上空から見下ろした風景なぞ、航空写真や“グーグルアース”などで、いつでも見たい場所が眺められる現代であるが、江戸時代、あたかも飛行機に乗って撮影したかのように、はるか上空から江戸の都市を俯瞰した絵がある。
『江戸一目図屏風』である。
深川上空辺りから、隅田川、江戸城を西の方角に眺め、遠くには富士山の姿を望んでいる。この作品は、1809(文化6)年、江戸で制作され、津山城内の座敷の襖絵として仕立てられたとされている。
従来の「洛中洛外図」や「江戸名所図屏風」などのような、伝統的な大和絵の俯瞰図法に基づく都市景観図とは異なり、西洋から伝わった一点透視図法を巧みに取り入れ、リアルな視点で江戸の都市を描いているのが特徴である。
合理的な思想に目覚めていった江戸時代後期の人々の精神を反映した、新たなる都市図として位置付けることができる重要な作品である。