私がその人を、美沙子姉さんの旦那さんになる人を初めて見たときの感想は、「なぜこんなおじさんと?」というものだった。半分白髪の、スポーツ刈りがうんと伸びたような髪型、いろいろな色と柄の入ったセーター、ジーパンでなくスラックスを穿いていた。職業柄か肌が陽に真黒に焼けていた。
「私の従姉妹たち。で、この人が隆さん。」
美沙子姉さんは両方にざっと紹介をした。私はテーブルの向こう側に並んだ二人を見て、どう見ても違和感のあるカップルだと思った。こういう人のお嫁さんは美沙子姉さんみたいな人ではなく、何というかもっと違う人がお似合いの気がした。私だけでなく多分他の従姉妹も多少なりともそういう感想を持っていたようだったが、私よりも普段から親戚とのやりとりが多い他の従姉妹達は、もう既に美沙子姉さんの旦那さんになる人に対しての、大まかな情報を持っていたようで私ほどの驚きはなかったようだった。
「新婚旅行はどこに行くんですか?」
ひとしきり、おめでとうと挨拶したり、私達が用意した結婚祝いの品を渡したりとが済むと、美沙子姉さんの次に年長の従姉妹が隆さんに質問をした。
「あー沖縄に。3泊4日で。」
この短い返答の中にも、この人の性格が表れているようだった。ゆっくり朴訥とした話し方は、何となく東北方面の出身の人のように思えたが、勿論この人は地元の人なのだった。けれど、ぼそぼそっという話し方ではあるけれど話すことは好きなようで、そこから先この人は沖縄の魅力についてのんびりと語りだした。私は美沙子姉さんの表情を伺った。特に困惑した感じでもなく、その訥々と話す様子を見守っている感じだった。外見上は実際の年齢よりもうんと年が離れているように見える二人だったけれど、会話をしている雰囲気はどちらかと言ったら美沙子姉さんの方がしかりとした姉さん女房のような感じだった。
私がその時に抱いた印象は、あれからもう10年以上経つのだけれどほとんど変わりがなく、おっとりとした旦那さんに優しくてしっかりした奥さん、というのがこの夫婦に対して私が持つイメージとなった。うんと年上の旦那さんなら、美沙子姉さんは甘えられるのかなというのは逆だったようだ。むしろ旦那さんが美沙子姉さんに甘えているように傍からは見える。子供がずっとできなかったというのも余計にいつまでも仲睦まじいご夫婦という雰囲気を損なわないのかもしれないと思った。
美沙子姉さんと旦那さんは、いつ会っても穏やかな雰囲気だった。熱烈の恋愛の末に結婚したカップル、という風にはやはり見えなかったけれども、結婚した当初から、もう既に結婚をして随分と年数の経っているような雰囲気を醸し出していた。美沙子姉さんから結婚生活の愚痴を聞くこともなかったし、旦那さんのご両親と同居しているにも関わらず、その不満というものも聞いたことがなかった。結婚と同時に仕事を辞めた美沙子姉さんは、旦那さんの実家の家業の手伝いをしていた。旦那さんは家業を継がなかったけれども、その兄弟が家業を継いでいたようでその店番をしたり事務仕事の手伝いをしていたようだった。家も旦那さんの実家の、狭いふた部屋だけが夫婦の自由に使える領域で、仕事に行っても向こうの親戚の人ばかりだというのに、それが苦にならないのかもしくは顔に出さないだけなのか、いつでも穏やかな顔で穏やかにおっとりと話す美沙子姉さんなのだった。
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「私の従姉妹たち。で、この人が隆さん。」
美沙子姉さんは両方にざっと紹介をした。私はテーブルの向こう側に並んだ二人を見て、どう見ても違和感のあるカップルだと思った。こういう人のお嫁さんは美沙子姉さんみたいな人ではなく、何というかもっと違う人がお似合いの気がした。私だけでなく多分他の従姉妹も多少なりともそういう感想を持っていたようだったが、私よりも普段から親戚とのやりとりが多い他の従姉妹達は、もう既に美沙子姉さんの旦那さんになる人に対しての、大まかな情報を持っていたようで私ほどの驚きはなかったようだった。
「新婚旅行はどこに行くんですか?」
ひとしきり、おめでとうと挨拶したり、私達が用意した結婚祝いの品を渡したりとが済むと、美沙子姉さんの次に年長の従姉妹が隆さんに質問をした。
「あー沖縄に。3泊4日で。」
この短い返答の中にも、この人の性格が表れているようだった。ゆっくり朴訥とした話し方は、何となく東北方面の出身の人のように思えたが、勿論この人は地元の人なのだった。けれど、ぼそぼそっという話し方ではあるけれど話すことは好きなようで、そこから先この人は沖縄の魅力についてのんびりと語りだした。私は美沙子姉さんの表情を伺った。特に困惑した感じでもなく、その訥々と話す様子を見守っている感じだった。外見上は実際の年齢よりもうんと年が離れているように見える二人だったけれど、会話をしている雰囲気はどちらかと言ったら美沙子姉さんの方がしかりとした姉さん女房のような感じだった。
私がその時に抱いた印象は、あれからもう10年以上経つのだけれどほとんど変わりがなく、おっとりとした旦那さんに優しくてしっかりした奥さん、というのがこの夫婦に対して私が持つイメージとなった。うんと年上の旦那さんなら、美沙子姉さんは甘えられるのかなというのは逆だったようだ。むしろ旦那さんが美沙子姉さんに甘えているように傍からは見える。子供がずっとできなかったというのも余計にいつまでも仲睦まじいご夫婦という雰囲気を損なわないのかもしれないと思った。
美沙子姉さんと旦那さんは、いつ会っても穏やかな雰囲気だった。熱烈の恋愛の末に結婚したカップル、という風にはやはり見えなかったけれども、結婚した当初から、もう既に結婚をして随分と年数の経っているような雰囲気を醸し出していた。美沙子姉さんから結婚生活の愚痴を聞くこともなかったし、旦那さんのご両親と同居しているにも関わらず、その不満というものも聞いたことがなかった。結婚と同時に仕事を辞めた美沙子姉さんは、旦那さんの実家の家業の手伝いをしていた。旦那さんは家業を継がなかったけれども、その兄弟が家業を継いでいたようでその店番をしたり事務仕事の手伝いをしていたようだった。家も旦那さんの実家の、狭いふた部屋だけが夫婦の自由に使える領域で、仕事に行っても向こうの親戚の人ばかりだというのに、それが苦にならないのかもしくは顔に出さないだけなのか、いつでも穏やかな顔で穏やかにおっとりと話す美沙子姉さんなのだった。
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