)。(事務局)



『10.4宣言』の履行が即ち南北関係の原則
  -『10.4宣言』を順守し実践することが、私たちにとって最高の統一運動だ-


  
 『10.4宣言』6周年をむかえて「6.15共同宣言実践南側委員会(以下6.15南側委)」は3日午後、江原道(カンウォンド)高城郡(コソングン)巨津邑(コジンウプ)の浜辺公園で、「10.4宣言の6周年記念民族統一大会」を開催した。

当初、この大会は去る7月4日の「6.15共同宣言実践民族共同委員会、南北海外共同委員長団会議」で共同開催すると決定されていた。しかし、離散家族再開事業の延期などで南北関係が冷却期に入った点を考慮し、分散開催として開かれた。

この日の民族統一大会で「南北海外共同委員会」は決議文を発表し、『10.4宣言』の実践を強調した。決議文は「歴史的な6.15共同宣言と10.4宣言を順守し実践することは、私たちの時代における最高の統一運動である。南北関係の原則も、相互信頼の出発点も、民族の志向と要求が含蓄されている南北の諸共同宣言を尊重して徹底的に履行するところにある」と強調している。

決議文はまた、「ここ数年の南北関係の現実は、南北共同宣言を離れてはいかなる南北関係の改善も期待できないことを証明している。南北共同宣言の履行に向け多方面な接触と対話、協力を再開し活性化していくために、積極的に努力するだろう」と明らかにした。

決議文は引き続き「南と北、海外の全同胞が力と知恵を集めて、統一と平和繁栄の未来を作ろうとするのが南北共同宣言の基本精神である。相手の体制と制度を否定し、対話を政治目的に悪用してはならない」と南側政府を牽制した。

そして「せっかく整った南北間の対話と協力が中断され、正常化の道に入った南北関係が再び予測できない危機に直面することになった理由もここにある。同族間の反目と不信、対決をもたらすだけの誹謗と敵対行為に反対する」と主張した。

さらに「祖国統一の前途には依然として多くの難関が横たわっている。しかし、6.15南北共同宣言と10.4宣言を順守し履行しようとする私たちの意志は、どんな障害にも挫かれることはないだろう。これからも、6.15民族共同委員会の先導的な役割を積極的に高めていく」との決意を表明した。

この日の民族統一大会でイ・チャンボク「6.15南側委」常任代表は、「昨今の政治に対して怒りを禁じ得ない。その一つは順調に進行していた南北関係の悪化であり、他の一つは命がけの闘争で勝ち取った民主主義の後退だ」と政府を批判した。

イ・チャンボク常任代表は「左派だ従北だとレッテルを貼って平和統一運動を弾圧するのは、民主主義に対する挑戦だ。金剛山観光と離散家族の再会事業は直ちに実現されなければならない。そのためには相手に対する不信を捨て、自ら進んで信頼を積むという姿勢が必要なことは明白な事実」と強調した。

特に、政府が審議中の「第2次南北関係発展の基本計画」で西海平和特別地帯の項目が削除された事実に対し、「盧武鉉元大統領がNLL(北方限界線)を放棄したという虚偽事実を流布させ、10.4宣言を瓦解させようとする企図の一環だ。現政府が何度も強調してきた’既存合意の遵守’という原則にも背く」と指摘した。

大会ではまた、最近の離散家族再会行事の無期限延期と金剛山観光再開のための南北実務会談中止など、南北関係の状況を批判する各界の発言が相次いだ。

オ・ジョンニョル「韓国進歩連帯」総会議長は、「10.4宣言が誠実に履行されていたなら、朴槿恵大統領が語ったように、列車で釜山からシベリアを横断して大西洋まで行きたいという夢が、単なるたわごとでなく実現されていただろう」と話した。

また、オ・ジョンニョル議長は「ところで、朴槿恵大統領は’休戦ラインに平和公園を作ろう’と提案している。だが、その一方では西海平和協力特別地帯の建設計画を削除した。これが私たちの現状だ。大韓民国政府を国民の力で、国民の心で動かさなければならない。 どのような勢力が祖国統一の課題を妨害しても、民族の大同団結、自主統一への大道は必ず開かれる」と強調した。

キム・ハンソン「6.15学術本部」代表は、「南北赤十字社が、全面的な生死確認、自由な書信交換、面会の定例化に合意した。これを直ちに施行しなければならない。両親・兄弟・子供の関係は天倫だ。 天倫をまともに守れない民族の羞恥と苦痛を速やかに断ち切ろう」と訴えた。

大会には、キム・ジンヒャン「6.15共同宣言実践海外側委員会」のヨーロッパ地域委員会共同代表、キム・ウォンベク「6.15共同宣言実践海外側委員会」カナダ委員会委員など、海外側委員たちも参加し、連帯の意向を明らかにした。

キム・ジンヒャン共同代表は連帯の挨拶で「10.4宣言の合意という驚異的な事件は、私たちの民族には統一の希望を、人類にはコリア民族の気高さを知らしめた。しかし6年が過ぎた今、冷戦を訪仏させる相互誹謗と敵対心によって、世界で最も戦争の危険が差し迫った地域に転落した。非常に残念だ」と話した。

キム・ジンヒャン共同代表はまた、「多数の誠実な人々が基本権を享受し、分断した南北がこれ以上は歳月を浪費せずに交流して協力することが海外同胞の夢だ。6.15共同宣言と10.4宣言は必ず実践されなければならない。これが朝鮮半島の永久平和と統一への道だ。 わが祖国、錦繍江山の統一を目ざす道で故国同胞らと共に歩みたい」と語った。

この日の民族統一大会にはソウル、京畿、江原、光州などの「6.15共同宣言実践」各地域本部と女性本部、「統一の道」などの諸団体から4百人余りが参加した。参加者は行事を終えた後、江原道高城郡の巨津邑一帯を行進した。

「10.4宣言の履行」、「金剛山観光の再開」と書かれたプラカードを持った参加者たちは、「金剛山観光を再開して地域経済を活性化しよう!」とスローガンを叫び、高城郡の統一展望台に移動して行事を終えた。

南北赤十字、離散家族の面会に合意

2013年08月24日 | 南北関係関連消息

赤十字社の実務協議で合意書を交換する南北の首席代表(8月23日、板門店)



開城工団の操業再開合意に続き、南北の両政府は8月23日、赤十字社の実務協議を通じて離散家族の面会行事に合意しました。
 
 離散家族の面会は南北分断後、1985年に初めて実現しましたが、継続されませんでした。そして15年の中断期を経た2000年、南北首脳会談の成果として再開します。それ以降、18回に及ぶ対面の面会と、7回の画像での面会事業が実施され、南北双方で4321の家族、2万1734名が面会を果たしました。2000年から2007年までは毎年開かれた面会事業が、李明博政権期には2009年と2010年に開催されただけです。3年間の中断を経て今回、9月にようやく実現することになったわけです。

 今回、面会者の規模は南北各100名です。現在、南で面会を希望する離散家族のうち、生存者が7万2千余名と言われています。韓国赤十字社はこの人たちを対象に、コンピューター抽選で200名から500名を選出する予定です。離散家族の苦痛を解消するためにも、面会の定例化と簡素化に向け、南北当局は最善を尽くすべきだと考えます。

 以下に、8月23日付『聯合ニュース』の記事を要訳しました。(JHK)
http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2013/08/23/0505000000AKR20130823196153043.HTML?template=2085


南北は9月25日から30日まで金剛山(クムガンサン)で離散家族対面行事をすることで23日に合意した。

双方はこの日、板門店の南側地域にある「平和の家」で赤十字実務協議を開き、秋夕(チュソク:旧暦8月15日)を前後した期間に離散家族の対面行事を実施するなど、4項目の合意書を採択した。

これに伴い、2010年10月を最後に中断された離散家族の対面行事が、3年ぶりに再開されることになった。

来月に対面する離散家族の規模は南北それぞれ100人。対面の方法と形式は慣例に従うことにした。

南北は秋夕の対面に続き、11月中にも離散家族の面会行事を実施することに共感した。それで、秋夕の対面直後に赤十字実務協議を追加で開くことになった。

双方は対面による面会とは別途に、画像面会も10月22日~23日に実施することで合意した。 規模は双方で40家族ずつである。

双方は秋夕の離散家族対面に向け、29日に生死確認を依頼する200~250人の名簿を交換する。その後、来月13日に生死確認結果を知らせる回答書を、そして16日には最終名簿をそれぞれ交換することにした。対面の5日前には、先発隊が金剛山に派遣される。

韓国政府は23日の協議で、離散家族問題の根本的解決のために、▲対面の定例化、▲生死と住所の確認、▲生死が確認された離散家族の書信交換、▲韓国軍捕虜(朝鮮戦争時)と拉北者問題解決に向けた生死と住所確認、などを追加で北側に提案した。

これと関連して、南北は当日の合意書に「離散家族の対面定例化、生死確認、書信交換実施など離散家族問題の根本的解決のために、引き続き努力することにした」と明示している。

キム・ヒョンソク韓国政府統一部スポークスマンは「南は面会場所としてソウル-ピョンヤンを、規模は200人を提示したが、北が金剛山に固執し、規模は100人が最大能力だと主張した。北側の立場を受け入れる代わりに11月の追加対面に合意したので、結果的には対面者の規模が拡大された」と語っている。

また、韓国政府の当局者は「秋夕の離散家族対面団に国軍捕虜と北へ拉致された人が含まれるのか」との質問に対し、「過去18回の離散家族対面行事をした慣例」を説明した。これまでは100人のうち10%である約10人が、国軍捕虜もしくは拉北者に割り当てられてきた。

政府当局者はまた、今回の実務協議で北側から「米支援や水害支援などの要請は全くなかったし、金剛山観光の再開に関する話もなかった」と明らかにした。

南北実務会談が妥結-開城(ケソン)工業団地の正常化など5項目に合意

2013年08月14日 | 南北関係関連消息

第7回南北実務会談で合意文書に署名する南北の団長(8.14 開城工団)


南北の両政府は8月14日、開城工団の正常化に向け、操業中断の再発防止など5項目からなる合意文書に署名しました。7回に及ぶ実務会談を重ねた結果であり、一時は決裂も伝えられただけに、8月15日の光復節(解放記念日)を迎えるうえで何よりもの朗報となりました。以下に、8月14日付『統一ニュース』の記事を要訳します。(JHK)
http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103704


南北は14日、開城工団の操業再開に合意した。
去る4月、北側が開城工業団地の勤労者を撤収してから129日目、先月4日の第1回南北実務会談から40日ぶりの妥結である。

開城工業団地の操業再開に向けた第7回南北実務会談がこの日午前、開城工団内の総合支援センター13階にある「開城工業地区管理委員会」事務室で開かれた。

会談で南北は、操業中断の再発防止および身柄の安全保障、開城工業団地共同委員会の設置、工団の国際化方案など5項目に合意し、キム・キウン南側首席代表とパク・チョルス北側団長が合意文に署名した。

南北は『開城工業団地の正常化に向けた合意書』の第1条で、「南と北は通行制限および勤労者撤収などによる開城工団の中断事態が再発しないようにし、いかなる場合にも情勢の影響を受けることがあってはならず、南側人員の安定した通行、北側勤労者の正常な出勤、企業財産の保護など公団の正常運営を保障する」と明示した。

これまで六回に及んだ実務会談で、北側が「政治的言動および軍事的威嚇」の止揚を主張し、南側は「北側が再発防止の責任主体」であることを明示するよう強調したが、今回の実務会談では、互いに一歩ずつ譲歩したと言える。

南北はまた、「今回の操業中断による企業の被害補償および関連問題を、今後構成される開城工業団地南北共同委員会で協議する」と明らかにした。

第2条では、「南と北は開城工団を往来する南側人員の安全を保障し、企業の投資資産を保護して、通行・通信・通関の問題を解決する」と合意している。

これと関連して南北双方は、△開城工団を往来する南側人員の安全な出入りと滞在を保障、△開城工団投資企業の投資資産保護、△違法行為が発生した際の共同調査と損害賠償など紛争解決のための機構を設置、といった具体的な項目を掲げた。

南北はまた、「常時的な通行の保障、インターネット通信および携帯電話通信の保障、通関手続きの簡素化と通関時間の短縮などの措置を取る」ことにも合意した。南側が要求してきた通行・通信・通関の、いわゆる「3通問題」が解決されたわけだ。

これらの項目を履行するために南北は、「開城工業団地南北共同委員会」を設置することに合意した。「開城工業団地南北共同委員会」は北側が第6回会談で主張したことであり、去る2007年11月に開かれた「10.4首脳宣言履行のための南北総理会談」で合意した内容でもある。

また、南北は開城工団の国際化方案にも合意した。

合意書の第3条には、「開城工団の企業に対して国際的水準の企業活動条件を保障し、国際的な競争力を備えた公団として発展させていく」と明記されている。

具体的に、△外国企業の誘致を積極的に奨励、△開城工団内の労務、税金、賃金、保険を国際水準化、△生産品を第3国に輸出する際には特恵関税を認定、△海外投資説明会の共同開催、などを推進することにした。

そして、このような合意内容を履行するために「開城工業団地南北共同委員会」を構成・運営して、傘下に分科委員会を置くことにした。「開城工業団地南北共同委員会」は、速やかに『「開城工業団地南北共同委員会」の構成および運営に関する合意書』を採決して活動を開始することにした。

だが、南北は開城工団の操業再開に向けた日程を合意文に明示しなかった。代わりに第5条で、「南と北は安全な出入りおよび滞在と投資資産保護のための機構を設置して、開城工団入居企業の施設整備と操業再開に向け積極的に努力する」と明言するにとどまった。

成果なく終わった南北実務会談

2013年07月26日 | 南北関係関連消息

第6回実務会談で応酬する南北の団長(7.25.開城工団)


7月22日に開催された第5回会談でも進展がなかった南北の両当局は、25日に6回目の実務交渉を継続した。しかし、今回も双方の主張は咬み合わないままだった。午後5時過ぎの終結会議を最後に、南北は今後の会議日程すら決めることなく会談を終えた。開城工業団地の操業再開をめぐる南北対話は、事実上の決裂で終わったようだ。

以下に、7月25日付『統一ニュース』の要訳記事を紹介する。これまで知らされなかった北の立場が紹介されており、何らかの参考になると思う。南は当然ながら北の主張に反発しており、南北関係は当分の間、対話なき膠着状態に入るようだ。 JHK
 http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103446


開城工業団地の南北実務会談、事実上の決裂か?

南北の第6回実務会談が25日、開城工業団地内にある開城工業地区管理委員会事務室で開かれたが、今後の会談日時を決めずに終了した。

南北はこの日の会談でも、操業中断の再発防止方案をめぐる異見を狭めることができなかった。そして、パク・チョルス北側団長が記者会見を自ら要望し、会談は「決裂の危機」と語った。

午後5時20分に行われた終結会議の直後、パク・チョルス北側団長が南側の共同記者団室にきて記者会見をした。彼はまた、その間に開催された実務会談で発表した北側の冒頭発言、合意文草案、修正案、再修正案も公開した。

記者会見で北側団長は、「今日まで6回にわたり会談を進行したが何の合意も成し遂げられず、ついに決裂の危機を迎えることになった。われわれ(北側)は、工業地区の中断事態を早期に解消し、操業再開に向け誠意ある努力をつくした」と述べた。

北側団長はさらに「われわれは6.15共同宣言の産物である工業地区を大切にし、その正常化を望むが決して強要はしない。開城工業地区は南側と組まなくても、私たちがいくらでも運営することができる」と強調した。

そして「会談場の背後から工業地区の中断事態を長期化させ、破綻に追い込んで対決を煽る者たちに警告する。南側との協力事業が破綻することになれば、開城工業地区の軍事境界線地域をわが軍隊が再び占めることになる。西海地域の陸路も永遠に閉ざされることになるだろう」と警告した。

彼はまた、「われわれは決して口先だけの言葉を弄するものではないし、これはいかなる威嚇でもない。このことを南側当局は、肝に銘じなければならないだろう」と話した。

北、開城工団の正常化に向け具体案を提示..パク・チョルス団長「南側が愚弄した」

パク・チョルス団長は記者会見で、今まで六回にわたる会談の内容も公開した。
パク団長は「我が方(北側)は工業地区の問題を一日も早く解決しようとの立場から、誠意ある努力をつくした。しかし会談で南側は一方的な主張に固執し、人為的な難関を作った」と南側に責任を転嫁した。

北側が公開した合意書草案には、△開城工業団地の操業中断が再発しないよう、一切の妨害行為を中断、△工業地区に出入りする人員に対し、身辺の安全保障、投資資産の保護、通行・通信・通関問題を解決する軍事的な保障措置、△国際的な競争力を備えた経済協力地帯の造成、などが含まれている。

また、4回目の実務会談では合意書修正案に、△南北経済協力を協議する事務所の再開、△2007年の南北総理会談で合意した開城工業地区分科委員会の設置、などを提示した。

そして開城工業団地の国際化に向けた案として、開城工団の勤労者賃金・税金・管理運営権なども国際基準に合うように改善して、現行法規と基準を修正・補完すると明示した。

第6回次実務会談の合意書再修正案では、△インターネット、移動電話などの通信保障、△通関手続きの簡素化および時間短縮、などを提示した。このための軍事的な保障措置は、南北軍事実務会談で協議・解決する、と建議した。合わせて、開城工業団地の国際化を目ざすうえで、「第3国への輸出に際した特恵関税の認定」も追加で提示した。

このような北側の具体的な提示とは違い、南側はひたすら「再発防止の保障」だけを要求し「相手方(北側)を愚弄した」というのがパク・チョルス団長の主張だ。

パク・チョルス団長は「南側は開城工業地区を政治的に卑下し、かつ軍事的に威嚇することによって、暫定中断事態に至った根本原因を除去するための原則的な問題の討議には熱意を見せなかった。我が方に一方的な責任と再発防止の保障だけを要求し、その要求が受け入れられない限り、正常化問題を議論できないと主張した」と話した。

彼はまた「南側は、工業地区を正常化した後にでも十分に解決できる、機構および制度的装置の問題に固執し、これらが先に整備されてこそ操業を再開できるという、漠然とした主張だけを繰り返した。会談では時間をずるずると消費するだけで、2回目と4回目の協議には草案文書も作らずに手ぶらで出てきて、会談を空転させた」と主張した。

また、今回の第6回実務会談でも南側は再発防止保障だけを提示し、「極めて挑戦的な修正案を持ち出すことで、対話の相手方(北側)を愚弄した」と繰り返した。そして「南側のこのような姿勢は、工業地区の正常化を妨げ、ひいては工業地区を完全に閉鎖させようとする故意的で計画的な陰謀に過ぎないと確認する」と述べた。

李鳳朝・元統一部次官のコラム

2013年07月22日 | 南北関係関連消息

李鳳朝(イ・ボンジョ)さん


李鳳朝・元統一部次官のコラム

本日(22日)、開城工業団地の操業再開をめぐり南北当局間の実務会談が開催中です。極東大学教授で元統一部次官の李鳳朝(イ・ボンジョ)さんが、この問題に関して『統一ニュース』にコラムを執筆しました。その間の経緯と実務会談の意義を的確に整理した内容なので、要訳して紹介します。李鳳朝さんは6月16日、名古屋で開催された「6.15共同宣言の13周年記念集会」で記念講演をしました。JHK
http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103385


<コラム> 開城工業団地の実務会談が成功しなければならない理由。 2013年07月22日 李鳳朝

南北対話が難航している。開城工業団地を稼動するための南北実務会談が四回も開かれたが、合意に至らずきょう、五回目の会談を行うことになった。このように相互批難と主導権争いに終始すると、対話への無気力症を誘発して対話そのものの継続を難しくする。

せっかく開かれた南北対話が、遅々と進まない根本的な理由は何だろうか?
南北で互いに求めるものが違うためだ。北は体制維持と安全のためには、どんな形式であっても対話が必要だという立場だ。反面、私たち南は対話を通じて、北に変化をもたらさせようとするためだ。

現状は紆余曲折の末に到達した対話局面と言えるだろう。しかし、昨年末の大統領選挙前に敢行した長距離ロケット発射、パク・クネ大統領就任直前の第3次核実験、それに続く戦争直前状態とも言える対南威嚇など、北による一連の緊張激化措置が今も不信の影を色濃く落としている。このような状況が対話の順調な進行を妨げる要因となっており、“原則”を強調する韓国政府の対北政策を正当化しているのだ。

さらにキム・ジョンウン体制の登場以後、南はもちろん国際社会において、北を対話と交渉の相手と認識するよりも三代世襲体制の不安定性と急変事態への備えが強調され、北との関係進展に懐疑的な立場が広がっている。

キム・ジョンウン体制は先軍政治を基調としつつ党の役割を強調することによって、先代体制の遺産を結合する政策を駆使している。これはキム・イルソンとキム・ジョンイルの政策路線を現実に合うように修正することで、自身の指導体制に対する住民の支持と体制内部の結束力を強化しようとすることだ。

北は去る3月31日、党中央委全員会議を開催して「経済建設と核武力建設の並進路線」を採択した。北はこの路線が経済発展に重点を置いていることを強調しているが、経済発展には外部の支援が必要だ。よって北は非核化と経済発展の相関関係に執着せざるをえない。 これがキム・ジョンウン修正主義路線の核心だ。

北は長距離ロケット発射と核実験を交渉のテコとし、去る5月に人民軍総政治局長のチェ・リョンヘをキム・ジョンウンの特使として中国に派遣した。チェ・リョンヘの中国訪問を契機に、対話モードへと切り替えたのだ。チェ・リョンヘ特使は習近平主席と面談した際に「関連国と協力のうえ、6者会談など多様な対話と交渉を通じて問題を適切に解決することを願っている」という立場を伝達した。

以後、北は後続措置として6月6日に南北当局会談を提案し、それが首席代表の「格問題」で決裂するや、6月16日には朝米会談を提案した。こうした一連の動きは、キム・ジョンイルの生前に企画されていた緻密なシナリオに従ったものと言えるほどで、党、政府、軍の一糸乱れぬ協力の下に推進されている。

パク・クネ政府がスタートして5ヶ月が経過した今、南北関係は突破口を見つけることができずにいる。開城工業団地の閉鎖と南北当局間会談の不発に続き、開城工団正常化のための実務会談も一向に進展を見せていない。もし進行中の実務会談が決裂すれば、南北間の梗塞局面が当分は続くだろう。

イ・ミョンバク政府の対北圧迫政策に続くパク・クネ政府の「原則的な対北政策」は、結果的に歴代政府が南北関係で達成した成果との断絶を深めるだろう。“原則と国際的スタンダード”の美名の下で、妥協と折衝の余地はさらに狭くなっている。このように(南の)一方的な対応は、去る40年にわたる南北対話の歴史において、歴代政府が依拠した立場とは相反するものだ。

今のように南北関係が行き詰まった状況では、戦略的かつ多元的な要素を考慮した折衝的な中間段階を経ずして、会談を成功裏に終えることは困難であろう。南北長官級会談の保留に続き開城工団の実務会談まで挫折すれば、相互不信はより深刻になり、今後の対話再開を更に難しくするだろう。そうなると南北関係は、対外環境の変化に依存せざるを得なくなる。

最近の中国は朝鮮半島問題と関連して、△朝鮮半島の非核化、△朝鮮半島の平和と安定維持、△対話を通した問題解決、といった三原則を堅持している。中国はこの原則に則り、中米、中韓の首脳会談で6者会談の早急な再開を強調した。中国は6者会談の議長国として今後、6者会談の再開に向けた環境作りに外交力を傾注するものと判断される。

同時に中国は、朝鮮半島の平和と安定のためには窮極的に南北および朝米対話が重要だという立場から、関連当事国に対し圧迫と仲裁の役割を遂行すると予想される。南北対話の進展如何にかかわらず、中国のイニシアチブで国際社会に向けた対話努力を継続するだろう。

その一方で、開城工団での実務会談に成果が無ければ、南北関係改善に向けた民族内部の動力は急速に消尽するだろう。開城工団の暫定閉鎖措置と一連の南北対話で誇示した“原則的対応”が国民世論の高い支持を受けていることで、パク・クネ政府は過信に囚われている。

去る5年間のイ・ミョンバク政府による対北圧迫政策と引き続く北の挑発が原因となり、国民の間には南北関係に対する疲労感が増大している。対北政策をめぐる保守・革新間の葛藤が深刻化している現状況で、合理的な代案の提示や議論そのものが不可能となっているのだ。

開城工団の実務会談が決裂し南北対話が長期にわたり開催できないなら、南北対話を先行させる立場が難しくなった北は、これを契機に朝米対話優先の名分を得ようとするだろう。そうなると韓国政府は南北対話に執着することもできないし、朝米対話を遮断する名分を探すことも難しいというジレンマに落ち入るかも知れない。

北と「対話のための対話はしない」というのは間違った言葉ではない。だが、今のように不信が深化した状況では「対話のための対話」になったとしても、対話そのものが持つ意味は少なくない。南北対話なくして、政府の掲げる「朝鮮半島信頼プロセス」を語ることはできないからだ。

北は開城工団実務会談の成否にかかわらず、7月27日の停戦協定締結60周年を控えて大規模な閲兵式開催などの戦勝記念行事とともに、韓米両国に対し平和協定締結に向けた攻勢を積極的に展開するだろう。

このような状況に備えるためにも、私たちは南北対話を継続しなければならない。それでこそ今後、多様な形態と内容の対話で私たちが主導権を行使できるからだ。そして開城工業団地の正常化は、朝鮮半島信頼プロセスと東北アジア平和協力構想の、出発点になるべきであるからだ。

南北、第4回実務会談でも合意に失敗。会談は長期化?

2013年07月18日 | 南北関係関連消息

第4回実務協議を終え、硬い表情で握手する南北の団長


南北当局は15日の第3回会談に続き、開城工業団地の正常化に向けた第4回実務会談を17日に開いたが、依然として立場の差を狭められず合意に至らなかった。南北は来る22日に、第5回目の実務会談を開催する予定である。

南側のキム・キウン首席代表は17日、会談後のブリーフィングで「前回の会談で交換した合意文草案をもとにして、双方が率直な意見交換を行なって協議を進めた。われわれは再発防止を実質的に保障してこそ開城工団を発展的に正常化させることができると説得し、実質的な再発防止案が合意書に含まれるべきだと強調した。一方、北側は公団の操業再開を優先する既存の立場をくり返すだけだった」と説明した。

会談後の報道を見ると南北双方は相手側を非難することに終始し、具体的な提案内容を公開していない。南側のキム首席代表も「再発防止保障措置に関して北側が進展した立場を見せなかった」と強調するだけで、「北側の提案内容を具体的に申し上げることはできない」と述べている。

一方、会談に参加した北側の関係者たちは「開城工業団地の発展を願うのは、南も北も同じではないか。同じ民族が肩を組み助け合って協力しようと作った場所なのに...」と述べ、「互いに相手の事情や立場を考慮すれば、適当な線で妥協することも可能なはずだ」と、一向に進展しない会談の行方に遺憾を表明した。

開城工団の入居企業も速やかな南北合意に期待を込めている。各入居企業は12日から始まった資材および完成製品の搬出を、五日目に当たるこの日も続けた。ある入居企業の代表は「私たちは公団の操業再開を想定して準備している」と熱く語った。一部の企業からは、「資材の搬出作業に際し北側の人員が参加し助けてくれた」との報告もあった。

開城工団の操業再開に向けた実務会談は、長期化の様相を見せている。今回の実務会談は、今後の南北関係を左右する重要な会談と言えるだろう。しかし、互いの原則的な立場を固執すれば会談は長期化するだけであり、会談の長期化に伴ってその動力も低下せざるを得ない。

双方は第一回目の会談で「開城工団の発展的な正常化」という認識を共有した。「発展的に正常化」する意志が強固で明確なら、その方法は、どのようにしてでも探せるだろう。南北は非生産的で消耗的な論争に、これ以上の時間を浪費すべきではない。

参考までに、7月18日付『聯合ニュース』の日本語版記事を紹介する。実務会談に関する『朝鮮中央通信』の記事を要約したものだ。韓国の主要メディアが北の報道をどのように紹介しているのか、参考にしていただきたい。 JHK



北朝鮮、南北当局者協議の報道で韓国を非難 

【ソウル聯合ニュース】北朝鮮の『朝鮮中央通信』は18日、開城工業団地の正常化を話し合う4回目の南北当局者協議で、韓国が誠意のない態度を示したと非難した。 同通信は前日に協議が行われたことを報じ、「南(韓国)側は工業地区問題に対する責任と一方的な再発防止担保だけを前面に押し出しながら、問題解決に人為的な難関を作り出す、誠意のない態度を取った」と主張した。

 さらに、韓国は工業団地を正常化しようと言いながらも合意書草案すら準備せず、「協議を行っているとのパフォーマンスだけを披露しようとしている」と指摘した。
 
 北朝鮮は協議で、工業団地の早期正常化と発展に向け、▼「(操業)中断事態」の再発防止、▼工業団地の安定的な運営と円満な企業活動を保障する機関・制度的な仕組みづくり、▼身辺の安全・投資財産の保護、▼通行・通信・通関、▼工業団地の国際的発展、などに関する実践的な提案をしたという。

 中央通信は「北(北朝鮮)側の誠意ある努力にもかかわらず、南側の不当な主張と不誠実な態度により、協議は結実なく終わった」と評した。5回目の実務協議が22日に開催されることも明らかにした。 こうした韓国非難は、4回目の協議で双方の溝が深かったことを示すものと受け止められる。

 一連の実務協議に対する北朝鮮の報道をみると、2回目の協議時には韓国に誠意がなかったと非難し、3回目は論評せず簡略に伝えている。

三千里コラム-負けるが勝ち

2013年07月12日 | 南北関係関連消息

開城工団での第二次実務会談を終えた南北の首席代表



 7月10日に開城工団の施設内で開かれた南北実務会談は、操業再開をめぐる対立が解決できずに終了しました。
 南は「北が労働者を一方的に撤収させ操業を中断させたのだから、その責任を負うべきだ。再発防止の保障がなければ操業再開はできない」という立場です。
 一方の北は「南の大統領自ら我々の体制と最高指導者を冒とくし、米韓合同軍事演習を強化して意図的な緊張を煽った。そのことが操業中断の原因だ」と主張しています。
 
 相手に非があるとの相互批難に終始していては、南北関係の改善は遥遠であり、開城工団の操業再開すら困難でしょう。開城工団を生活の場としてきた南の企業と北の労働者は、どのような心情で南北の実務交渉を見守っているでしょうか。彼ら、彼女たちのもらす、深い溜息が聞こえてきそうです。

 北は10日付で「金剛山観光再開のための南北実務会談を17日に、離散家族再会のための南北赤十字実務接触を19日に」開くよう提案しました。これに対し南は、金剛山観光再開への実務会談は拒否し、人道的な離散家族問題を中心に赤十字交渉を行おうと修正提案しました。当然ながら北はそれに応じず、11日の夕刻、前日に提案した実務交渉をすべて保留すると表明しました。

 北の提案で、主眼は金剛山観光の再開にあることは言うまでもありません。ただ、南の関心事項である離散家族の再会問題も同時に論じることで、交渉の実現を図ったわけです。一方の南は、北に実利を与える工団操業や観光事業の再開はできるだけ先延ばしにしたいのでしょう。

 南の対応は“一ドルの外貨もタダでは提供しない”と言わんばかりです。謝罪をさせ、物乞いをさせて屈服を強いるような姿勢は、南北の和解・協力を謳った6.15共同宣言の精神とは、あまりにもかけ離れたものです。

 北も、開城工団の操業再開に向け英断を下すべきです。南の企業と市民が、安心して工団操業と観光事業の再開を受け入れられるよう、当局の責任ある保障表明は不可欠です。かつて、金正日総書記は小泉総理に拉致問題の再発防止を確約しました。その事例を想起してほしいものです。

 長期にわたる分断状況で「勝敗」を論じることは好ましくありませんが、南北が互いに「負けるが勝ち」の精神を持って交渉に臨むことも大切です。別の言葉では「易地思之」です。時には相手の立場で考えてみることが必要です。相手の欲する物を与えることなく、己が望むものを得ることはできません。合意とは、妥協の産物だからです。 JHK。

参考までに、7月10日付の『統一ニュース』に掲載された記事を紹介します。
(http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103248)


開城工業団地での南北実務会談、合意に至らず15日に続開

7月10日、南北当局は第2次実務会談を行なったが、開城工業団地の操業再開条件をめぐる意見相違を解消できず、次の会談(15日)に議論を持ち越した。

10日午後、ソ・ホ南側首席代表は開城工業団地内の総合支援センターで、会談の結果をブリーフィングした。

この日の会談で南北は、開城工業団地の“発展的正常化”に関しては認識を共にしたが、操業再開の条件をめぐる対立から、相互の差異を確認しただけで終わった。

南側首席代表は「開城工業団地の発展的正常化に関する構想を北側に詳しく説明した。開城工業団地を国際的な水準の公団に発展させる意思を再度、明確に説明した。そのためには、北の一方的な措置で操業が中断される事態が再発してはならないという点を、くり返し強調した」と述べた。

さらに彼は「操業再開と関連し、今回の一方的な操業中断措置に対して責任ある立場表明がなければならない。再発防止に対する明確な約束と措置があってこそ、開城工業団地に関する内外の憂慮を払拭させることができる」と強調した。

つまり、南側は開城工業団地の操業再開条件として、△操業中断に関する立場表明、△再発防止への保障、という原則を固守したというわけだ。だが、立場表明と再発防止保障に対する具体的な提案に関しては報告されていない。

一方、北側は南側が再発防止の保障を持ち出したことに対して、最高指導者への非難を糾弾するなど、根本問題を提起した。南側の政府と言論による最高指導者への冒とくが、開城工業団地の操業中断を引き起こしたとの主張である。

北側は「6.15共同宣言の精神に則って開城工業団地を発展させるべきだ。開城工団の正常操業を妨げる一切の行為をしてはならない」とし、南側マスコミの報道と米韓合同軍事演習などを問題視した。

そして「開城工業団地の入居企業が設備の点検と整備を速やかに終え、操業を再開すべきである」と表明し、操業再開の優先を強調した。

北側が最高指導者への冒とく問題を取り上げたことに対して、ソ・ホ南側首席代表は「南にも体制の最高尊厳がある」と反論したことに言及した。北側の朴槿恵大統領に対する実名批判を迂回的に取り上げ、対抗したと見られる。

だが、南側が提起した開城工業団地の国際化問題に関しては、北側から特別な反論はなかったようだ。

ソ・ホ南側首席代表によれば、北側は開城工業団地を国際化してはならないとの立場を表明しなかったし、北側の『開城工業地区法』にも国際化が明示されているので、問題にならないと認識している。

『開城工業地区法』第3条には、「工業地区には南側および海外同胞、他国の法人・個人・経済組織が投資できる」と明示されている。

今回の第2次実務会談で、南北間には開城工業団地の正常化条件をめぐり原則的な立場の相違が明らかになった。来る15日に開かれる第3次実務会談も、難航が続くものと予想される。

一方、開城工業団地の施設点検のため、入居企業は予定通り、11日に開城工団に向け出発する計画だ。今回の開城訪問には、繊維・営業企業など76人と開城工業地区管理委員会の関係者など50人、計126人と車両93台が出発する。

南北、開城工業団地の通行を10日に再開することで合意

2013年07月07日 | 南北関係関連消息

南北両政府、開城公団の実務協議で合意書を交わす



開城(ケソン)工業団地に関する当局間の実務会談は延々16時間に及んだ。南北はマラソン協議を終え、来る10日から開城工業団地の設備点検および整備を進めることで合意した。 この日の合意によって、3ヶ月ぶりに開城工業団地は操業再開に向けた糸口を見出すことになった。

 6日午前11時50分から始まった会議は、7日午前4時まで続いた。まとめの会議で双方は「開城工業団地に関する南北実務会談の合意書」を発表し、「入居している企業の困難を解消して、開城工業団地を発展的に正常化していくとの認識を共有する」と明らかにした。

 合意書の主要事項は、△ 7月10日から南側企業の関係者たちが設備点検および整備のために開城工業団地を訪問、△南側企業による完成製品および資材の搬出、△開城工業団地を出入りする人員と車両の通行・通信の保障、および南側人員の安全保障、△操業中断の再発防止など開城工業団地の運営正常化に関する協議を7月10日に続行する、などだ。

 これに伴い、10日に開城工業団地での開催が予定されている後続会談で、南北双方がどれくらい立場を接近させられるか注目される。開城公団の正常化に向け南側が再発防止の約束を要求するのに対し、北側も自国労働者の賃金問題や税金問題を要求してくるだろう。そうなると、“発展的正常化”をめぐる状況は複雑な様相を帯びることになる。

開城工業団地の操業再開が至急だった理由は?

 南側は今回の会談で、北側の一方的な措置が発端となった操業中断事態が再び起きてはいけないとし、「再発防止」に焦点を合わせた。だが、北側からは南側の要求する再発防止約束に対して、特別な言及がなかった。

 実務会談直後に行われた記者会見で南側のソ・ホ首席団長は、開城工団の“発展的正常化”に関しては「十分に論議できなかった。今後も協議を続ける」と答え、南北間に少なからぬ異見があることを示唆した。

 今回の実務会談で南北は、“発展的正常化”をはじめ南側人員の安全問題など、いくつかの点で衝突する様相を見せた。しかし、双方はともに開城工業団地の操業再開に向けた意志は持っていたようだ。ソ・ホ団長は「北側が韓国企業の状況を正確に把握していた。開城工団の正常化に向け、積極的な努力を注いでいるとの印象を受けた」と述べている。

 南北双方が開城工団の操業再開に意欲を見せる理由としては、梅雨期の到来という気候条件が影響しているとの分析が有力だ。梅雨期への備えができずに南の企業は引きあげたので、このまま放置状態が続けば工場の機械が使用不能に陥る恐れがある。そうなると各企業は開城公団から全面撤収するしかなく、南北の両当局が公団閉鎖に対する責任を負うことになるからだ。

 一方、会談の結果を誰より気をもんで見守った入居企業は、南北双方が操業再開に向けた設備点検と整備のための訪問などで合意したことに歓迎の意を表明した。各企業は「良い結果が出てうれしい。工場の操業再開に向けた準備に着手する」と明らかにした。

*以上の記事は7月7日付『プレシアン』(http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=10130707082834§ion=05)を要約しました(JHK)。 

開城工業団地の運営に関し、南北当局が実務会談の開催に合意

2013年07月05日 | 南北関係関連消息

実務会談の開催場所、板門店北側地域の「統一閣」



開城(ケソン)工業団地の稼働が暫定的に中断されてから、3ヶ月が経過しました。開城公団では南の企業123社が工場を運営し、北の労働者53000人が生産に携わって来ました。
 開城工団の稼働は第一回南北首脳会談の成果であり、「6.15共同宣言」に謳われた南北の和解・協力という時代精神を反映したものです。

 言うまでもなく、開城工団の稼働中断は朝鮮民族にとって大きな損失です。その責任をどちらか一方に転嫁するなら、事態は一歩も前に進めないでしょう。南北の両当局は誠意を持って実務会談を成功させ、開城工団の再開と南北関係の改善に向けた義務と責任を果たしてほしいものです。

 41年前、南北の両当局は「7.4南北共同声明」を発表しました。共同声明の第一項は、祖国統一の原則を次の三点で要約しています。①統一は外国勢力に依存したり干渉を受けることなく自主的に解決すべきである、②統一は武力行使によらず平和的方法で実現すべきである、③思想と理念、制度の差違を超越して民族的な大同団結をはかるべきである。

 この原則に依拠するなら、少々の紆余曲折があっても、南北対話が決裂することはないはずです。6日に予定されている実務交渉を見守りましょう。
 以下の記事は7月4日付『統一ニュース』を要約したものです。
 http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103168


開城工業団地に関する南北当局の実務会談、6日午前に統一閣で開催
 
 開城工業団地の運営をめぐる南北当局の実務会談が、6日午前10時、板門店北側地域の「統一閣」で開かれる。

 4日午後8時25分頃、北側は板門店の連絡官を通じて、開城工業団地に関連する南北当局間の実務会談開催に合意した。

 これに伴い、南はソ・ホ「統一部南北協力地区支援団長」を首席代表とする3人、北からは、パク・チョルス「中央特区開発指導総局副総局長」を首席代表とする3人が派遣される。

 議題に関しては、政府が当初に提示した△開城工業団地の施設および装備の点検、△完成した製品および原料・資材の搬出、△開城工業団地の発展的正常化、などが議論される予定だ。

 また、北側は実務会談と同時に、開城工業団地に入居した企業関係者の開城訪問を許可すると提案していたが、韓国政府は拒否の立場を明らかにした。しかし、北側はこれといった反論を展開しなかった。北側が譲歩したと言えるだろう。

 一方、南北当局は会談場所に関して異見の違いを見せていた。

 北側はこの日午後5時、板門店での連絡官接触を通じて韓国政府の実務会談提案に対し、会談場所を開城工業団地内の総合支援センターとする修正案を提示した。

そして、総合支援センターがこの3ヶ月間使用されていなかった点を考慮し、南側の人員が5日に訪問して必要な準備をするよう要請した。

 だが、韓国政府はこの日午後7時15分頃の返信で、北側に提案していた板門店の「統一閣」または「平和の家」を、会談場所として固守した。

民主、(南北頂上会談)'対話録提出要求案'党論で賛成することに

2013年07月02日 | 南北関係関連消息
議員総会に入場するキム・ハンギル代表
キム・ハンギル民主党代表が2日国会予算決算委会議場で開かれた議員総会に入場している。
2013.7.2  scoop@yna.co.kr http://blog.yonhapnews.co.kr/f6464


 2007年10月の南北首脳会談の時に、盧武鉉大統領がNLL(北方限界線)を放棄すると約束したという攻撃が今も続いている。
 昨年の大統領選挙の時に、国家情報院が野党候補を不利にするためにした言論プレーが発端となったものだが、その内容を全面的に公開しようというものだ。
 本来であるならば、南北の最高機密にあたるものであり、このような形で公開することが望ましいものではないということは重々承知しつつも、国家情報院による言論プレーの違法性を満天下に明らかにするためには致し方ないというところか。

maneappa



http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2013/07/02/0200000000AKR20130702156000001.HTML?from=search


民主、'対話録提出要求案'党論で賛成することに



(ソウル=聯合ニュース)ペ・ジェマン記者=



文在寅"閲覧までが私の立場だったが党論従う"

(ソウル=聯合ニュース)ソン・スギョン、イ・クァンビン記者=

民主党は2日、国家記録院にある2007年南北首脳会談対話録原文と録音ファイルなど関連資料一切の閲覧・公開を要求する内容の'国家記録院保管資料提出要求案'に対する国会本会議表決と関連、党論で賛成することにした。

民主党はこの日、本会議に先立ち開かれた議員総会で要求案表決に対して'拘束的党論(強制党論)'方針を決めたと参席者が伝えた。

議員総会ではキム・ヨンファン、シム・ジェグォン議員など一部議員が対話録閲覧・公開に対する反対の立場を表わしたし、キム・ドンチョル議員も指導部の決定に遺憾の意を伝えたと分かった。

これに対しチョン・ビョンホン院内代表は"国民50%以上が故盧武鉉前大統領の発言に対して'西海NLL(北方境界線)放棄発言'でないと言うが、依然としてセヌリ党と保守陣営では、放棄するといったというような攻撃が続いていて、論議終息のためには公開が避けられない"とし、党論で賛成票を投じることを提案した。

キム・ハンギル代表も"今は半歩譲歩して総意を集めて秩序正しい姿を見せる時"と強調したと伝えられた。

これに伴い、賛成党論採択は特別な異議申し出なく'全員一致'でなされたと分かった。

党関係者は"金代表が仕上げの発言で賛成党論採択に反対があるかと尋ねたが反対意見がなかった"と伝えた。

文在寅議員はこの日議員総会には参加しなかったが、本会議出席前に記者たちと会って"閲覧までが私の意見であったが、党論に決まったので従わなければなりません"と話した。

hanksong@yna.co.kr



参考記事
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/15094.html

国家情報院 国政調査、今日から45日間

登録 : 2013.07.01 22:12修正 : 2013.07.02 06:57


 セヌリ党と民主党が‘国家情報院コメント疑惑事件などの真相究明のための国政調査’を2日から来月15日までの45日間実施することに合意した。 2日国会本会議で国政調査期間・対象・方法などが盛り込まれた国政調査計画書が通過すれば10日まで委員別に国政調査準備期間を経て本格活動に入る。

 国政調査特別委のクォン・ソンドン セヌリ党幹事とチョン・チョンレ民主党幹事は1日計画書通過に合意したが、今後特別委活動が始まれば本格的に議論される特別委の構成、公開可否、調査対象、証人採択問題などについては両者の見解の違いが大きく難航が予想される。 セヌリ党側では民主党側特別委委員中キム・ヒョン、チン・ソンミ議員が国家情報院女子職員に対する人権侵害疑惑と関連した被告発人であるため除斥理由に該当するとし特別委から除外することを民主党に要求した。 民主党は特別委委員交替権限は議長にあるとし議論対象でないと対抗し、反対に対話録流出論難の張本人であるチョン・ムノン議員の交替をセヌリ党に要求している。

 両党幹事は論議の末に与・野院内代表に特別委構成案を再建議し、10日までに結論を出すことで同意した。 また別の争点だった国政調査公開については国政調査および監査に関する法律により公開を原則とするものの、国家情報院職員出席など個別的状況の場合には委員会の議決で決めることにしたが、これもまた原則的な合意であり葛藤の火種は相変わらず残っている。

 最も尖鋭に正面対立すると見られる調査範囲と証人採択については、特別委構成後に本格議論される予定だ。 現在の調査範囲としては△ウォン・セフン前国家情報院長の不法指示疑惑・国家情報院女子職員などのコメント関連など選挙介入疑惑一切△キム・ヨンパン前ソウル地方警察庁長官の職権乱用疑惑およびクォン・ウンヒ前水西(スソ)警察署捜査課長のキーワード拡大など捜査関連疑惑△前・現職国家情報院職員の大統領選挙介入疑惑と秘密漏洩疑惑一切△国家情報院女子職員に対する人権侵害疑惑△その他必要な事項などについて合意している状態だ。 民主党はここに‘2007年南北首脳会談対話録関連疑惑一切’を その他必要な事項などの範疇に入れなければならないと主張しているが、セヌリ党は別個事案と見て反対している。

 証人の場合、民主党はナム・ジェジュン国家情報院長、ウォン・セフン前国家情報院長、キム・ヨンパン前ソウル警察庁長官、キム・某氏など国家情報院前・現職員、クァク・サンド大統領府民政首席、クォン・ウンヒ前水西警察署捜査課長などを基本としており、ここに対話録公開および事前入手と関連してクォン・ヨンセ駐中大使、キム・ムソン セヌリ党議員などを含ませなければならないという立場だ。 セヌリ党は民主党に内部機密を情報提供した前・現国家情報院職員とけしかけた疑惑があるキム・ブギョム前民主党議員、女子職員人権侵害疑惑に関連した民主党議員および関係者を全員証人として呼び出すべきで、対話録問題が国政調査に入るならば文在寅(ムン・ジェイン)議員も証人に入れることを主張している。


 与野党両党幹事は来る10日に会って調査範囲と証人採択などを協議する予定だ。

ハ・オヨン、ソンチェ・ギョンファ記者 haha@hani.co.kr



韓国語原文入力:2013/07/01 21:28
http://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/593957.html 訳J.S(1660字)

三千里コラム:鄭大世へのエール、国家保安法に強烈なシュートを!

2013年06月27日 | 南北関係関連消息


Kリーグのオールスター競技で声援にこたえる鄭大世(6.21)



鄭大世へのエール、国家保安法に強烈なシュートを!

 極右・反北団体が鄭大世(チョン・テセ)を国家保安法第7条で告発したのを受け、6月20日、水原地方検察庁は公安部が担当し捜査に着手すると発表した。李明博政権の末期に吹き荒れた“従北騒動”が、朴槿恵政権のもとで更に狂乱ぶりを増しているようだ。

 首脳会談で訪米中にセクハラを起こしたスポークスマンをはじめ、朴槿恵大統領の人事には何かと醜聞がつきまとう。実務能力よりも大統領への忠誠度を選択基準として優先するからだろう。現法務長官のファン・ギョアン任命に際しても、国会の聴聞会で不適格だとの指摘が少なくなかった。「ミスター国家保安法」の別名を持つ彼が、公安統治を重視するタカ派の法務官僚と見なされていたからだ。

 その指揮下で水原地方検察庁を統括するのが、地検長のキム・スナムだ。彼も政権への忠誠競争では決して後塵を拝しない検察官である。ソウル中央地検の第3次長だった2009年、彼は李明博政権の経済政策を批判するインターネット論客(筆名ミネルバ)を、電気通信基本法を根拠に起訴した。政権批判を封じ込めようとする無謀な試みは、無罪判決と同法への違憲判断で破綻したが、彼の忠誠心に権力者は注目したのだろう。加えて彼は、2012年MBC放送のストライキ弾圧に際し、労組の主要幹部に相次いで拘束礼状を申請しては却下されたことでも有名だ。こうした“功績”が評価され地方検察庁長に昇進した人物が、鄭大世の事件を担当している。

 国家保安法は1948年12月1日に制定された。大韓民国の成立とともに産声をあげ、分断体制を維持するうえで唯一無二の威力を発揮してきたこの法律は、65年を経た今も民主化運動や平和統一運動の弾圧に貢献している。昨日も、検察が「祖国統一汎民族連合(汎民連)南側本部」を押収捜査し、二人の幹部に逮捕令状を発布する事態が起きた。最近になって国家保安法事件が続発しているのは、昨年の大統領選挙で国家情報院の不正介入が発覚し、朴槿恵政権への批判が高まっている状況と無関係ではないだろう。

 国家保安法の本質的な機能は、政権批判の言動を弾圧する法的手段と言えるだろう。国家保安法は、国家「権力」保安法なのだ。同時にこの悪法は、平和統一を願う韓国民が北との和解や交流を、権力者の意向を超えた次元にまで拡大しようとすると、容赦なくその獰猛な牙を向けてくる。言うまでもなく韓国民とは韓国籍の保有者であり、当然ながら在日同胞も含まれる。世界中に居住する数百万在外コリアンの中で、在日同胞にだけ国家保安法やスパイ罪の犠牲者が多数存在することの意味を、噛みしめてほしい。彼らは決して、北の国家体制への忠誠心から苦難の道を歩んだのではないと思う。誰よりも熱い心で「統一祖国」という未来を信じたからこそ、青春と人生を獄中に埋めたのだろう。

 鄭大世への言われないバッシングにも、同じような切なさと怒りを感じる。なぜ彼が今、祖国で国家保安法の標的にされるのだろうか。彼がサッカー選手としての自身の存在を通じて、分断の壁を越えようとしているからだ。その壁はあまりにも厚く高い。しかし、もっと分厚く高大なのは、それを固守してきた国民の「意識の壁」だ。60年を越える敵対的な分断状況のもと、南北は国内外の同胞に対し国家体制への帰属と忠誠の表明を要求してきた。それは「南か北か」の選択を強制することにほかならない。しかし、多くの在日同胞は「南か北か」ではなく、「南も北も」という心情で生きている。それが在日同胞の生活に根ざした素朴な「統一マインド」だから。

 私たちの一世は、大韓民国や朝鮮民主主義人民共和国が成立するはるか以前に、故郷を離れ亡国の民として渡日した。国家よりも民族が先にあった集団である。二世以降の世代は、植民地統治を反省しない宗主国に生まれた分断祖国の在外同胞として、日常的な同化圧力のもとで自身の民族的アイデンティティを探求するしかなかった。私は常々、南の在外国民、あるいは北の海外公民としての誇りで生きる人々に敬意を持っているが、私自身は南や北、そして日本に対して一度も国家への帰属意識を抱いたことがない。韓国籍を持つ私がこのような発言をすると、即刻、韓日の国家主義者たちから「売国奴、非国民」と罵倒されるだろうが...。

 鄭大世は韓国籍を持つ、朝鮮民主主義人民共和国の元国家代表選手である。日頃から、朝鮮学校や北の体制と指導者へのシンパシーを隠さない。彼は在日同胞として、南北の旅券を持つ稀有な存在だ。前回のワールドカップ大会に出場した彼は、北の国歌を聞きながら涙した。競技後に彼は「在日としてこの場に立ったことに、心が熱くなった」と語った。韓国メディアに発した彼の立場は明確である。
 「私のアイデンティティは‘在日’だ。‘在日’が私の祖国であり、私は‘在日’のためにプレーする。でも、そんな国は地球上に存在しない。地図にもない。」

 鄭大世を“国籍”というカテゴリーで縛ることに、なんの意味もないだろう。彼はおそらく、「南か北」ではなく「南も北も」を実践しているのであり、何よりも「在日」というわたしたちのルーツに愛着を持って生きてきたからだ。彼は自らの存在と世界最大の競技人口を持つスポーツを通じて、統一祖国の未来を体現しているのだ。ところが国家保安法は「韓国籍を持つ者が金正日を好きになってはイカンのだ!」と剣幕をあげ、「そんな生き方は許さんぞ!」と、脅しをかけている。

 6月12日に予定されていた南北の当局会談が破綻した。対北世論が悪化すると、南では伝家の宝刀、国家保安法の出番が増える。しかし、金大中・盧武鉉政権の10年間に蓄積された南北の和解・協力という「平和統一マインド」が、韓国市民の間でも着実に育っていることを信じたい。6月21日、水原地方検察庁が国家保安法の刃を抜いた翌日のことだ。Kリーグ・オールスター競技に出場した鄭大世は、終了直前に見事な同点ゴールを決め、詰めかけたファンは彼に歓声を惜しまなかった。

 テセよ、怯むことはない。これからも南であれ北であれ、世界中のどこであっても、君は思いっきりプレーすればいいのだ。われらが誇る「在日」の代表選手として...。
 そして、時代遅れの遺物である国家保安法に、渾身のシュートを蹴りこんでやれ!

                                         2013年6月27日  JHK

三千里コラム-首席代表の「格」をめぐり、南北当局会談が中止

2013年06月12日 | 南北関係関連消息

キム・ヤンゴン朝鮮労働党統一戦線部長



12日にソウルで開催が予定されていた南北当局会談が、首席代表の「格」をめぐる異見を解消できず、中止となりました。

 北側はカン・ジヨン祖国平和統一委員会事務局長を団長に、南側はキム・ナムシク統一部次官を首席代表として名簿を交換しましたが、北側は南側首席代表が直前になって長官から次官に格下げされたことを理由に、会談保留の立場を表明したのです。

 前回の記事で紹介したように、南北当局会談を準備する実務接触で双方は、議題と首席代表の人選をめぐって17時間ものマラソン協議を続けたものの、合意には至りませんでした。
 
 首席代表をめぐる対立は、南が統一部長官のパートナーとして北に労働党統一戦線部長を指名し、合意文に明記するよう要求したことが発端でした。北は南北長官会談の慣例にないこととしてそれに応じず、結局それぞれ別途の発表文を出したわけです。

 南の発表文は「南側首席代表は南北問題を責任を持って協議・解決できる当局者」、北の発表文は「北側団長は相級当局者とする」となっています(原文の「サン」は「上」ではなく、長官を意味する「相」。日本のメディアが上級担当者と表記しているのは誤読)。当局会談の前日に、南が首席代表を次官に格下げしたのは、北がキム・ヤンゴン統一戦線部長を派遣しないと判断したからでしょう。

 朴槿恵政府の統一部は「現時代に相応しい、南北会談の新たなルール」を目指しているそうです。しかし、5年ぶりに再開する南北長官会談で相手側の首席代表を指名し、「受け入れなければこちらも格下げする」との姿勢が果たして賢明だったのか、疑問を抱かざるを得ません。

 イ・チェジョン元統一部長官はこの点に関し、「我々がこれまで、北に誰それを首席代表にと指名したことはない。そんな要求を出して会談が成功するだろうか。逆の立場で考えるべきだ」と述べ、「政府の無礼」と指摘しています。

 個人的もしくは社会的な関係で、「格が違う」という言葉を用いるのは、相互のレベルに圧倒的な「格差」が存在する時ではないでしょうか。今回の決裂を見ると、南北の首席代表に極端な「格差」があったようには思えません。相互理解の精神があれば、充分に受容できる想定内の「格差」でした。

 南北対話ではこのように、しばしば「格」の問題が浮上します。ただ、南北関係が複雑でややこしいのは、双方の政治制度と社会体制が違うために、職位の「格」を比較するのが容易ではないからです。

 これまでの南北長官会談で、南は統一部長官、北は内閣の責任参事が首席代表でした。北の内閣責任参事は、南では無任所長官に該当します。聞きなれない職位ですが「格」にこれといった問題は生じませんでした。

 今回、南が北の労働党統一戦線部長を指名したことは、二つの点で違和感を与えます。まず、いかに北が党中心の体制とはいえ、政府当局間の対話で労働党の対南責任者を指目したことです。筋違いといえるでしょう。もう一つ、より重要な「格」の視点です。北の統一戦線部長は、決して南の統一部長官と「同格」ではありません。労働党の統一戦線部は、南の統一部と国家情報院を兼ねています。強いていうなら、副総理レベル(それも筆頭)の職責です。

 ただ、南の立場も理解できる側面があります。北の祖国平和統一委員会書記局長が、南の長官格ではないという不満です。南の基準で見れば、書記局長は統一部長官より下位の職位といえるでしょう。しかし、複雑なのはこの職位が、北では南の統一部次官よりも上位格だという点です。

 長期に渡る分断の歳月は南北に異なる体制を定着させ、双方に同格・同級の職責が存在することを困難にしました。この現状を冷静に直視し、相互の体制を尊重する立場で出発するしかありません。今回、南北当局間の交渉過程を見ていると、双方の不信感と対決意識の根深さに、今更ながら分断の過酷さを思わずにはおれません。

 南北の当局は互いに、会談を実りあるものとする努力よりも、相手の機先を制し対話での主導権を握るために力量を費やしているように見えます。せっかくの機会を無にしてはならず、南北海外同胞の統一願望に応えるためにも、速やかに対話再開への決断を下すべきです。

 無意味な「格」論争に時間と労力を消耗するべきではありません。
 いま必要なのは、会談の「格」ではなく、南北間の和解・協力と平和統一に対する当局者(最高指導者を含め)の強い意志です。 (JHK)