キャストの豪華さは半端なかったです。これほど見応えのあるクレジットは久々に見ました。
で、内容ですが、渡辺謙さんの声が良かった。
渡辺謙さんは今後もドキュメンタリーのナレーションを続けて欲しいと思います。小難しいストーリーによく合う声質だと感じました。
全13回、本当に素晴らしい司馬遼太郎の価値観に基づくドキュメンタリー再現ドラマでした。
「天地人」「江」と続けば(「龍馬伝」は坂本龍馬はちょっとアレな奴だ!という設定だと考えればOK)、歴史好きの方は物語が面白いか、面白くないかに限らず評価せざるを得ない作品なわけです。
というわけで歴史を勉強し直す機会をくれた作品として評価したいです。
でも全体的に退屈でした。戦争シーンは目玉でもあるので、面白いのは当たり前でここは敢えて褒めるところではないでしょう。
分かり易い伏線を貼り、見事な演出で回収するとか、そういう試みも欲しかったですね。題材的に難しいかもしれませんが、実例を挙げると次のシーン。
二〇三高地で児玉が乃木の指揮権に介入するシーン。あの少年時代のエピソードは児玉が乃木邸に訪れ日露戦争への動員を促すシーンに使ってもいいんじゃなかろうか。そうすれば、伏線として残り、指揮権介入シーンも「後付け設定」みたいな描写は避けられたと思う。確かに児玉が乃木を迎えに行くシーンは見応えがりましたが、それは旅順攻略における乃木と児玉の関係があればこそ見応えが出るわけで、何の予備知識を持ってない人が見たら「あ、高橋英樹がドラマに出てる」ぐらいの印象しかないでしょう。
後は、分かり易い「やられ役」。立場的に悪役っぽいキャラもいると面白いでしょう。
例えば、日清戦争、そして日本がロシアと対立する遠因にもなった閔妃の活躍!
こいつが出てこないと面白みに欠けます。
琉河が考えたキャストはこうです。
閔妃・・・キム・テヒ
三浦梧楼・・・高岡蒼佑
高宗・・・岡田准一(友情出演)
どうでしょうか。そして閔妃が暗殺されたときは親露派の人民にあの泣き方(注1)をさせれば完璧です。
ここまでやると「坂の上の雲」が原作じゃなくてもいい気がしますが。
原作と言えば、日本の未来を憂う悲観的観測で終わるところを外したのは正解だったと思います。
欲を言えば「明治以降に活躍した長州人は役立たずばっかり!でも伊藤博文だけはちょっとだけ評価してやる!」という御大の得意な描き方ももう少し払拭してくれると良かったのですが。
通年大河ドラマにはない躍動感、その時代の価値観を感じさせるリアリティを描き切ったのは確かだと思いますので、視聴率を気にせず次にトライしてくださいね。
(注1)ひざまついて地面をたたきながら泣く。