迷宮映画館

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わが教え子、ヒトラー

2008年12月18日 | わ行 映画
1944年末、あと少しで新年になる。
ナチス・ドイツは、重大な問題を抱えていた。新年のあいさつで、総統の健在ぶりを示し、すでにぼろぼろの国家の状態を隠し、なんとか乗り切らないといけない。

しかし、当のヒトラーは、完全なる神経衰弱状態。側近たちも彼を裸の王様状態にして、とにかくこの急場をしのがないといけない。

とりあえず、とりあえず、新年の挨拶をこなすために、指南役が選ばれた。それはユダヤ人俳優。何もよりによって、ユダヤ人に!!いや、ユダヤ人と面と向かうことで、総統の憎悪がよみがえるはずだ。

収容所から呼び出されたのは、アドルフ・グリュンバウム教授。総統に自信と威厳を取り戻すのが役目。狼の巣に、二人のアドルフが会した・・・。

やはりこの映画の見どころは、これが遺作となったウルリッヒ・ミューエの演技が秀逸だ。うまい。うますぎる。不安に満ちて、収容所から出てくるところから、総統にあっての演技指導というか、いつの間にかカウンセラーみたいになって、戸惑う様子が本当にうまい。

ヒトラーがとんでもない人物で、彼が諸悪の根源であることには間違いがないことだが、彼をそう仕立て上げて、いつの間にか孤高の存在にしてしまったのは、側近たちであったことも、大事な事実だ。

宣伝相などという、いかにもの役目は、それを如実に物語っている。このゲッペルスがまたそっくり。彼が「ハイル・ヒットラー!!」と手をあげて行う敬礼を、面倒くさがっている様子が笑えてしようがない。

連れてこられた教授のところに、生ハムの挟まったパンを出すのも苦笑しかない。

そう、どれもこれも苦笑しかない様子が、苦笑をまたまた誘うのだ。

どこまでがホントで、どこまでが虚構なのか、見ててそんなことはどうでもよくなってくるのだが、なんだかヒトラーが哀れな、弱い、好々爺に見えてくるのがまずい。

一つの皮肉めいた物語として見るか、歴史上の人物を借りた妙な友情物語として見るか、なんだか居心地のかんばしくない空気を感じてしまった。

◎◎◎●

『我が教え子ヒトラー』

監督・脚本 ダニー・レヴィ
出演 ウルリッヒ・ミューエ ヘルゲ・シュナイダー ジルヴェスター・グロート アドリアーナ・アルタラス シュテファン・クルト ウルリッヒ・ネーテン ランベルト・ハーメル ウド・クロッシュヴァルト


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2 コメント

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ヒトラー像? (mezzotint)
2008-12-22 01:28:24
sakuraiさん
今晩は☆★
確かにヒトラーのイメージが一転して
いいおじさんでしたね。悪の根源のはずなのに、何故かこのような哀れな独裁者になってしまいました。監督さんはユダヤの方なので、本音言えば、ナチスドイツへの思いは悪いのでしょうね。計算してのブラックユーモアだけではないのでは?なんて思いましたが。感情移入も強いような・・・?
ウルリッヒ・ミューエ、本当に残念ですね。あの姿を見ると、亡くなられたとは思えません。
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>mezzotintさま (sakurai)
2008-12-23 08:46:22
バカにするんなら、もっと徹底的にバカにした方がすっきりするような。
なんか半端な感じがしましたね。
監督自身も、ヒトラーをどう描いたらいいのか、迷いがあるような・・・。
ミューエ!!本当にうまい俳優さんだったと思います。
惜しいです。
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