ROSE POSYのハンドクラフト・ブログ

”手仕事”の楽しさをお伝えできればと思います。ROSE POSYオリジナル作品もどうぞお楽しみ下さい。

工具屋さんに学べ!

2008年06月28日 | ジュエリー作品&試作品
今日のお題は、「情報」についてとりとめもなく・・・・。

宝飾業界で若い頃から修練を積んでいない、あるいは現在宝飾業界に身をおいてない、まさに私のような人々にとっては、この業界は趣味から一歩先に踏み込もうとすると、非常に厳しい世界に感じられます。というか、かなり閉鎖的・排他的な雰囲気すらあります。

なぜ閉鎖的かというと、情報が流通していないからなのです。たとえば、宝飾業界とは真逆の、急速に成長し続けるIT業界では情報公開が基本です。誰かが開発したソフトウエアやそのソースコードが無料で公開され誰でもそれが使えたり、ネットでの技術情報の交換も盛んです。情報を共有することでみんなで切磋琢磨して技術が高まっていき、IT業界全体が成長しているといえます。

若い人たちはどんどん新しい技術をそうした情報から吸収して、ひとりでプロになっていきます。困ったときはネット上の仲間が助けてくれます。そういう環境が整っているので、この世界では熟練した先輩職人が口移しで教えるような文化はありません。なので、まったく違う業界からSEやプログラマーやWebデザイナーに転身する人や、起業してSOHOで稼いでいる人も非常に多いし、異業種の企業がどんどんIT業界に参入することもできるのです。ヒルズ族とか、IT長者と呼ばれる若者が次々出現しているのも、IT業界ならではの特徴です。
AppleやMicrosoft、Googleといった今をときめく会社も最初は数人で始めた会社ですものね。

一方、遠目で垣間見る宝飾業界とは、みんなが稼ごうと必死にもがいているのに、誰もがあまり儲かっていない、なんとなく冴えない感じにみえます。(間違ってますでしょうか?あくまで印象なのですが・・・)御徒町の”ジュエリータウン”を歩いてみても、他の問屋街と違ってなんか敷居が高いというか、一種独特の排他感からか活気がないというか陰気臭い感じがあります。成熟した、を超えて、枯れちゃった?という雰囲気さえあります。

この2つの対照的な業界の決定的な違いは、業界全体が情報に対して、”オープン”か、”クローズド”か、にあると私は思います。



幸い、現在わたしがお世話になっている学校の先生はとてもオープンマインドで、親身になってさまざまな情報を開示してくださいますが、学校によってはそうではないという話を良く聞きます。たとえば、ある学校では、先生が個人で普段使っているキャスト屋さんを聞いたのに教えてくれなかったそうです。学校の出入り業者とのしがらみがあるんでしょうね。

学校ですらこうした体質では、生徒さんは卒業しても路頭に迷ってしまうのではないでしょうか?

  

しかし、何でも相談できる先生がいる恵まれた環境にある私ですら、学校を離れたらまた元通り”ひとりぼっち”になってしまいます。
ひとりで独学していた頃を思い出すと、うら寂しくなります。
そういえば、独学していた時は、制作過程で疑問に思ったことを工具屋さんに行ったついでに店員さんにいろいろと質問していました。

工具屋さんには、ジュエリー制作に関するいろいろな情報の宝庫です。メーカーや卸売り店や、エンドユーザであるプロの職人さんや、同業者の横のつながりで、宝飾技術に関するいろんな情報が集まってくるのです。それに自分のお店のものを売りたいですから、一生懸命親切に教えてくれます。業界の横のつながりが強いので、自分のところで取り扱っていないものやサービスは、他の店を紹介してくれたりもしてくれます。

彼らにとって出して不利になるような情報はないといってもいいでしょう。店のスタッフの方々は、自分では造りはやらなくても、職人さんからいろいろ情報を得て耳年増になっていることが多く、いろいろな”ソリューション”を提示してくれます。

私は工具屋さんで見たこともないいろんな工具を眺めるのが大好きで、つい長居をするのですが、向こうもこちらの存在が気になるのか、”わからないことがあったらなんでも聞いてくださいね”のひとことに、これ幸いと怒涛のごとく、「コレは何?」「コレは何するもの?」と聞きまくります。”へぇ、こんな便利な工具もあるんだ”、と今まで知らなかった工具のバリエーションを増やしていくことができます。

ジュエリーの制作過程で困ったことの多くは工具で解決できることが多く、とりあえず困ったら相談してみることです。ダメモトですから。店員さんもわからないともっと分かる人に取り次いでくれたりします。これはネットショップでも同様ですね。返事が遅いと思ったら、知り合いの職人さんに聞きまわってくれていた、ということがありました。
そんなわけで、工具屋さんは、わたしにとっては、唯一の開かれた場所であり、”第二の師匠”といってもいいかもしれません。
御徒町の中でも、一見さんにも優しいのは工具屋さんくらいですしね。(^^;;;

  

それにしても、私が社会人を対象にしたスクールに今後期待したいこととしては、”サロン”の機能を持っていただきたいのです。ジュエリーCADは日々進歩しているので、カリキュラムが終わったら、はいサヨナラ、ではなく、最新のアップデート情報を得られるような、そんなサポートの場を提供していただきたいと願っています。

たとえば、ソフトのバージョンが上がったら、新機能を使ったデモ説明会だとかチュートリアルなどのスポット講座をぜひ開催してほしいです。遠方からはるばる通っていた生徒さんのために、メルマガ会員サービスで情報提供というアイデアもいいかもしれません。もちろん、タダとはいいません。”情報=金なり”、ですから。

「うちの生徒である間は教えるけど、卒業したら知らない」、では、せっかく学んだ人たちも、”ついていけない”といずれ離れていってしまい、結局ジュエリーCADは業界に根付かなくなってしまうと思います。ネット時代の今の若い人は移り気だし、情報が共有できないクローズドな世界を嫌いますから・・・。

一般的にソフトウエアテクノロジーの世界では、新しい技術が根付くためには、最初に学んだ”勇敢な”人たちがさらに継続的に最新の技術レベルを保ちながらガンガン使いたおせる環境が必要であり、学校やメーカーがこれらの”先陣部隊”を懇ろにサポートすればよく、あとはこの先陣部隊の人たちが”伝道師(エバンジェリスト)”としてこれから学ぶ後発の人たちにどんどんネットで情報を送って援助し、底上げしてくれるので、早く裾野が広がって定着していきます。オープンな世界では、最初はマイナーな技術も、こうして大きく成長していきます。

そんなわけで、ジュエリーCADは立派な”IT”ですから、開発メーカーもスクールも、むしろ”俺達はIT業界なんだ!”的な気持ちをもっていただいて、「オープン・マインド」で、最新情報とサポートを惜しみなく提供していっていただきたいものです。
わたしたちも、後から学ぶ人たちのお役に立てるよう頑張りますので、どうかよろしくお願いします。

ただし、”よしよし流行ってきたぞ。自分達だけが儲かるようにしよう”などと情報を囲い込んでいると、やっぱりいつか廃れる時が来ると思います。そうならないことを祈ります。

以上、またしてもROSEの意見でした。えらそうにすいません。