三國連太郎さんが亡くなられたとき、彼の代表作として、紹介されていた作品。一度、見たい!と思っていたところ、今年の午前十時のラインナップに!3時間越えの作品だが、ここは見ないと禍根を残すと思って、参戦。結果、いやーー、見てよかった。これはすさまじい!というより、われらが郷土のヒーロー(?)!!!伴淳こと、伴淳三郎さんの、素晴らしい佇まいに感動!ただのコメディアンじゃない!すごい役者だなあ~と感じ入った次第。在りし日の、伴淳のかっこいいお姿を見れただけでも、甲斐があったというもの。
いや、いや、それだけじゃない。戦後の日本のとことんな貧しさに、身売り、混乱。三國のにじみ出る汚さが、リアルすぎて、怖くなってくるほど。この映画が作られたのは1964年。戦争が終わってまだ20年。まだ20年というのがまざまざと伝わってくる。一方で、それから10年の日本。赤線が廃止され、着々と前に進んでいた日本の様子もありありとわかる。
さて、映画。舞台は昭和22年の北海道。岩内で質屋の一家が惨殺され、燃やされる。台風の混乱の中の出来事で、嵐の津軽海峡では連絡船が嵐にのまれる。犯人はその混乱に乗じて、本土に渡ろうとしていた。混乱の中、指揮を執っていたのが刑事の弓坂(伴淳)。
多くの死体が沿岸に流れ着いたが、その中に身元不明の死体が二つ上がる。その二人は網走を出所した後、岩内での強盗殺人の犯人ではないかと思われた。しかし、犯人は3人組の模様。これは仲間割れか?生き残った男を探して躍起になる弓坂。まるで憑りつかれたようになる。
生き残った大男は犬飼(三國)。逃げる途中、身を隠した宿で体を売って稼いでいた女と出会い、助けられる。女は杉戸八重(左幸子)と言った。大金を持っていた犬飼は、奪った金の一部を八重に渡す。たった一晩、得体のしれない男だったが、八重は犬飼に対して、大きな恩義を抱える。犬飼の足の爪を後生大事に持って、東京に行くことにした。東京で働けば、きっと家の借金も返せる。
飲み屋で働く八重は、今度こそ堅気になろうとしていたが、混乱の東京で女一人が生きていくのは至難の業。結局は苦界に身を沈めていった。でも、当時の東京で、それはある意味立派な女性の仕事だったかもしれない。
それから十年、事件に取りつかれた弓坂は、刑事をやめ、かつかつに生活で家族にあきれられていた。そんな時に遠く離れた舞鶴で、あの八重の心中死体が発見された。もちろん、犬飼の足跡を追った弓坂は、八重が何か知ってるはずと、あとを追っていたが、東京に行った後、その行方を失っていた。この伴淳の朴訥さと、真摯なさと、父親としての情けなさと、でも事件に対する真っ向な姿勢がほんとにいい。まじかっこいいと思った。いつもの山形弁でしゃべってるのが、やけに耳に心地いい。老練のたたずまいだ。
亡くなった八重が後生大事持っていたのが、舞鶴の名士の樽見京一郎という男の新聞記事だった。もしや、あの大男が樽見ではないか。どう考えても八重が、樽見の書生と心中などする理由が見つからない。八重と樽見を結びつけるには弓坂に来てもらうしかない。
弓坂は忘れてなどいなかった。今も、犬飼が燃やしたであろう船の灰を取っておいていた。事件を忘れない。執念の灰だ。弓坂は舞鶴に行くことにする。八重の荷物の中にあった大きな爪。後生大事にしまってあった爪。それこそ樽見の、いや犬飼の爪だ。彼女の心の支えだったことがわかる。樽見に迫る刑事たち。しらをきり通そうとする樽見に、弓坂が迫る。そして・・・・・。
ということで、樽見が犬飼であったことがわかって、犯人と断定される。そして、北海道に護送されていく途中で、????なことが起こる。今見ると、ずいぶんとざっくりした捜査で、アラばっかり。そんなんで起訴は強引だなあ~と思わせた。メンツも大事だし、犯人なんだからいいはいいのだけど、冤罪があったのもしかるべきかなあ~などとも思ってしまった。その辺は副産物に感じたこと。
八重という娼婦の役をした左幸子の薄幸ぶりが痛い。純粋そのもので、やさしく、大きな望みを持って樽見に近づいてきたわけでもない。恋心は抱いていただろうけど、ただ感謝の思いを強く持っていただけ。しかし、樽見には築いてしまった今の地位がある。罪の上塗りをしていってしまう人間のサガ。結局樽見は、最後にとんでもない方法を選ぶのだが、とことん人間の弱さを感じさせた。
若き舞鶴の刑事に、ぶいぶい言わせる前(?)の健さんが演じてるが、青い!青すぎ!健さんと三國と伴淳が並んでるって、本当にすごい絵!そして、伴淳がいちばんかっこええええ~んです。伴淳と言えば、お見事な読経なんですが、それもさらっとご披露。拝見することができて、ほんとによかった。
◎◎◎◎●
「飢餓海峡」
監督 内田吐夢
脚色 鈴木尚之
原作 水上勉
出演 三國連太郎 風見章子 左幸子 加藤嘉 伴淳三郎 進藤幸 加藤忠 岡野耕作 菅原正 志摩栄 外山高士 河合絃司 最上逸馬 安藤三男 曽根秀介 牧野内とみ子 北山達也 山本麟一 大久保正信 矢野昭 西村淳二 遠藤慎子 田村錦人 沢彰謙 安城百合子 荒木玉枝 河村久子 亀石征一郎 須賀良 八名信夫 久保一 北峰有二 三井弘次 沢村貞子 高須準之助 藤田進 鈴木昭夫 関山耕司 斎藤三男 高倉健
いや、いや、それだけじゃない。戦後の日本のとことんな貧しさに、身売り、混乱。三國のにじみ出る汚さが、リアルすぎて、怖くなってくるほど。この映画が作られたのは1964年。戦争が終わってまだ20年。まだ20年というのがまざまざと伝わってくる。一方で、それから10年の日本。赤線が廃止され、着々と前に進んでいた日本の様子もありありとわかる。
さて、映画。舞台は昭和22年の北海道。岩内で質屋の一家が惨殺され、燃やされる。台風の混乱の中の出来事で、嵐の津軽海峡では連絡船が嵐にのまれる。犯人はその混乱に乗じて、本土に渡ろうとしていた。混乱の中、指揮を執っていたのが刑事の弓坂(伴淳)。
多くの死体が沿岸に流れ着いたが、その中に身元不明の死体が二つ上がる。その二人は網走を出所した後、岩内での強盗殺人の犯人ではないかと思われた。しかし、犯人は3人組の模様。これは仲間割れか?生き残った男を探して躍起になる弓坂。まるで憑りつかれたようになる。
生き残った大男は犬飼(三國)。逃げる途中、身を隠した宿で体を売って稼いでいた女と出会い、助けられる。女は杉戸八重(左幸子)と言った。大金を持っていた犬飼は、奪った金の一部を八重に渡す。たった一晩、得体のしれない男だったが、八重は犬飼に対して、大きな恩義を抱える。犬飼の足の爪を後生大事に持って、東京に行くことにした。東京で働けば、きっと家の借金も返せる。
飲み屋で働く八重は、今度こそ堅気になろうとしていたが、混乱の東京で女一人が生きていくのは至難の業。結局は苦界に身を沈めていった。でも、当時の東京で、それはある意味立派な女性の仕事だったかもしれない。
それから十年、事件に取りつかれた弓坂は、刑事をやめ、かつかつに生活で家族にあきれられていた。そんな時に遠く離れた舞鶴で、あの八重の心中死体が発見された。もちろん、犬飼の足跡を追った弓坂は、八重が何か知ってるはずと、あとを追っていたが、東京に行った後、その行方を失っていた。この伴淳の朴訥さと、真摯なさと、父親としての情けなさと、でも事件に対する真っ向な姿勢がほんとにいい。まじかっこいいと思った。いつもの山形弁でしゃべってるのが、やけに耳に心地いい。老練のたたずまいだ。
亡くなった八重が後生大事持っていたのが、舞鶴の名士の樽見京一郎という男の新聞記事だった。もしや、あの大男が樽見ではないか。どう考えても八重が、樽見の書生と心中などする理由が見つからない。八重と樽見を結びつけるには弓坂に来てもらうしかない。
弓坂は忘れてなどいなかった。今も、犬飼が燃やしたであろう船の灰を取っておいていた。事件を忘れない。執念の灰だ。弓坂は舞鶴に行くことにする。八重の荷物の中にあった大きな爪。後生大事にしまってあった爪。それこそ樽見の、いや犬飼の爪だ。彼女の心の支えだったことがわかる。樽見に迫る刑事たち。しらをきり通そうとする樽見に、弓坂が迫る。そして・・・・・。
ということで、樽見が犬飼であったことがわかって、犯人と断定される。そして、北海道に護送されていく途中で、????なことが起こる。今見ると、ずいぶんとざっくりした捜査で、アラばっかり。そんなんで起訴は強引だなあ~と思わせた。メンツも大事だし、犯人なんだからいいはいいのだけど、冤罪があったのもしかるべきかなあ~などとも思ってしまった。その辺は副産物に感じたこと。
八重という娼婦の役をした左幸子の薄幸ぶりが痛い。純粋そのもので、やさしく、大きな望みを持って樽見に近づいてきたわけでもない。恋心は抱いていただろうけど、ただ感謝の思いを強く持っていただけ。しかし、樽見には築いてしまった今の地位がある。罪の上塗りをしていってしまう人間のサガ。結局樽見は、最後にとんでもない方法を選ぶのだが、とことん人間の弱さを感じさせた。
若き舞鶴の刑事に、ぶいぶい言わせる前(?)の健さんが演じてるが、青い!青すぎ!健さんと三國と伴淳が並んでるって、本当にすごい絵!そして、伴淳がいちばんかっこええええ~んです。伴淳と言えば、お見事な読経なんですが、それもさらっとご披露。拝見することができて、ほんとによかった。
◎◎◎◎●
「飢餓海峡」
監督 内田吐夢
脚色 鈴木尚之
原作 水上勉
出演 三國連太郎 風見章子 左幸子 加藤嘉 伴淳三郎 進藤幸 加藤忠 岡野耕作 菅原正 志摩栄 外山高士 河合絃司 最上逸馬 安藤三男 曽根秀介 牧野内とみ子 北山達也 山本麟一 大久保正信 矢野昭 西村淳二 遠藤慎子 田村錦人 沢彰謙 安城百合子 荒木玉枝 河村久子 亀石征一郎 須賀良 八名信夫 久保一 北峰有二 三井弘次 沢村貞子 高須準之助 藤田進 鈴木昭夫 関山耕司 斎藤三男 高倉健
今の時代にはない強烈なパワーが感じられます。
左幸子さんの純粋さゆえに堕ちてゆく姿が強烈でした。
伴淳さん、いい役に巡り合えて幸せだったことでしょうね。
三国さん、若い頃は濃かったですね。
いつか見たい、見たいと思っていたのですが、やっと念願かないました。
監督、かなり伴淳に厳しかったらしいですね。
とことんいじめ(?)て、それであんな感じの枯れた塩梅を引き出したんだとか。それにしてもお見事でした。
三國さん、年取ってからも十分濃いですよ!
本当に悲しかったです。彼女は樽見の足を引っ張ろうとした訳ではない。純粋に感謝していただけなのに・・・。八重が殺される時に微笑んでいる。それが痛々しかったです。
>伴淳の朴訥さと、真摯なさと、父親としての情けなさと、でも事件に対する真っ向な姿勢がほんとにいい。
本当に良かったです。かっこいいですよね。
見れてよかったです。
地元のスター!伴淳の在りし日の姿をじっくりと堪能しました。
この伴淳は本当に見事でしたね。
まじな役もまた似合います。