必然的なヒストリー

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【功名が辻・感想レビュー】ガラシャの魂

2006-10-22 21:30:31 | 大河ドラマレビュー《功名が辻》

①山内一豊が徳川軍に付く事を決意
②石田三成が徳川軍に付いた武将の妻子を人質に取ろうとする
②細川ガラシャの最期
この3つがメインであった今回。

「義の人」として描かれている石田三成が②のような行動を取る事について、このドラマでは彼がどのような心境を経て、この策を実行に移すのかと楽しみにしていましたが当たり前のように妻子を人質にとっていました。彼が焦るあまり極端な事をしでかした事実のみ、伝わりました。これは三成の失策であり、この策は効果が表れるどころか諸武将に反感を与えてしまいます。
これは琉河の私見ですが、三成のいう「義」とは豊臣家へ忠誠を尽くし、完全なる滅私奉公、従わない奴は敵であるという意味合いを指していて、弱気を助け強気を挫くという様な、いわゆる「正義のヒーロー」ではないと思うのです。このドラマでは、今まで三成という人物を後者の様な存在で描いていたのに、いきなり前者のような存在へと変わってしまったことに違和感が。
前者的な考えを三成が持っていたとすると
豊臣をないがしろにする徳川に付く者はワルであり、そいつ等にどんな裁きをしても許される
と彼が思い、「徳川に付く武将の妻子もワルの一端であり、人質に取られても仕方が無い」という結論にたどり着くのも必然的なわけです。だから、そのような人物として最初から描けばいいのです。無駄に律儀で正義感の強い人として描くから違和感が生じるのです
もっと言えば、三成そのものの存在が豊臣家の癌だという様な描き方をしても良かったと思います。
「皆の者、豊臣の為に忠誠を尽せ!」
と三成が学級委員みたいな口調で諸武将に訴えたところで、彼より古くから秀吉に仕えていた加藤清正らは納得がいかないのですよ。だから秀吉薨去後、家中が分裂したという面を強調しても良かったのでは。
ドラマの話とはかけ離れますが、三成は秀吉が薨去した時点で自分の時代は終わったと悟るべきだったと思います。後世、柳沢吉保が徳川綱吉の薨去と共に隠居を申し出たように、三成も五奉行の立場に執着せずに後事を黒田如水辺りに任せて、佐和山に隠居すべきだったのですね。徳川家康を敵と見なして早くから危険性を訴えていたのは見事ですが、如何せん自分の人望の無を理解していなかった事が失敗の要因でした。三成さん、恨むなら主君の豊臣秀吉を恨んで下さい。
石田三成の所見については次回も述べて行きたいと思います。今回は、この辺で。

話は変わりますが、どうすれば豊臣政権を維持出来たのか?考えてみますね。
答えは「出来ない」としか言い様がありません。この時点で、維持できる方法が思いつかないのです。前田利家も没しており、上杉景勝も家康に対抗できるほどの戦力はなく、毛利輝元は祖父の遺産を食い潰すだけで腰が重いし、宇喜多秀家は諸将から人望があったものの政治面は疎く(家臣団の亀裂を招いている)、とてもではないですが家康に対抗できません。残りの五奉行なんてもっての他です。必然的に徳川家の天下になっていたことは間違いはありません。

やはり、秀吉の対徳川に対する認識が甘かったのですね。では、今度は秀吉はどうすれば良かったのか、考えて見ました。
①北条を滅ぼして、家康を関東に封じ込めた時点で、茶々を家康に押し付ける。
②断るようなら、「織田の姫君をないがしろにするか!」とイチャモンをつけて合戦へ。家康が茶々受け入れを受諾したならば、方広寺並のイチャモンをつけて、やはり合戦へ持ち込む。
何とかして家康を倒す(怪しい伊達は奥羽にて留守。主力は上杉・細川・宇喜多・池田・蒲生ら)
④秀頼は誕生するはずが無いので、関白は秀次に。茶々が生きていれば、織田信雄に押し付ける

これで良かったと思います。③の家康退治が成功していれば、唐入りしようが何しようが豊臣政権は安泰だったのです。秀吉が唐入りした場合は、三成が清正らに暗殺されるのみで事は収まり、秀次が関白として高台院に操られながらも職務をまっとうし、幕府的な機能が完成され危うい綱渡りで何代かは続いたはずです。秀吉が内治に専念していた場合は、摂関政治の再来が訪れたはずです
③が失敗した場合は豊臣政権の維持はムリです。例え、秀次が生きていたとしても彼には諸将をまとめる事が出来ず、公家となり天皇に侍るしか道が無いでしょう。諦めて必然的な出来事に身を任せましょう。

で、ようやく本題。
一豊が徳川に付くかどうかがドラマの焦点のはずなのに、何故か今回のメインは細川ガラシャ。
で、そのガラシャさんは槍につかれて昇天。
死んだらどうなる」とか「死んだら驚いた」とか副題が付きそうな、この「ガラシャの魂」というタイトル。ガラシャさんがここで死を選んだ理由の一つに
細川忠興はガラシャの側に他の男が近づくことを許さなかった。その執着ぶりか加速し、彼女の外出すらも認めなくなった。だから、ガラシャは一人屋敷に取り残され、「他の男」である三成勢の前に顔を出すわけにもいかず、夫に操を立てて、シを決心
という、切ない説がありますが「功名が辻」では、見事この説を採りましたね。本当に不運な人生です。忠興は妻の人生を何と考えているのでしょうか。人格が破綻しています。ちなみに、この男はガラシャに挨拶をした植木職人を斬っています。愛妻家とかいう次元ではありません。それでもって、有事の際には死を選べだと
忠興が一緒にガラシャを籠に乗せて、戦場へ連れて行き、彼女専用のスペースを陣中に確保しておけば済む話だったんですけどね。なんという身勝手な男だ
ところで、嶋田久作さんを小笠原役でゲスト出演させるのは勿体無いような気がします。スタッフは余程、ガラシャの人生(というか長谷川京子さん)に力を入れているようですね。

一方、山内家では康豊が安宅の関みたいなイベントを起こして、掛川から千代の許へ。神主に化けた康豊を六平太が泣きながら棒で叩いたら、面白かったのですが。ついでに代官が石橋蓮司だったらもっと面白かったのに。って、康豊に付いていた人がスルーされてカワイソウ。地味に盛り上がるところなのに、手柄を康豊に奪われてしまいました。
ところで今回、千代が増田長盛に啖呵を切ったシーン。千代ちゃんカッコイイ~ッ
「私が生涯を捧げる人物は、天地ただ一人」
一度でいいから言ってみたいセリフです。

そしてやっぱり、ガラシャの処へ行ってしまった康豊。
彼女の処に行く暇があるのなら飛行機恐怖症を直す事に専念しましょうよ。
それにしても、ドラマの展開が予想通りで見ていても面白くな・・・。
彼の説得も空しく、ガラシャさんは夫の為、細川家の為にその人生を捧げました。

話は主題の山内一豊の話へ-
一豊様が家康饗応の場で「金ヶ崎の退き陣」の話を持ち出したのは意外でした。
なるほど、これは上手い理由付けですね。
「命を救われた恩義がある」
いかにも一豊様が言い出しそうな事です。
これが引き金となり、千代の手紙で毛利家の分裂(安国寺坊主と吉川広家の対立)を察知し、家を守るため」という中村一氏と同じ理由で徳川家に付く事を決意。
ようやく決意しました。結局、背中を押したのは千代だったのですね。それにしても、毛利家の分裂が決め手になるとは・・・。視聴者の立場から言わせてもらうと、「毛利家」というのが、どのくらい重要な立場なのかという事を丁寧に説明して欲しかったですね。というか毛利家を出せ!配役を勝手に決めてやる!(実は配役は決まっているのですが、琉河の脳内キャスティングということで
毛利輝元・・・長塚京三
安国寺の坊さん・・・佐野史郎
吉川広家・・・沢村一樹
ふう、気が済みました。
それにしても徳川に付く動機付けがイマイチ弱いですね。2~3週このネタで引っ張った挙句、案外アッサリと「家のため」とのたまって徳川方へ。肩透かしを喰らった気分です。結局、口では格好良い事を言っていましたが、ただの優柔不断だったということですね。でも、これで全て、千代の思惑通りに事が運びましたね。良かったね、千代ちゃん

次週、いよいよ関ヶ原へ。
千代が危機に晒されていましたが、さてどう切り抜ける!?

(お詫び)
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22 コメント

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おお!! (てれすどん2号)
2006-10-22 22:33:46
今回の琉河さんの記事は読み応えがあります!僕も先々週あたりから、光成のカリスマ性を感じたりしてたんですが、それは俳優さんのおかげなのかもしれませんね(笑)結局主人公の行動がすべて正しい、、、って感じられてしまうのが悲しくもありますが。
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付き合ってくれてありがとうございます! (琉河岬)
2006-10-22 23:24:43
てれすどんさん、こんばんは!



長々と書いた文章を読んでくれて、本当にありがとう!感謝です



今回、三成のシーンは少なかったのですが、「三成の敵が増えたのは確かです。」ガラシャにまつわる細川家の一件はそれが目に見えて出た結果に過ぎないと思うのです。見えないところで、三成憎しの声は上がっています。来週から再来週にかけて三成の動向が気になるところです。



あっ、ガラシャの話はすっかり忘れてましたよ・・・。
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あはは (もちきち)
2006-10-23 00:26:36
玉木宏が出てくると、みなさんすぐのだめの話に

なっちゃいますね~。

嶋田久作の小笠原、迫力があってかっこよかったです。

出番が少なかったのは残念ですが。
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おはようゴザイマス♪ (bluestar1719)
2006-10-23 08:08:20
cocktail-lightのbluestar1719です。

いつもありがとうございます。

(楽天→gooもダメですが逆もダメでし

たか・・)



>人格が破綻しています

でも忠興、利休の高弟で、

「利休七哲」の一人なんだけどなぁ

奥様に関してだけは嫉妬の塊の別人か

イメージ暴落ですなぁ・・(苦笑)



http://tb.plaza.rakuten.co.jp/bluestar1719/diary/200610220001/20ca1/



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同感です! (ぱるぷんて海の家)
2006-10-23 11:55:43
こんちはです

石田三成の描写方法についてのご意見同感です。

豊臣政権の維持面白いですね、なるほどと思います。



>代官が石橋蓮司

イイですね、サイコーです!

六平太が助けるより代官が情を感じて助ける。でもそうなると六平太の出番が無くなる?

楽しい記事面白く読ませていただきました。

これからもよろしくです。
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こんにちは~^^ (のの雪)
2006-10-23 14:45:03
一豊さま。。やっと決断。。

ホント長かったですねぇ

全て、千代の思惑通り・・・

操縦しやすいヒトですよね。。

一豊さまって。。
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こんにちは! (さくらこ)
2006-10-23 15:45:30
豊臣政権を維持するためには、という仮説が面白いですね。

やはり、家康がいる限り、だめなんですね。

秀次やその子供たちがいてもだめだったかな、というのは、この二人が顔を合わせた時の雰囲気で感じたのですが、誰も家康の器の大きさには敵わないんですね。

切り札が織田の血を受け継ぐ、茶々。

でも秀吉は市のこともあって、その辺も難しい所ですね。



三成を演じている方が、とても好感の持てる雰囲気があるので、なかなか三成が悪者扱いされる、と言う感じに馴染めなくて。



康豊は、このドラマではまともな役のはずだったんですけどね~・・、ちょっと歯車が狂ってきてるかな~・・・。
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>功名が辻 (ねねむ唐象)
2006-10-23 22:06:21
記事を読ませていただきました。良いかなと思うところもあり、あれと思うところもありと楽しいです。

>三成のいう「義」

 半分納得です。理由は記事にある特別編を見てください。



>忠興が一緒にガラシャを籠に乗せて、戦場へ連れて行き、彼女専用のスペースを陣中に確保しておけば済む話だったんですけどね。

 確かに一理あります。が、ねねむは根本的な欠陥があると思ってます。これは次回の特別編で上手くまとめるつもりです。良ければ読んでコメントでもください。(うわーせかしてるナァ)



>「命を救われた恩義がある」

 一豊、見事です。腹蔵なく虚心に打ち明けてこそ武将です。

>今度は秀吉はどうすれば良かったのか、考えて見ました。

 家康脅威論ですね。これも次回で書いてみるつもりです。

 

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ガラシャカンタービレ (琉河岬)
2006-10-23 22:48:35
もちきちさん、こんばんは!



これは、もう私の中ではお約束のネタといったところです。

玉木さんにヒゲは似合わないなぁと感じた回でもありました。嶋田久作さんは、大谷刑部とかクセのある役を演じて欲しかったです。
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一途な愛とも言えなくは無い!? (琉河岬)
2006-10-23 22:52:27
bluestar1719さん、こんばんは!



おっしゃる通り、細川忠興は武勇だけでなく風雅を愛する文化人としても有名な優れた人物だったんですよね。ガラシャに対する偏執的な愛ばかりが目立ってしまって、損なイメージを持たれてしまってますね。
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