欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

美しい貝殻のネックレス

2012-02-02 | une nouvelle
嵐の中で傷ついた人魚がたどり着いた場所、そこはほのかな明るみのある小さな洞窟でした。
傷を痛みながらも奥の方へと進んでいく人魚。
不思議と怖さは感じられなかったのです。

やがて、大きな空間に出ると、そこには美しい夜空が広がっていたのです。
人魚は暗がりでよく目をこらしてみると、そこは鉱石のちりばめられた大きな穴蔵だったのです。
近くの岩場に身をよせて、体をやすめていると・・。
さぁっと砂のようなものが降ってくるのに気づくのです。
砂の雨は金の粉のようにきらきらと輝いていて、それはゆっくりと何度も何度も続くのです。

やがて、人魚の上からも砂の雨が降ってきました。金の粉をあびた人魚。すると不思議なことに体が癒されていったのです。
砂はまた降ってきて、体にさらに生気が戻ってきます。
癒された人魚はその穴蔵の中を泳いでみました。
すると、底の方に細かな金の砂がたまって銀河のようにきらめいていたのです。
その美しさに人魚が目を奪われていると、

"悲しみはやがて愛へと変わります。あなたへの奇跡は今まさに用意されようとしている。
傷をいやし、嵐の去ったあとに、あの浜辺へと戻ってみなさい。
待ちわびていたあの人がそこにはいるはずだから。
一度でも突き放そうとした、強い後悔とともに・・。
胸につけた美しい輝きが、確かな明るみへあなたを導いてくれる。"

すると、金の粉がいっせいに巻き上がり、とても大きな魚が海に向かって泳いでいきました。
やがて、静かさが戻り、そこの鉱石も砂も不思議と輝きを失っていました。
ただの暗い洞窟。しかし、人魚の傷は完全に癒されていたのです。
洞窟を後にしようと人魚が泳いでいた先に、見たこともない美しい貝殻のネックレスが波間に漂っていました。
それを手にとり、首に巻いた瞬間、あたたかな愛が胸の底からこみ上げてきたのです。
あの声と同じようなあたたかさが・・。あの大きな魚からの贈り物のように。