欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

遠い月には大きな○○がいて

2013-05-11 | une nouvelle
毎晩、窓のむこうを通りかかる月。
月にはとても大きなネコがいて人の暮らしぶりを目をくりくりさせて眺めてるんだって。
悲しい人を見ると、大きな口をあけて、なにかを叫ぶ。
遠いこの星には聞こえないくらいの鳴き声だけど、その人のまわりにいる天使たちに気合いが入って、不思議に明るい出来事がやってくるんだとさ。
今夜も何回か鳴くみたい。

ある日、となりの坊やが大事にしてる人形をなくしてしまった。
だから、僕は言ったのさ。月にお願いしてみたら? くりくり顔のねこさんよぅ、今晩、僕の大切な人形を届けておくれってさ。
そして、かならず窓から夜空を眺めてみなよって。できることなら、悲しい顔でさ。
でも、あいにく残念。雨が降り始めて、窓越しに僕らは首をふったのさ。

だかしかし!、次の日坊やがやってきてさ、人形が戻ってきた!って言うんだ。
わざわざ人づてに届けてくれたのは、やさしそうな時計職人さんだったらしい。
大切にしているものはよくわかるんだって。
あの時雨雲のむこうでネコがきっと鳴いてくれたに違いない。
そう言って、坊やととても喜んだんだよ。

次の晩、お礼を言おうと窓をあけると、とってもきれいな月が出てる。
そして、にっこり笑ったネコが確かにそこに見えたんだよ。
坊やが眠ってしまった、ちょっと夜更けの話。
誰もが知ってるうさぎのことではないけどね。