迷宮映画館

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隠し剣 鬼の爪

2004年09月13日 | か行 日本映画
幕末の時代、東北の片田舎の小藩、海坂藩でも、あわただしい動きが始まっていた。近代的な砲術を取り入れ、戦術の変化を図ろうとするが、武士にあるまじきと、そういった流れに反対する声もなくはなかった。

平侍、片桐宗蔵も否応なしにその流れに沿っていたが、母と、結婚を控えた妹と、それなりの幸せな生活を送っていた。しかし、宗蔵の家で、女中見習をしていたきえが、油問屋に嫁いでから、さびしい日々となっていた。

しかし、きえが嫁ぎ先で、無理から倒れ、寝込んでいると聞いた宗蔵は、いても立ってもいられなくなり、嫁ぎ先の油問屋に乗り込む。さまざまな憶測が飛び交う中、きえを引き取る。

数年前、宗蔵の親友、島田ともに見送った狭間弥市郎が帰ってくるという、それも謀反を起こした罪人として。藩を憂いて起こした謀反だったが、狭間は切腹も許されず、郷入りという極刑に処せられる。しかし、野山獄を抜け出した狭間。彼を討つために刺客に命ぜられたのは、誰あろう、宗蔵だった。

「たそがれ清兵衛」を撮って、世界をあっと言わせた山田洋次監督が、今度は山田組(といっていいのか)の永瀬を使って、同じような下級武士の世界を描いた。「たそがれ清兵衛」はいいも悪いも、山田洋次の意気込みが感じられた。初めて撮る時代劇、藤沢周平作品の初の映画化。どんなものが出来上がるのか、想像もつかず、あんまり期待もしていなかった。その薄めの期待感がよかったのか、心に沁みた。静と動のバランスがよかった。映画初出演の田中泯の存在感、やはり剣を取ったら無敵の真田広之など、わくわくしてみてしまった。

そして、そのあとを受けての第二弾。この人は、つくづくシリーズものが好きなのかなあと思ってしまった。うまい、よくできてる。妙に意気込みが感じられた前作と違って、力みが抜けたようなさらっとした味わいになっている。より、山田洋次っぽくなっている。この作りは、観客を好き・きらいの部類に二分しそうだが・・。その分、言いたいことをストレートにあらわしているような気がした。これは二番煎じなのではなく、『海坂藩物語Ⅱ』と考えるべきものなのかもしれない。

人間の本性がよくあらわされている。それはいつの時代でも同じだし、普遍のものであるが、愛に生きたときの人間は美しい。そのことがより直接的に伝わってくる。本来、地味な映画の分野だと思うが、いい意味で売れて、たくさんの人に見てもらえたら、本当にいいことだと思う。

『隠し剣 鬼の爪』

監督 山田洋次  原作 藤沢周平  
出演 永瀬正敏  松たか子  吉岡秀隆 小沢征悦  緒方拳  高島礼子 2004年 日本作品


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