迷宮映画館

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罪と罰

2008年12月20日 | ロシア映画シリーズ
「カラマーゾフの兄弟」を上映して、映画館側もびっくりみたいな人が入ったのだが、それに続く第二弾がこれ!「罪と罰」
ドストエフスキーの有名な小説だが、私は例によって読んでない。
ロシア文学というのは、どうにも敷居が高くて、それと名前がとっつきにくくて、なかなか入りこめないままに来ているが、2時間弱で読んでしまおうと、もくろんでいた方も多いのでは。

ということで、「罪と罰」の始まり、始まり~。

貧乏学生のラスコーリニコフ。頭がよく、特殊な持論があり、世の英雄はある程度の人々の犠牲に上に成り立っている。殺人もやむを得ないかもしれない。もしかしたら、英雄たちの命は、それらの人を踏み台にして成り立っているのかもしれない。

金に困っている自分すらをも許せない風に見えるが、借金がかさみ、金貸しばあさんをなたで殺してしまう。この時の思いつめた風情と、床に崩れ落ちたばあさんの流れ出る血が印象的だ。

そこに帰ってきた妹も殺してしまい、二人の人間の命を奪う。しかし、それも自分に許された行動のように思うラスコーリニコフ。やましい気持などない。シラミみたいな人間の命を自分が奪って、何が悪い。罪の意識など感じるはずもない・・・。

と思うはずの自分だったが、現実は違った。常に何かに脅え、追い詰められている。気を失ってしまう。その顔は、まるで何かに取りつかれたように焦燥する。

ちょうど妹に縁談の話があって、母と妹が彼のところにやってくる。妹の相手は、鼻もちならない金持ちだが、貧乏のせいで、断ることもできない。プライドで飯は食えない。

酒屋で知り合ったマルメラードフという役人。飲んだくれのどうしようもな男で、娘を身を売って働かせ、なんつう父親だと!と思うのだが、自分の情けなさを恥じて、また飲み、飲んではまた自分を恥じる。そのマルメラードフが、馬車に轢かれて瀕死の状態になる。

ラスコーリニコフは、男を家まで運び、臨終を看取る。身を売っているという娘のソーニャの何と清らかで、美しく、汚れのない心を持っているのだろうか。娘の精神の気高さを見るにつけ、ラスコーリニコフの気持ちは揺れていく。

身は汚そうとも、心に一片の曇りも持たないソーニャ。なのに、自分の何とあさましいことか。自分のしたことを無理やり正当化しようと、自分を追い詰め、それでもなんとかあがこうとしている。そして、自分のやったことは、何の罪もない人間がかぶろうとしている。

ラスコーリニコフは決意する。自分の罪を白日のもとにさらす。そして、その罪に対する罰を受けねばならない・・・。

という古典を、見るからに神経症的な感じのラスコーリニコフが出来上がった。
映画は白黒で、70年の作品とは思えないくらいに古ぼけているが、その古ぼけた感じがまた映画にらしさを生み出している。
そして、何といってもこの映画の白眉はラスコーリニコフだ。

自分を天才と自覚している。しかし、金がないという決定的なことが大きく、大きくのしかかっている。極端な経済格差は、ロシアの革命前夜を表してもいるのだろうか。

大きな矛盾を自己の中に抱えて、神経衰弱させ、追い詰められていく様子が見事だった。

「カラマーゾフ・・」のような大仰な演技かな・・と危惧していたのだが、抑制の利いた、非常にとっつきやすい「罪と罰」だった。

本は読んだことはないが、私のコレクションに、昭和43年発行、COMのおまけについてきた手塚治虫の「罪と罰」がある。全集にはあるが、この古ぼけた感じ!!開くと、妙な匂いもしそうだが、この汚さと、古さが、一層ぴったりくる。



内容は、稚拙だとあまり評価は高くはないが、なんせ書いたのが1953年。漫画家としてデビューしてから、また間もないころだ。絵は初期のころのまんまるっちい絵柄だが、キャラクターの描き方はさすが。おなじみの自前のキャラクターもふんだんに登場しながら、見事に色分けをしている。

目を見張るのが、老婆の殺人を表した4ページ。縦にぶっちぎって、同じ場面を続かせ、そこで登場人物をいきいきと動かす。あの当時、こんなコマ割りを描いていた彼は、まさしく天才だ。そして、その才能を見事に漫画という、自分に一番あった世界で生かしてくれた。

ラスコーリニコフも、自分を生かす道を見つけられれば良かったのに。

ウディ・アレンの「マッチ・ポイント」の場面を思い出しながら、見させてもらった。

『罪と罰』

原作 フョードル・ドストエフスキー
脚本・監督 レフ・クリジャーノフ
出演 ゲオルギー・タラトルキン インノケンティ・スモクトゥノフスキー タチアナ・べードワ ヴィクトリア・フョードロワ エフィーム・コペリャン

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