星を見ていた。

思っていることを、言葉にするのはむずかしい・・・。
良かったら読んでいってください。

「むずかしい愛」

2009-01-25 20:39:19 | 
これもあるきっかけで読んだ本。イタロ・カルヴィーノというイタリアの作家。まったく知らなかった。ちょっと調べてみたら児童文学ぽいものや、SFみたいなものも書いていたようだ。いろいろな手法を試みて小説を書いた人らしい。

私が読んだのはこの短編集だけなので、いったいどういう作家なのかはよく分からないが、この中の「ある夫婦の冒険」というのが、よかった。

夜勤から帰った夫と、これから仕事に行く妻の、すれ違うひと時を書いているのだが、特にこれといったことも起きず、本当に平凡な夫婦の平凡な一日のスケッチなのだが、もう私のお気に入りの一遍になってしまった。

日常の、ささやかな出来事やそこにまつわる感情などを、丁寧にすくって書き出すとこういう風になるのだろう。取り立ててセリフもないのだが、その日常の描写からふたりの関係と二人の間に流れる愛情のようなものが静かに滲み出てくる感じ。

こんな小説を書けたらいいな、と思う。

まったく本編とは関係ないけれど、登場人物の名前が(当たり前だけれど)みんな聞きなれないイタリアの名前なので、私って今までイタリアの小説ってひとつも読んだことがなかったんだなあと、初めて気付いた。
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「嵐が丘」

2009-01-24 14:30:50 | 
あるきっかけで最近読んだ。以前一度読んだことがあると思っていたのだけれど、出だしを少し読んで読んでなかったことに気がついた。私が読んだつもりになっていたのは、もしかしたら漫画の「ガラスの仮面」に劇中劇として登場するから、ストーリーを知った気になっていたのかもしれない。

姉妹であるシャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」は好きな本のひとつなので、同じようなイメージを抱いていたらまったく違った。こう言ってはなんだけれども、これだけ酷い話と主人公(ヒースクリフ)なのにこれだけ読み継がれているのは何故だろうと思った。でも登場人物の好ましさと文学的な良さというのはまた別ものなのだろうと思う。

読んでとても暗くなるし、作品のイメージも暗いのだけれど、自分と魂が一体だと思えるほど愛している相手が存在する、というところに羨ましさのようなものを感じた。それだけ激しく愛しあえる相手に生涯出会えるの人はそれほどいないだろう。

100年以上前の昔、こんな物語を書いた女性作家、すごいなあと思う。
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fortune cookies(12)

2009-01-14 00:12:15 | fortune cookies
 私が高校生の時、美沙子姉さんが結婚するということになり、その直前に女の従姉妹だけでお祝いのために集まろうという話になった。母方の兄弟姉妹には私と美沙子姉さんを入れて5人の従姉妹がいた。美沙子姉さんがいちばん年上で、私がいちばん年下だった。私達は美沙子姉さんや他の従姉妹が住んでいる地元の、若い人向けのカジュアルなレストランでそのお祝いお食事会を開いた。

 私は美沙子姉さんが、アルバイト時代の不倫の恋に破れ、そして職場で知り合った、噂では背の高い素敵な銀行マンとの婚約も破棄になったことをその時既に知っていた。美沙子姉さんは当時地元にあった中堅建築会社の受付嬢をしていた。背も高くすらりとして顔立ちもはっきりとしていたから、きっと高感度も高くもてたのだろうと思う。当時学生だった私の目から見ても美沙子姉さんは素敵なお姉さんだった。親戚の中ではいちばんの美人だし、控え目なしゃべり方や落ち着いた雰囲気は、本当の年齢よりもずっと大人に見えた。たまに用があって美沙子姉さんの勤め先のある駅に行くときは、姉さんを訪ねるとお茶をおごってくれたり食事を御馳走してくれたりした。姉さんはいつもピンクの受付嬢の制服を着ていて、お昼の休憩時間になるとおいしいお店に連れて行ってくれたりした。

 私は美沙子姉さんの婚約が破棄になったことは知っていたけれども、その理由まではその時は知らなかった。子供を堕ろしたのを知ったのはもっとずっと後のことで、当時は知らなかった。それなので今度結婚することになった人はどんな人なんだろうと興味津津だった。遠い親戚の紹介で知り合って、年が10歳ほど離れているということだけを知っていた。美沙子姉さんのお相手なのだから、うんと年上の素敵な男性なのだろうと勝手に期待をしていた。

 集まった私たち従姉妹は、美紗子姉さんが自分たちの中でいちばん早く結婚するということもあって、結婚にまつわる話に興味深々だった。でもそれは結婚生活における肝心の要素ではなくてもっと表面的なこと、例えば結婚式にはどんなドレスを着るのかとかどんなところに新居を構えるのかとか、料理は自分で作れるのかとか、そういったことだった。結婚してみれば当然そんなことは分かるはずなのだが、そんなことは結婚においてちっとも大切な部分ではないのに、当時の私にとって結婚とはつまりその程度のことだった。自分に将来やってくる出来事として捉えることができないもの、そういうものだったのだ。

 ドレスはこんなもの、お料理はこんなもの、結納はどんな風にしたか、彼の職業、お見合いの時の第一印象はどんなだったか、等私たちの質問は矢継ぎ早に美沙子姉さんに向かった。美沙子姉さんは特にはしゃぐ風でもなく、いつもの美沙子姉さんらしくゆっくりとその質問に答えていった。美沙子姉さんは結婚を前に不安がったり興奮したり緊張したりと、そういった態度が微塵も見られなかった。どちらかというと淡々としていた。まるで自分のことではない風に客観的にそれまでに起こったこととそれから起ることを説明しているように見受けられた。私はそんな美紗子姉さんの態度を見るたびに、やはりそれは恋愛結婚と見合い結婚の差なのではないかと思っていた。前に付き合っていた人とは職場恋愛だったのだろう。でも今度の人はお見合いだから、何というか美沙子姉さんは自分で自分を納得させているように私には見えた。私にはそう見えたのだけれど、他の従姉妹は姉さんが淡々と喋るのに過剰に反応して、きゃーとか熱いわねーとか仲いいわねとかいう相槌を逐一入れていた。

 美沙子姉さんが結婚後は旦那さんのご両親の家に同居をするという話を聞くと、もともと持っていなかった結婚への憧れのようなものが、さらに無くなっていくのが自分でも分かった。美沙子姉さんの旦那さんの実家の二階の一部分、つまりふた部屋だけが美沙子姉さんとその旦那さんの居住部分らしかった。結婚したら今の受付嬢の仕事も辞めるらしかった。それは仕事を続けるとか辞めるとかの選択肢はなしに、結婚したら辞めるもの、との見解が当然とされているような話しぶりだった。

「あ、来たわ。」
 本当は女だけで集まるというはずだったのだけれど、せっかくだから旦那さんになる人も紹介してよという話になり私たちはその人を待っていたのだった。そしてその人が今現れレストランの入り口に皆の注目が集まった。

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fortune cookies(11)

2009-01-13 15:53:11 | fortune cookies
叔母と従妹、それから私たち親族は告別式が終わると焼場に向かった。まるでエレベーターでどこかに行くように、叔父を乗せた台は向こう側に消えていった。
待合室として用意された部屋に入ろうとすると「ねえ、里江ちゃん、ラウンジでコーヒー飲もうよ。」と美沙子姉さんが声を掛けてきた。
「旦那さんはいいの、放っておいて?」
 私は美沙子姉さんに一応聞いてみた。
「いいのいいの。たばこ呑みたいって外に出てったわ。」
 
 私達は斎場の一角にある喫茶室でコーヒーを頼んだ。美沙子姉さんとこんな風に話をするのは、随分と久しぶりだった。昨日も少し話したが、挨拶程度の話だけだったのだから。
「ねえ、里江ちゃん昨日彼氏が迎えに来てたでしょう?車で待ってたよね、青い車。」
 美沙子姉さんは少しいたずらそうな顔をしてみせた。私は多分、親戚の伯母さんなんかにこんなことを聞かれたら面倒臭くて完全否認してしまうところだけれど、美紗子姉さんは口が堅いし何より私にとっては実の姉さんのような存在という感覚だったので簡単に吐いてしまった。
「そう。美沙子姉ちゃん見てたの?」
 私は昨日信次の車に乗ったとき、どこかの車がクラクションを鳴らしたことを思い出した。
「私も昨日みんなより先に帰ったのだけれどね、ちょうど旦那が車をこっちに回してきたところにね、里江ちゃんが出てきて誰かの車に乗ったって言ってたから。」
「そう。」
「良かったね~。優しいじゃない、こんなところまで迎えに来てくれてさ。」
 私は美沙子姉さんの顔を見ながら、今朝信次が何のメッセージもなくいなくなったことを思い出した。
「でもね、バツいち子持ち。ていうか多分バツいち。」
「別にそれでもいいじゃない。その、多分バツ一、ってのはなあに?」
 私は信次が、もともとは会社の取引先の人でたまたま行われた食事の席で知り合ったということ、その時まだ信次は離婚前だったということを手短に話した。
「でもね、私、信次が離婚した後からつきあったのよ。それに信次が離婚した原因は私ではないし。知り合ったときにはもう既に奥さんと別居していたのよ。」
「なら問題ないじゃない。どうして“多分バツいち”なの?」
 私は2年ぶりに会ったというに、美沙子姉さんに雪崩のように信次とのことを話始めた。
「だって、信次は離婚してるからフリーだし、私だって独身で何も問題はないはずなのに、どう考えてもまるで私たち不倫カップルみたいなのよ。私は正直信次にどう思われているのか分かんないときがあるわ。もしかしたらいいように使われているだけなのかもしれないって思ったり。もしかしたら離婚したとか言って本当は奥さんと別居しただけなのかもと思ったり。いくら娘が訪ねてくるからってマンションにも勝手に行ってはいけないっていうのおかしくない?急に予定が入ってじゃあ今日は会えない、とか、そんなのばっかり。」
 
 美沙子姉さんは私の顔をじっと見つめて、そして少し微笑した。美沙子姉さんにとって私はまだまだ甘ったるい小娘に見えるのだろうか、と美沙子姉さんの顔を見ながら思った。
「里江ちゃんは、彼のこと本当に好きなの?」
「好きに決まってるよ。信次が居なくなったらどうしようって、そればっかり考えてるんだもん。」
 美沙子姉さんは何でこんなこと聞くのかと思った。
「なら、離れちゃだめよ。何があっても。」
 美沙子姉さんは真面目な眼をしてそう言った。私は美沙子姉さんがそれを軽い気持ちではなく本気で言っているのだということをなんとなく感じた。

 私は頭の隅で、美沙子姉さんの過去のことを考えていた。おおっぴらには親戚中知らないことになっているが、美沙子姉さんは若い頃アルバイト先の上司と不倫をしていたという過去があった。その恋は相手の奥さんが怒鳴り込んできて終わったのだったが、美沙子姉さんはその男が妻子持ちだということを知らなかったのだ。その男は離婚していると美沙子姉さんには言っていた。その敗れた恋の後、とある会社に就職をして美沙子姉さんは普通の職場恋愛をした。そして婚約までしていた人がいたのだが、過去の不倫のことが相手の両親に知れ、そのことが原因で婚約を破棄されたという過去もあった。姉さんはその時妊娠をしていたが、相手の両親に何が何でもと頼まれ、子供は堕ろしたのだった。親戚中でこの話は知らないことになっているが、私は伯母たちが集まった席でそういった類の話をしていたのをかつて聞いていたことがあり知っていた。

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あけましておめでとうございます

2009-01-01 10:16:40 | ごあいさつ・おしらせ
昨年中はこちらに訪れていただきありがとうございました。
昨年は12月が特に忙しくて、全然進みませんでした・・・。

今年も不定期ですが更新していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します。

皆さんにとって輝かしい一年でありますよう、お祈り申し上げます。
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