星を見ていた。

思っていることを、言葉にするのはむずかしい・・・。
良かったら読んでいってください。

クリーム色の家(4)

2012-01-29 12:53:23 | クリーム色の家
誰とゴルフに行ったのか分からない夫は、夜遅くに帰ってきた。その日帰ってくると思っていなかった私は、とっくにベッドに入って眠りに落ちていた。玄関の鍵穴がガチャっと言った瞬間、びっくりして目が覚めた。泥棒かと本気で思った。
「俺だ。開けてくれ。」
夫だと分かって、驚いたのとほっとしたのが同時だった。ドアチェーンがしてあったので鍵を開けただけでは入れなかったのだろう。私は重い体を物憂げに起こしながら玄関に向かった。チェーンをはずすと夫の顔が間近にあった。私は目を逸らした。
「会社から連絡があってさ、どうしても急な用事だって言うんで俺だけゴルフ途中で止めて帰ってきたよ。会社に寄ってきたから遅くなった。」

夫は部屋に入ると持っていた荷物をどさっと床に置き、上着を脱ぎ始めた。
返事をする気にもならなかった。
「あいつ俺がゴルフに行くの知ってたはずなんだけどな。あいつとは違う連中と今日は行ってたんだけどさ。携帯も、電波のつながりが悪いのか全然分かんなくて。」
私が何も聞かないのに夫は一気に説明をし始めた。
「電話で済ませても良かったんだけど面倒くさかったから取りあえず会社に直行しちゃったけど。仕事の内容自体は大したことはなかった。」
夫の顔は、何の後ろめたさもないようないつもの顔だった。この人は、こういう顔で嘘をつく、そう思った。
「出先で事故にでもあったのではないかと思ったけど・・・。まあ違ったんだから良かったけど。」
私は言葉とは裏腹にうんざりした目で視界にあった夫の荷物を見つめていた。前からあったかどうかは分からないが、ちょっと夫の趣味とは思えないようなクラブのカバーがかけてあるのに気が付いた。私がそのカバーをじっと凝視しているのを、夫が伺うように見ているのが感じられた。
「まあ、心配させて悪かったよ。」
私は頭の奥に、黒い雲のようなものがどんどん湧いてきて、頭全体を覆っていくような感覚になった。
「誰と、どこに、泊まったの?」
顔も見たくなかった。相変わらずクラブのカバーを凝視していた。
「会社の、誰と?どこのゴルフ場で?とこのホテル?私もあなたを信用して何も聞かなかったのが悪かったけど、もし私が産気づいたらどうするの?連絡も取れず生まれてしまうわよ。」
私は視線を動かせずに、ただ目に入っている荷物を見ていた。涙が浮かんできた。そして嫌でも同じような場面を繰り広げた数年前のことを思い出した。


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