迷宮映画館

開店休業状態になっており、誠にすいません。

木洩れ日の家で

2011年08月10日 | か行 外国映画
映画館は夏休みモードで、こっちはすっかり引き込もりモード。久しぶりの単館系の上映とあって、いそいそと映画館に行ったのだが、91歳のおばあちゃんの主演映画で、それもポーランド作品なんてマイナーなものだから、閑散としたもんだろうなあ~などと思って行ったら、これがあけてびっくり、大違い。

来るわ、来るわ、それも失礼ながら年配の方々がぞろぞろと!え、「今頃、デンデラ?」とか思ったのだが、いやーー、お見それしました。皆さま本作に!4番館が7割くらい埋まってたが、多分アタシは若い方から3番目くらいかなあ。。。と勝手に決めた。

さて、本編。
モノクロ映像で、結構なお年を召した感じのおばあちゃんが、ほぼ出ずっぱり。電話が鳴ると二階から走らせたり、重いピアノをうんうんと押したり、ちょっとはらはらと見ていたのだが、なんと当時御年、91歳!今は95歳になったが、今も現役バリバリで舞台に立っているのだとか!それ見ただけでありがたくなる感じであった。

森光子さんも、でんぐり返し禁止。。。なんてしないで、自らガンガンやっててもよかったのではなどと勝手に思ってしまった。

このおばあちゃん、郊外の緑に囲まれたおんぼろ屋敷に住んでいるが、周りにやってくるのは、土地を狙っていたり、追い出そうとする輩ばかり。この年まで、平和に安寧に暮らしてきたわけではない。紆余曲折、共産主義時代、成長した子供、古ぼけていく家。。。さほど長くはないであろう余生をどうやって生きて行こうか?模索していた。



やることと言えば、周りを双眼鏡で眺め、隣の様子や、こっちの隣の子供たちの音楽クラブのヘタな演奏に辟易していた。静かにしたいのに・・・。犬も自分の周りを離れない。誰も自分を静かにしてくれない・・と悪態をつきながら、自分を頼りにし、犬も彼女を守っているという矜持も見える。

徐々に衰えを感じ、思い通りにならない自分を恨み、生をあきらめようともするが、簡単にあきらめた自分を笑い飛ばしもする。そして彼女が下した大きな決断は意外なものだった・・・・。

と言うことで、予告の雰囲気、91歳のおばあちゃんの主人公、モノクロ映像・・・なんてアイテムから、勝手に寂しく、わびしく、ん静かに押し寄せる感動・・・などと勝手に思っていたら、これが大間違い。何とまあ、笑える笑える。初っぱなの医者を訪ねた場面から、やってくる不動産屋を追い返したり、近所の子供の罵声に応援等々。苦笑いの連続。

こうやって強く、誇り高く生きてきたんだ!この自分を誰がどうかしようと思っても無駄!アタシから見たら、みんな子供よ!とさえ見える気持ちのいい啖呵だったりと、なんともスカッとする映画だった。

古い家の歪んだガラス越しで撮った映像が効果的に使われる。階段にこっち側から見た映像、意外な方向から切り取ったショット、鏡に映った絵は、今のままだったり、思い出だったり。そんな映像が効果的に使われていたのが印象的。ちょっと多用な気もしたが、監督の思い入れも感じた次第。自分にとっては、意外性に満ちた作品だった。

全編モノクロだったが、ポスターはカラー。




◎◎◎○

「木洩れ日の家で」

監督 ドロタ・ケンジェジャフスカ
出演 ダヌタ・シャフラルスカ


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (KLY)
2011-08-10 22:34:52
これ東京では岩波ホールでやってたんですね。
凄まじい平均年齢の高さでした…。でも連日満員だったそうで、延長されたらしいです。
私はこの手のモノクロ映画の光の加減がとても好きでして、カラー以上にキラキラ感じられるのがウットリしてしまいました。
返信する
>KLYさま (sakurai)
2011-08-11 19:53:26
そういや、岩波ホールが連日満員、行列になった・・などと言う話を思い出しました。
やはり、今の日本の映画を支えているのは、高齢者様様ですかね。
モノクロの映画って、ただモノクロにしただけの、あまり意味を感じられないものもありますが、これはうまく陰影を表してましたね。お見事でした。
返信する
こんにちは。 (kimion20002000)
2012-01-10 02:14:22
>森光子さんも、でんぐり返し禁止。。。なん てしないで、自らガンガンやっててもよかっ たのではなどと勝手に思ってしまった。

本当にねぇ。本人はまだスクワットしているみたいですが、周囲が止めているのかな。

でもこの老女の意志力みたいなものは、ちょっと日本人には遠い世界かもしれませんね。

返信する
>kimion20002000さま (sakurai)
2012-01-11 14:31:48
ははは、だいぶぼけも来ているようだ・・などの噂も聞こえてきますが、本人の好きにやらせてもいいじゃないかと思います。
明治、大正生まれのおばあちゃんに似合うのは、忍の字ですからね。
そうじゃないおばあちゃんは取り上げられますが、一番ねっこの部分で日本を支えていたのは、映画にはなりそうもない、忍のおばあちゃんたちのような気もします。
返信する

コメントを投稿