欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

真夜中に誘いにくる者

2013-02-22 | une nouvelle
真夜中に目が覚めて。
しいんと静かな世界になにかヘンな感覚をおぼえたのさ。
それがすべてのはじまり。自分の旅の入り口だったんだよ。

聖堂の鐘がひっそりとした街に響きわたって。夜空にはきれいなお星様のきらめき。
夢の世界の人も眠れずに寝返りをうつ人も、この妙にせきたてられる感覚を味わってはいるんだろうか?
すると、コツコツと窓をたたく音が・・。そう、彼がやってきたんだよ。僕のなじみのはじめて見る珍客がね。

おうい、早く開けておくれよ。外は寒くてしょうがないや。
小さなステッキでガラスをたたいてる。
はじめてだけど、はじめてじゃない気がしたんだ。
もうそんな回りくどい説明はやめにして。
これだけはわかっていたんだよ。
"いいかい? 旅立つ用意は?"

訳がわからないことだらけだけど、僕は旅に出る。
不思議な魔法を使うばあさんに会いにいくのさ。
流れ星が方向を示してくれるって、シャレた話じゃないんだけど、この小さな紳士と旅立つんだ。
明日、朝の鐘が鳴るのと同時にね。

ちなみに紳士の持ってるカバンはひとつ。僕のカバンはふたつもあって、しかもはちきれんばかり。
やれやれって紳士が笑うんだよ。旅人の格好じゃないってね。でも、僕にはまだいろいろな物が必要なのさ。
はじめてこの街を離れる不安もあるかもね。

胸にヘンな感覚が走ったのは旅立ちの予感かな?
紳士は言うんだ。これはすばらしい冒険のはじまりさ。楽しみを謳歌する旅さ。
ただ、ひとつ気をつけないといけないことは・・。信じて疑っちゃいけないんだって。
信じる者は天にものぼる、さ。
どんな迷信だかしらないけど、小さな紳士は自信をもって言うんだよ。
もっと明るく生きようぜ。
眉をひそめて、僕の顔を見ながらそう言うんだ。

おおきなツケの理由(わけ)

2013-02-22 | une nouvelle
楽しさを見失いそうになっても、あわてちゃいけないよ。
霧のような迷いの森をがむしゃらに走ったって、いいことなんてありゃしないから。
じゃあ、どうすればいいかって?
そこが問題なんだよなぁ。

君の首にかかってる金属の飾り。
よく見てみなよ。それは不思議の国を呼ぶ笛?
まぁ、その切り株にでも座って、落ち着いて吹いてごらんよ。
犬笛より高い音で、きっとこの森の不思議を呼び出せるはずだから。

ほら、遠くから聴こえてくるのはアコーディオンの響きさ。
たくさんの音が交わって聞こえるのは小人たちの笛。
あの大木の影からきっとあらわれてくるんだよ。
大人数の夢の楽器隊がね。

華やかななりをした楽器隊が連なって歩いていくんだ。
後から来たのは大きな花馬車。
ご覧よ、窓からのぞいているのは、みんなが知ってるあのお姫さまじゃないか。
澄んだ瞳でこちらにむかって笑みを投げかけてくれるよ。
妖精のようなへんてこな生き物たちを従えて、幸運をふりまく行進なのさ。

君の心になにかが花ひらいたかい?
今までなかった笑顔がこぼれてくるのは、この一団のせいだけじゃないよ。
楽しい音楽や不思議な仲間たち。
でも、一番忘れちゃいけないのは、君の中にあるすばらしいシロモノなのさ。

ん、いたずら好きな目をした女の子がひょこひょこ歩いてくるよ。
ねぇ、おにいちゃん。わたしは冗談がとっても大好き。
だって、冗談は罪にならないでしょ?
この楽器隊、楽しかった?
君がうなずくと、女の子は手をさしだして、
はい、お勉強代。おこずかいちょうだい。
え、持ってないの? しょうがないわね。
これからの明るい未来にぜったい払ってもらうからね。