欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

あそこに帰るまでにね

2009-07-23 | poem
わたしが手をのばした時、そのむこうに星の輝きを見た。
それはまるでこの時を決められていたかのような、奇跡のような輝きだった。
星はひとつ、またひとつと輝きを増やしていき、やがて満天の星がわたしの頭上を覆うようになった。
なんて不思議な奇跡だろう。
あっけにとられ、ぼんやりとしているわたしの横で、見たこともない少年がともに空を見上げていた。
あの星が僕の星。あの星がお兄ちゃんの星だよ。
わたしの方を見上げて言う少年の顔は透き通るような笑顔だった。
君はだれ?
そう聞いてみたが、少年はまた空を見上げるだけで、私の問いには答えてくれなかった。
しかし、この満天の星空を見ているだけで、日常ではない出来事にとまどいとかすかな不安を抱いた。
そんな心細い時にこの少年はかたわらにいてくれる。それだけでもわたしにとって心強い存在であった。
しかも少年は落ち着いていて、物腰も大人のような風合いがあった。
お兄ちゃん、あそこからなにをしに来たの?
しばらくして、少年がまた顔を向けてきた。
ん?、僕が・・。どうして?
その問いになにも言葉を返せなかった。
お兄ちゃん、なんで?
少年はまた聞いてくる。
わたしはすこし待って、実はよくわからないんだ。
ふーん。
わたしから目をそらして、それを探す旅に来たのかもね。と少年は言った。
そう、だね。そうなのかもね。
わたしは自分の中にある疑問がふと解けていくような、そんな感じをその瞬間に受けた。
頭上にはいまだに満天の星が輝いている。少年はまだわたしのかたわらによりそっている。
あそこに戻るまでにいろいろなことをしなきゃならないんだ。
思ってもみないような声がわたしの中から出てきた。
うん。少年はうれしそうにうなずいて。あそこに帰るまでにね。
二人でまた無数の星の輝きを見上げた。今この時が永遠のようにわたしたちはそれからもずっと見上げていた。