ダイコンのきんぴら、枝豆とみょうがの寿司ごはん、じゃがいもサラダ、トウモロコシの天ぷら、豚の角煮、白玉・・・・・どれもおいしそう。。。
音がいい。しゃきしゃきとみょうがを切る音に、てんぷらのはじける音。
あれもこれも作りたい。たまに来る家族に、食べさせたい。多いかもしれないなんて構わない。せっせと作る母の姿が痛いほどにわかる。
今日は、15年前に死んだ長男の命日。出来の良かった長男になにかと比べられてきた弟と、明るい姉の家族が一年に一度、自然と集う日になっていた。
弟はいまだに権威を振りかざしてしまう父親とは、折り合いが悪い。自分は失業中の身、子連れの女性と結婚をして、なんとなく居づらいのだが、今日ばかりはそうも言ってはいられない。
せっせとご馳走を作って、何かと気を使う母だが、時折毒を吐いたり、とげが出てくる。でもそれくらい許してもらって、何が悪い。外に出て働いたことなどありません。夫の浮気もちゃーんと知ってますが、文句の一つも言いませんでした。大事な長男亡くしても、恨み言もいえない。でも、そうやって生きてきた。
旦那は昔の人。愛想もないし、「先生、先生」と言われて、尊敬されてきた。いまさら回りにあわせる気もないし、それをする術も知らない。だったら、無調法だと言われても、自分の城にこもっていたほうがいい。
そんな年寄りの夫婦の家に集った家族の一日を淡々とたどる。
もう、どれもこれもわかりすぎるくらいにわかる。私の両親は、家に二人で住んでいる。祖父が亡くなって14年ほど経つので、それからずっと二人だ。商売をやってた母は外交的で外面のよさはぴか一だ。たまに帰ると、ご馳走作ってあれやこれやと迎えてくれる。
一方、父は田舎の先生様で、権威が大事で生きてきた。コンビニの袋提げて歩くなんて、かっこ悪くてできない・・・。はずだったが、退職してから買い物袋提げて歩いているのを見て、人間変われば変わるもんだと、思った。
口下手で、無調法で、愛想もなく、いまさら愛想振りまくのは勿体無いかして、とっとと自分の部屋に引っ込んでしまう。私は昔から父親と居るのは苦手だったが、子供たちは(父にとっては孫たち)うるさく言わない父の周りで、ぐだぐだゲームをしたり、漫画本を読んでるのが、実家に行った時の風景だ。周りにたむろしている孫たちをうるさがりもせず、穏やかな顔をしている父を見ると、自分の知ってる父ではない・・・と思ってしまう。
わたわたと過ごして、さっさと引き上げてくるが、「お前らが来ると、調子が狂う」とか、「うるさくてかなわん」とか言いながら、帰り際に必ず「また来い」と一言言う。
さーっと潮が引いた後、二人がどんな風に過ごすのかはわからないが、静かに、静かに過ごすんだろうなあ。
ごく普通の、何のとりえもない、これと言った面白い逸話もなさそうだが、それでも十分に生きてきた70有余年。父と母の姿と重なって仕様がなかった。
◎◎◎◎
『歩いても 歩いても』
監督・原作・脚本 是枝裕和
出演 阿部寛 夏川結衣 YOU 高橋和也 田中祥平 野本ほたる 林凌雅 寺島進 加藤治子 樹木希林 原田芳雄 田中智也 田中啓介 工藤美友里 田村光弘 高橋義治 堀江ゆかり
音がいい。しゃきしゃきとみょうがを切る音に、てんぷらのはじける音。
あれもこれも作りたい。たまに来る家族に、食べさせたい。多いかもしれないなんて構わない。せっせと作る母の姿が痛いほどにわかる。
今日は、15年前に死んだ長男の命日。出来の良かった長男になにかと比べられてきた弟と、明るい姉の家族が一年に一度、自然と集う日になっていた。
弟はいまだに権威を振りかざしてしまう父親とは、折り合いが悪い。自分は失業中の身、子連れの女性と結婚をして、なんとなく居づらいのだが、今日ばかりはそうも言ってはいられない。
せっせとご馳走を作って、何かと気を使う母だが、時折毒を吐いたり、とげが出てくる。でもそれくらい許してもらって、何が悪い。外に出て働いたことなどありません。夫の浮気もちゃーんと知ってますが、文句の一つも言いませんでした。大事な長男亡くしても、恨み言もいえない。でも、そうやって生きてきた。
旦那は昔の人。愛想もないし、「先生、先生」と言われて、尊敬されてきた。いまさら回りにあわせる気もないし、それをする術も知らない。だったら、無調法だと言われても、自分の城にこもっていたほうがいい。
そんな年寄りの夫婦の家に集った家族の一日を淡々とたどる。
もう、どれもこれもわかりすぎるくらいにわかる。私の両親は、家に二人で住んでいる。祖父が亡くなって14年ほど経つので、それからずっと二人だ。商売をやってた母は外交的で外面のよさはぴか一だ。たまに帰ると、ご馳走作ってあれやこれやと迎えてくれる。
一方、父は田舎の先生様で、権威が大事で生きてきた。コンビニの袋提げて歩くなんて、かっこ悪くてできない・・・。はずだったが、退職してから買い物袋提げて歩いているのを見て、人間変われば変わるもんだと、思った。
口下手で、無調法で、愛想もなく、いまさら愛想振りまくのは勿体無いかして、とっとと自分の部屋に引っ込んでしまう。私は昔から父親と居るのは苦手だったが、子供たちは(父にとっては孫たち)うるさく言わない父の周りで、ぐだぐだゲームをしたり、漫画本を読んでるのが、実家に行った時の風景だ。周りにたむろしている孫たちをうるさがりもせず、穏やかな顔をしている父を見ると、自分の知ってる父ではない・・・と思ってしまう。
わたわたと過ごして、さっさと引き上げてくるが、「お前らが来ると、調子が狂う」とか、「うるさくてかなわん」とか言いながら、帰り際に必ず「また来い」と一言言う。
さーっと潮が引いた後、二人がどんな風に過ごすのかはわからないが、静かに、静かに過ごすんだろうなあ。
ごく普通の、何のとりえもない、これと言った面白い逸話もなさそうだが、それでも十分に生きてきた70有余年。父と母の姿と重なって仕様がなかった。
◎◎◎◎
『歩いても 歩いても』
監督・原作・脚本 是枝裕和
出演 阿部寛 夏川結衣 YOU 高橋和也 田中祥平 野本ほたる 林凌雅 寺島進 加藤治子 樹木希林 原田芳雄 田中智也 田中啓介 工藤美友里 田村光弘 高橋義治 堀江ゆかり
僕も 亡くなった母のことを思い出してしまいました。
家族が帰ってくると 余るほどいっぱいご馳走をつくって 笑顔で迎えてくれました。
父親は どこもそうですかねぇ・・・
でも 本当は 仲間に入りたいんですよ。
飲み会で、「歩いても~♪」と歌ってしまいました。
よくできてたと思います。
監督の意図するところを樹木希林が、見事に表わしていたと思います。
やっぱ父親はそういうもんですかね。
今晩は
樹木希林のお母ちゃん、ほんまにいいですよね。
漂々とした感じで、ぐさりと鋭い言葉を吐く。
嫌みなんだけど、嫌みじゃない(笑)
こんなお母ちゃんいますよね。きっと彼女も
普段こんな感じなのかな?なんて思ったり。
娘役のYOUとの掛け合いも良かった!
そしてこの作品を作った是枝監督も素晴らしい!
何気ない日常の風景を撮るのは至難のわざかも
しれませんね。
いや、ばちなんか怖くもない。閻魔さまの前でも、ちょっといやみで、さらっと毒を吐きそうですよね。
後ろの方で見てたおばちゃんたちに、やけに受けてましたよ。
監督の独特の作りは、いつも目を引きますが、これは秀逸でした。
sakuraiさんの文章を読んでいたらまた角煮が食べたくなりました。
週末は実家に帰ろうと思います^^;
枝豆とみょうがごはん。夏の終りの味がしました。
今度は角煮を作ろうかな。
親の顔が見たくなる映画でしたね。
やっぱ頭に思い浮かぶのは、自分の両親でしょうかね。母親なんてずるいもんですよ。
いまどきの友達親子のような関係もいいのかもしれませんが、怖くて近寄れない父親・・というのも懐かしい気がします。
私もsakuraiさんのように、両親に重ねてる部分がありました。
あのラストのバス停に見送りに来てくれてる図。
たまらなくて涙が出そうでした。
あ~・・こんな風にお見送りにきてくれてたよなぁ~・・とか、もうそりゃ様々思い出しました。
一つ一つのエピソードというか会話に、それぞれ自分の思いを言いたくなるような気持ちになりましたし
それだけ”あるある””わかる”というところが
あったんだと思います。
sakuraiさんが書いてらっしゃるように、どれもどこも
わかりすぎるくらいにわかる、という映画でした。
嫁の立場になったり、あの次男の立場になったり
娘の立場になったり。
人間の優しさと温かさや毒の部分もしっかり
見せてもらったし、あ~~もうたまらん!ってなもんでした。
会話で状況を説明してたわけじゃないのに
すっかり横山家のことがわかる・・
素晴しい脚本と演出だったと思います。
良い映画でした~。
まるでうちの両親を見ているようでした。
でも、あの年代の人たちは、大概がみんなあんなもんですよね。
なんであんなに、気持ちの表わし方がうまいんだと、癪に障りながら見てましたよ、もう。
あったかい部分もありましたが、今思い返すと、毒の部分ばかり思い出しちゃいます。
やっぱそっちの方がインパクトありますよ。
是枝監督の作品の中では傑作だと思います。