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都市を眺める (8) - 神戸港

2010-04-20 | 近畿

吉田初三郎は、1884(明治17)年、京都市中京区に生まれた。

幼い頃から絵が好きで、教科書に記された円山応挙が一匹の野猿を描くまでの苦心談に感動し、10歳で友禅図案絵師へ奉公。

日露戦争従軍後、関西美術院で洋画を学び、鹿子木孟郎(かのこぎ・たけしろう)に入門、洋画家を志すが、その後「洋画界のためにポスターや壁画や広告図案を描く大衆画家となれ」との師の勧めにより商業美術家に転じる。
日本中の名所図絵を描くことを決意する。

1913(大正2)年、京阪電車の太田社長の依頼で沿線案内図『京阪電車御案内』を描く。
大阪商船(現三井商船)、別府町などが相次いで鳥瞰図の製作を依頼。別府で亀の井ホテルを創業、“民衆外務大臣”の異名を取る油屋熊八と親交を深める。

1914(大正3)年、『京阪電車御案内』が、学習院普通科の修学旅行で男山八幡宮を訪れた皇太子(のちの昭和天皇)から、「これはきれいでわかりやすい。東京に持ちかえって学友にわかちたい」と賞賛を受けたことから、全国各地の電車沿線図・名所案内・絵葉書・切符・ポスターなど精力的に製作をおこなうようになり、初三郎人気は高まる。

描いた鳥瞰図は1600点以上とされている。





神戸が開港したのは1867年末。

初三郎は、『神戸市交通名所鳥瞰図絵』(1930神戸市電気局)で、六甲山脈を背に東西に延びる神戸市街を瀬戸内海側より描く。
旧外国人居留地付近の建物群、税関、ホテル、倉庫、検査所、メリケン波止場、行き交う船等の情報を克明に記した。