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朴槿恵大統領への辞任要求

2013年11月20日 | 南域内情勢

国家情報院事態の解決と民主主義回復を求める時局ミサ(9.13、光州市の南洞聖堂)



「国家機関の違法な選挙介入に対し、大統領は責任を負わなければならない!」
カトリック教会全州教区の「正義具現司祭団」、朴槿恵大統領の辞任を要求。『ハンギョレ新聞』電子版2013.11.20 、21:51


カトリック教会「正義具現司祭団」に所属する全州教区の司祭たちが、国家情報院など国家機関の違法な大統領選挙介入への責任を追求し、朴槿恵大統領に辞任を迫ることにした。

全州教区の司祭団代表は去る11月11日、全羅北道群山市の寿松洞聖堂で会議を開き、その間、国家情報院の選挙介入に関して時局ミサでは要求しなかった「大統領辞任」を促すことに決めた。

会議で司祭団は「去年の18代大統領選挙は国家情報院、国防部、国家報勲庁などの国家機関が介入した違法選挙であったことが明確になった。その総責任は朴槿恵大統領にある。しかし、各界各層が責任と真相究明、謝罪を要求しているのに、当事者は何の対応もしない。大統領職の辞任をもってその責任を問うほかはないと決めた」と、会議に参加した神父が語った。

全州教区の司祭団は22日午後7時、群山市の寿松洞聖堂で「違法選挙糾弾と大統領辞任を促すミサ」を奉献する予定。この日の説教はパク・チャンシン元老神父が担当する予定だ。司祭団は以後、全州(チョンジュ)、益山(イクサン)・井邑(チョンウプ)などの地域を巡回して時局ミサを相次いで開催し、大統領への辞退要求を継続することにした。

寿松洞聖堂のソン・ニョンホン主任神父は「これまで大統領への辞任要求を躊躇していたが、出発点は国家機関を動員した違法で不正な選挙だった。今からでも糾弾のレベルを上げて、大統領に辞任を迫るつもりだ」と語った。

ソン神父はまた、「維新時代(朴正熙政権期:訳注)の1974年に、『正義具現司祭団』が創立されたが、当時の最初の時局宣言文を読んでみると、公安政治をするな!官制言論を作るな!経済民主化実現せよ!学生・知識人を拘束するな!など、現在の状況と全く同じだった。我々は、再び始めようという気持ちで行動する」と明らかにした。

カトリック教会では去る7月5日の釜山(プサン)教区を始まりとして、一般信者と修道者、15教区の司祭たちが一体となって国家情報院の大統領選挙違法介入に抗議し、真相究明と責任者の処罰などを要求する時局宣言と時局ミサを継続してきた。

8月26日には全羅北道全州市の中央聖堂で、カトリック教会全州教区の「正義平和委員会」が主催する時局ミサが開かれ、全州教区の神父200余人のうち、152人が時局宣言に署名した。
(訳JHK) http://hani.co.kr/arti/politics/politics_general/612090.html?_fr=mt1r

韓国人の集団的な認定欲求

2013年11月14日 | 南域内情勢

EU理事会庁舎で共同記者会見する朴槿恵大統領(2013.11.8)


朴槿恵大統領は11月2日から10日まで、イギリス、フランス、ベルギーなどヨーロッパ諸国を歴訪し、華々しい首脳外交を展開しました。出発直前の10月29日、大統領官邸で収録されたイギリスBBC放送とのインタビューも、同国訪問中の11月4日に放映されています。
 
 韓国内のメディアは、首脳外交での具体的な成果よりも、大統領が訪問先で駆使する外国語の実力や、服装などのファッションに焦点を当てて報道する傾向があります。
 こうした韓国社会への警鐘とも言える批判的なコラムを紹介します。出展は11月9日付『ハンギョレ新聞』、筆者は文化評論家のムンカン・ヒョンジュン氏です。
http://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/610410.html



大統領の外国語

 パク・クネ大統領がヨーロッパ歴訪中である。予想通り、TVニュースはこれを重点的に報道している。ある総合編成チャンネルのニュースでは、パク大統領の「外国語の実力」を主要テーマで取り扱いさえした。フランスに行ってはフランス語で、英国に行けば英語で、中国では中国語で演説する大統領の姿を念入りに編集していた。歴代大統領の外国語実力と比較した資料を、画面で詳細に紹介するほどだった。
 
 国家情報院の大統領選挙介入、全国教職員労組の不法化と全国公務員労組への押収捜査、統合進歩党に対する解散請求などで、国全体を公安政局に巻き込んでおきながら一言のコメントも出さない大統領だ。そうした大統領を批判したこともないメディアが、外国語で演説する彼女の姿には、感心至極というわけだ。

 外国の首脳が訪韓して韓国語で演説したことがあるのか知らないが、何よりも私たちが切実に聞きたいのは、英語やフランス語でなく、パク大統領の韓国語なのだ。

 大統領が外国を訪問して、その国の言葉で演説する行為がニュースの種になる。そのことに何の違和感もないのは、それが韓国の全般的な文化現象として定着しているからだ。 ドラマには定番のように、野望に満ちた財閥2世が米国やヨーロッパに飛行機で入国し英語で“ビジネス”する姿が描かれる。外国語の能力は、彼らが本当に有能な人材だということを証明する、最も具体的な尺度なのだ。

 韓国では、多くの大学が国文科や哲学科を廃止すると同時に、教授には全面的な英語での講義を要求している。すでにかなり以前から、アイドル・グループの名前は国籍不明の英語だらけである。日常対話、アパートの名前、商品名、屋号名、企業と機関名にも、英語がどんどん入ってくる。

 かけ離れたように見えるこれらの現象を一つに結びつけるのは、外国語に対する韓国人の支配的な心理状態だ。どのような形態であれ英語などの外国語を入れてこそ、“価値あるように見える”と考えるこの心理は、韓国人の集団的な認定欲求を反映している。先進国と呼ばれる国々から認められたいという飽くなき欲求は、彼らの言語を自己の言語より“素晴らしい”ものと見なす。私たちより“貧しい”国々とその国民に対する蔑視や差別、優越意識は、このような認定欲求が作り出す否定的な側面でしなかい。

 外国への認定欲求がもたらす一つの真実は、それが結局は“強者”に対する崇拝という点だ。言語であれ政治制度であれ、あるいは文化であれ、韓国よりも経済的に豊かな国々は大体、私たちの問題点を修正するための参照対象として機能する。反面、私たちよりも経済的に劣る国々は、好奇心を刺激する異色な文化の地域と言及されるだけで、真剣な関心の対象にはならない。

 “強者”に対する崇拝は国の内部でも作動する。江南(カンナム:漢江の以南で富裕層の居住区域‐訳注)と江北(カンブク)、ソウルと地方、標準語と方言、ソウル市の大学と地方大学、正規職と非正規職、嶺南(ヨンナム:慶尚道)と湖南(ホナム:全羅道)、正常人と非正常人など、馴染みのある様々な区別はすべて、力の強弱に関連している。とりわけ、人生自体が生存競争になった時代に勝利し成功した者、つまり強者に対する憧憬は、より一層強力になるのだろう。それは歴史も政治も、そして正義までも超越する。

 先日ソウルでは、チジェクやバディウなどが参加した「コミュニズム」の行事が開かれた。当代の著名な哲学者がソウルに集まって開かれた「コミュニズム」の饗宴は、私たちに新しい考察のテーマを投げかける鼓舞的な行事だった。

 今日、10万人の党員、6人の国会議員を持つ統合進歩党は、「共産主義」を追従する“従北勢力”との烙印を押され、強制解散の危機に直面している。江南(カンナム)の真っ只中で自由に哲学の饗宴をくり広げる「コミュニズム」と、一瞬にして反国家団体になる状況に置かれた「共産主義」の差異は何だろうか?

 多様な分析が可能だろうが、「コミュニズム」と「共産主義」という言語のイメージ、そして、強者の哲学と弱者の理念に対する私たちの二重的な態度を抜きにしては、考えられないだろう。

韓国憲法の「民主的基本秩序」を問う

2013年11月08日 | 三千里コラム

剃髪し国会前広場でハンスト中の統合進歩党議員たち。上部の後ろ姿は本会議場に入る法務長官(11月7日)


韓国憲法の「民主的基本秩序」を問う‐違憲政党は統合進歩党?セヌリ党?‐

 1948年12月10日、国連総会で採択された『世界人権宣言』は、その第一条で次のように謳っています。
 「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」
 人間の自由のうち最も重視されるのが、思想信条の自由を核心とする政治的な自由ではないでしょうか。そして、政治的自由を集約したものが、政党を結成し活動する自由です。

 11月5日、韓国政府は総理が主宰する国務会議で、統合進歩党に対する「違憲政党の解散審判請求案」を議決しました。同案はヨーロッパ諸国を歴訪中である朴槿恵大統領の裁可を受け、即日、憲法裁判所に提出されました。確かに韓国憲法第8条4項には、「政党の目的や活動が民主的基本秩序に違背した時、政府は憲法裁判所にその解散を提訴することができる。政党は、憲法裁判所の審判により解散される。」と明記されています。

 政府が特定政党の解散審判を憲法裁判所に請求したのは、韓国の憲政史上、初めてのことです。では、統合進歩党がなぜ、朴槿恵政権にとって“存続を許せない違憲政党”なのか、その主張をファン・ギョアン法務部長官の記者会見から引用してみます。

 「統合進歩党は綱領などその目的が、憲法の自由民主的な基本秩序に違反する北韓式の社会主義を追求しており、党の核心勢力であるRO(革命組織=イ・ソッキ議員ら“内乱陰謀事件”の中心団体:訳注)などの活動も、北韓の対南革命戦略に従ったものと分析される。統合進歩党は民主労働党の時期から、...北韓の指令を受け連携を続けていたことが確認された。」

 9月に起訴された“内乱陰謀事件”は、今月12日にようやく第一審の審理が始まります。まだ有罪が確定しておらず、内乱陰謀を立証するのは困難であろうとの見方が支配的です。その事件を一つの根拠にして合法政党の強制解散を目論むのは、どう見ても理性的とはいえません。統合進歩党の綱領に関する法務部の見解を、もう少し具体的に検討してみましょう。法務部(政府)の綱領解釈は以下のとおりです。

 ①「働く人々(労働者・農民)が主人となる自主的な民主政府を樹立し、民衆が政治・経済・文化など、社会生活全般において真の主人となる世の中...」は、憲法が規定する国民主権主義に違背する。
 ②「休戦協定を平和協定に代替し、これと連動して在韓米軍を撤収させ従属的な韓米同盟体制を解体」、「代表的な反民主悪法である国家保安法を廃止」、「6・15共同宣言と10・4宣言を履行して自主的平和統一を追求する」などの内容は、高麗連邦制を主張してきた朝鮮労働党綱領の核心部分と一致する。

 朝鮮語で「嘆かわしい、あきれ返って話にならない」ことを「ハンシム(寒心)ハダ」と表現しますが、政府の見解はまさに「ハンシムハダ」です。彼らは統合進歩党を罵倒することで、実は、自分たちがいかに民主主義の原理を知らず、その根幹を蹂躙してやまない勢力であるかを暴露しているのです。

 「労働者・農民・民衆」という文字さえ見ると興奮するのは、あたかもそれが「アカ」く彩色された危険な言葉だと思い込む反共的条件反射なのでしょうか。「働く人々が主人となる世の中」をタブー視するのも、「労働者・農民」が社会発展の主体となることを容認しない権威主義的な発想です。そこには「労働者・農民」を“御上の言いなりになる受動的で従順な存在”と見なす、権力者の意識が垣間見えます。

 また、南北が厳しく対峙する分断状況とはいえ、外国軍の駐屯を絶対条件とする立場は主権国家の政権担当者としていかがなものでしょうか。在韓米軍司令官(実質的には米大統領)に軍事統帥権(戦時の作戦・指揮権)を委ねている現状を、今後も続けることが憲法の民主秩序なのでしょうか。盧武鉉政権は軍事主権の返還を2012年と定めましたが、李明博政権がそれを2015年に延長し、朴槿恵政権はそれを更に延長するために米政府と交渉しています。

 国家保安法に至っては、言うべき言葉もありません。国連や米国務省ですら、廃止もしくは改正をくり返し勧告しています。現野党(民主党)の前身であるウリ党が国家保安法の廃止を掲げ、盧武鉉大統領が政府次元で推進した事案でもあります。

 統合進歩党の綱領である「自主的な民主政府」が憲法の民主的な基本秩序に違背するというなら、朴槿恵政権とセヌリ党が志向するのは「隷属的な独裁政府」のようです。

 今回の解散審判請求に危惧を覚えるのは、朴槿恵政権の目的が、単に統合進歩党への弾圧にとどまらないからです。11月6日、セヌリ党の最高幹部会議は「反国家団体・利敵団体の強制解散、解散政党所属議員の資格喪失、反国家事犯の比例代表繰り上げ当選禁止、などの諸法律も優先的に上程して処理する方針」だと確認しました。

 政権にとって気に入らない市民団体も“親北・従北”のレッテルを貼り、強制解散できる法律を制定しようというわけです。そうなると、現行の国家保安法が許容する範囲内でのみ、思想信条の自由、政治活動の自由が存在することになります。冒頭に掲げた世界人権宣言の核心を否定し、民主主義の根幹を蹂躙する社会に他なりません。

 昨年の大統領選挙で政府与党が行なった不法行為(国家情報機関の組織的な世論操作)は、選挙制度そのものを否定する暴挙でした。言うまでもなく、民主主義の基本は多党制です。国民の選択によって与党が野党に、野党が与党になるという政権交代が、いつでも実現することを前提にした政治体制が、民主主義です。

 しかし、昨年の大統領選挙は「従北勢力である野党への政権交代は必ず阻止する」という、政府与党の強固な意志が貫徹された選挙でした。国家情報院・警察・軍が総動員され、サイバー空間での大量の書き込みを通じて世論を操作し、国民の選択に重大な影響を及ぼしたのです。また、国民の反北意識を煽動するために、持ち出しが禁止されている首脳会談の対話録を不法に入手しただけでなく、その内容を歪曲し野党候補への誹謗中傷を展開したのも朴槿恵候補の陣営でした。

 一体、どの政党が憲法の「民主的な基本秩序」に違背しているのでしょうか。「働く人々が主人となる世の中」を掲げる統合進歩党なのか、あるいは、「不法選挙を敢行し独裁体制」を目ざすセヌリ党なのか...。朴槿恵政権下で保守化・右傾化が指摘される憲法裁判所ではなく、主権者である国民が賢明な審判を下すものと信じて止みません。 (JHK)