迷宮映画館

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ジョルダーニ家の人々

2012年10月03日 | さ行 外国映画
イタリア発、超長映画・・・というよりも、いくつかの話を小出しにせず、一気に見せる!というのが、かの国らしい。
輝ける青春」を見たのは、いつだったかと・・とひも解いてみたら、2005年だった。なんともぜいたくな時間。ほぼ一日、映画に費やすと言う至福の時間。

こんな時間をまた過ごせるとは思ってもみなかった。今回は、若干長めの399分。4部作の構成で、一気に4本映画を見たと思えば、それほどきついことでもない。何より、どっぷり浸れるのが最高だ。

ローマに住むジョルダーニ家。立派な家に住み、家族もみなそれなりに幸せそう。いろいろと問題は抱えつつも、いい家族像をつくりだしていた。土木関係の仕事についている父と、元医者の母。子育てのために医者はやめ、4人の子供を育てた。

明るい長男のアンドレアは外務省に勤務。世界中を飛び回っている。頼りになる長女のノラはもうすぐ出産を控えている心理学者。末っ子のロレンツォはいかにも高校生らしく、奔放に楽しくしている。次男の二ーノだけは、ちょっと気難しい。大学で建築の勉強をしているが、将来が見えてこない。さらに、父親の不倫を知り、もどかしい気持ちをどうしたらいいかわからない。

久しぶりに帰ってきたアンドレアを迎え、家族が集った翌朝、ロレンツォが車の事故で死んでしまったことを知らされる。皆に愛されていた末っ子を失い、家族の間がぎくしゃくしてくる。いや、もともとあったかもしれない不協和音。それを押しとどめて、家族の仮面をかぶっていた彼らのさまざまな思いが発露してしまう。

母は息子の死をどうしても受け入れらない。ロレンツォは生きていると思いこむ。精神のバランスがだんだんと崩れて行く。母を施設に入れ、兄はまた仕事で家を出る。父は、イラクに水道の敷設の仕事へ。父の不倫が許せないニーノも家を出る。あのにぎやかだった家に今は誰もいない。

家を出た兄弟たちは、それぞれ様々な出来事に出会う。兄は実は同性愛者。ノラのカウンセラー室で出会ったフランス人のミシェルに一目ぼれ。二人は暮らすようになる。そこに降ってわいたミシェルの娘の登場。5歳くらいの可愛い、本当に可愛い娘。ジャンキーの母は、自分は育てられないとミシェルにおいて行く。最初は戸惑うアンドレアだったが、二人でこの子を育てていくことを自然に受け入れる。

ノラの患者の大尉。戦争で頭に傷を負い、記憶を失っている。婚約者の存在すらも覚えていない。ノラに頼り切ってる患者に寄り添っていくうちに、彼女の気持ちが変化して行く。この現状に甘んじてていいのか。自分は自分に素直に生きてるだろうか・・・と。

そしてニーノ。家を出て、目的があやふやになり、あたら才能を遊ばせていた。そんなときに出会った難民のシャーバ。イラクから命からがらイタリアに逃げてきた。兄のアンドレアは取り締まる側。しかし、シャーバの必死な様子を見て、ニーノはかくまうことにした。彼女の目的はヨーロッパに出てきた娘に会うこと。命をかけて娘に会いにここまで来た。

子供のもとから逃げてしまった自分の母と、命をかけて娘に会いに来た母。

無事、卒業もし、建築の仕事をするのかと思いきや、ニーノ現場に出る。砂利を担ぎ、セメントを混ぜ、左官をする。まるで自分をいじめているかのよう。そして彼を虜にしたのが、ニーノの指導教官の妻。父の不倫をとがめながら、自分の思いを押しとどめることができない。

アンドレアとミシェルはどうなるのか?ノラの選択は?ニーノは道を見つけることができるのか?苦悩する兄弟たち。一旦家を出た彼らは、問題を抱え、もがく。そして、またいつの間にかあの家に戻ってくる。今、ここにいるのは血のつながった人たちだけではない。シャーバにその娘、ミシェルの娘がそこに加わる。

ここに戻ってこなければならないのは母だ。いまだ殻に閉じこもったままの母。母には、ロレンツォからメールが届いていた。世界中から。ロレンツォの死を認めず、自分の世界の中で生きている母に、真実を分かってもらわなければならない。それは厳しく、哀しい真実だが、それを乗り越えねばならないのだ。一体、誰がメールを出しているのか???果たして、母は真実を受け入れることができるのか。。。。

と言うようなことで、都合6時間と40分、全くだれることなく、つぎつぎと起こることに身を乗り出しながら見入ってしまった。劇的なことがあれやこれやと起こるので、連続ドラマを一気に見たような感覚だが、一つの家のことながら、そこにとにかくいろいろなことが押し込まれていて、いい広がり具合と、ちょうどいい納め方になっている。ここは脚本のうまさ。

イラクの紛争、難民に、ロシアンマフィアと血なまぐさいことも起きれば、不倫に、同性愛に、エイズに、夫婦間の齟齬というとっても個人的なことが同時進行に起こっていく。それらのバランスがとってもいい。それらが起きているのが、ローマという古い町並みで、古臭い半ば朽ち果ててような遺跡が映されてかと思うと、ものすごい近代的なビルに、さらっと見える凱旋門。きっとローマのどこからでも見えるんだろうなのサン・ピエトロ聖堂の屋根。とにかく贅沢だ。

6時間と39分を映画につぎ込めるぜいたく感を味わうのがこの映画の醍醐味かな。こんなのがしょっちゅうあっては、たまったもんではないが、とにかく幸せな気分になれた時間。朝の10時から映画見始めて、映画館出た時は6時と、暗くなっていた。高校生息子に夕飯の支度を頼んで、母ちゃんは幸せでした。

映画的には、「輝ける青春」の方がぎゅうっと詰め込まれてて、深かったし、重いし、イタリアのいろんなところに行って、その違いもまた思い白かった。いい男度もあっちの方が上。こっちは見やすく、身近で、共感しやすい感じ。見れてよかった。

◎◎◎◎●

「ジョルダーニ家の人々」

監督 ジャンルカ・マリア・タバレッリ
出演 クラウディオ・サンタマリア パオラ・コルッテレージ ロレンツォ・バルドゥッチ エンニオ・ファンタスティキーニ ダニエラ・ジョルダーノ


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