ROSE POSYのハンドクラフト・ブログ

”手仕事”の楽しさをお伝えできればと思います。ROSE POSYオリジナル作品もどうぞお楽しみ下さい。

ジュエリーCAD 独学?スクール?

2008年06月24日 | ジュエリーよもやま話
今日はちょっと、ジュエリーCADのマジメなお話。これからジュエリーCADを学ぼうかな、と思っている人へのメッセージです。

最近、私のブログに検索エンジン経由で訪問してくださった方から、ご質問をいただきました。

それは、”(ジュエリーCADを学ぶのに、)独学と教室通いのどちらが良いでしょうか?”というご質問です。

こちらの方はこれからラヴァーグ・ジュエリースクールの体験コースに行かれる予定とのことで、おそらくそこでご自身なりの答えが見つかると思います。

私の場合は、ジュエリーCADなるものを知って、いきなり教室に飛び込みましたので、独学と比較することはできませんが、教室で一通り学んでみた感想としましては、やはり最初から独学では厳しかったと思います。以下は、あくまでも私個人の感想ですし、ライノセラス+ジュエリープラグイン、に限ってのお話とさせてください。(それしか知らないので、他のソフトはその道の方にお任せします)

  

質問された方は、”これからデザインを習うなら、CADにしたほうがいい。”と言われたとのことだそうですが、目的はデザイン(描画)するだけでしょうか、それとも原型の造形(モデリング)までやりたいのでしょうか?もし、デザイン画だけでよいなら、CADである必要はなく、イラストレータや市販の安価な3DCGツールで十分かと思います。その場合は、市販の本もいろいろ出ていますし、ネットにも情報がたくさんありますから独学でも十分だと思います。後者の、造形まで行いたい場合は、汎用CADまたはジュエリーCADが必要になります。

ジュエリーCADは、宝石業界の人が使うことを前提にしているので、ジュエリーの製作に必要な操作が簡略化され、CADの知識がほとんどなくてもいちおう使えるようにはなっていますので、いったんそれらの操作を覚えてしまえば、汎用CADを使って作るよりは断然ラクなことはラクです。(しかし簡単とは言い難いです。)

しかし、世の中に広く流通して何万人が使っているソフトウエアとは違って、こうしたジュエリーCADのようなニッチな専用ソフトは、ステップbyステップで独習できる親切な自習テキストといったものはついていませんし、本屋で市販もされていません。せいぜい、あってもユーザマニュアル(操作解説書)が関の山かと思います。

初心者に与えられる情報が少ないということは、きちんと体系だって学ぶためには開発メーカー自身やソフトの販売代理店が提供する講習や、ラヴァーグのような専門の学校で習得するしかありません。独学だとかなりの回り道をすることになるのではと思います。

   

でも、絶対に独学は無理なのか?というとそれはわかりません。
根性と根気と力技とセンスで独学して習得に成功している方もいるでしょう。現在、ジュエリーCADを教えている先生はおそらく日本では数少ない草分け的存在だと思いますが、最初は周囲に先輩も先生もいない状態からはじめられたわけですから、まさに独学で人並みならぬ大変な時間と努力と苦労と失敗を積み重ねて、今、人に教えられる立場にあるのだと私は想像しています。

先生達はそうして自らの経験の中からソフトウエアの最適な使い方をマスターされた結果として、初心者でもわかりやすいコーステキストをオリジナルで開発されているわけで、そのテキストそのものが”ノウハウ”であり、学校に行く意義の半分はこのテキストをいただくことにあるといってもいいかもしれません。あとの半分は、先生のもっている”情報”を得ることですね。口伝えでないと知りえない貴重な情報をたくさん頂戴することができます。それが学校の”付加価値”だと思います。

   

私の通っているスクールでは、講義形式ではなく基本的にそのテキストを見ながら黙々と書いてあるとおりの操作を個々のペースで習得していくので、独習といえば独習なわけですが、そうした操作について、”どうして○○するのか”、”どうして○○してはいけないのか”といった原理は、マンツーマンでの先生の説明によって理解する次第です。

また、やっているうちに予測不可能なトラブルに見舞われたときにも、先生に解決方法を伝授してもらえます。また、作品を作ってみて失敗したときは、どうしてそうなったのか、先生に原因と対策について教えを乞うことが出来ます。

ジュエリーCADの場合は、ジュエリー製作とCADの知識の両方を熟知していないと、”作品”なり”製品”として成立するデータを作ることができないので、ジュエリーCADで製品・作品の製作経験豊富な先生に教わるのがもっとも上達の早道だと思います。

わからないことがあったら、何でも先生に聞いちゃえばいいですものね。困ったときに相談できる人がいるのは心強いものです。独学だったら、わからなかったら、即、”行き止まり”です。質問のやり場がありません。私も、ひととおりカリキュラムは終了していますが、自宅でやっていてしょっちゅう途中でわけがわからなくなるので、学校にすっ飛んでいって先生を捉まえて質問攻めにしています。

   

ユーザ数が多いソフトなら、コミュニティなり専用掲示板なりがあって、お互いに質問・相談しあって自助解決しあうことも出来ましょうが、なにせジュエリーCADはまだまだ利用者が少ないし、いろいろな種類のソフトがあって、少ないユーザがさらに枝分かれしており、そうしたユーザ同士の技術サポートの環境がまだまだ育っていない状況です。


   

私は学校に行っていてもなお、行き詰りそうな不安があります。
ソフトウエアは当然ながらどんどんバージョンアップしてしまいますし、教える先生の知識やノウハウもアップデートしています。先生のところには、CADソフトの開発元や造形機のベンダー、ビューローなどからも次々と更新情報が入ってきます。なので、コース終盤のころになると、ライノセラスがメジャーバージョンアップしていて、ユーザインタフェースが変わってしまったり、もらったテキストにはなかった機能やコマンドが忽然と出現していたり・・・。

そこが、従来の彫金やWAX技法とジュエリーCADの大きな違いです。彫金・WAXは一通り学ぶとあとはひたすら実践してスキル向上あるのみですが、CADの場合は、道具側つまりソフトの技術が日々進歩しているので、より効率の良い方法や便利なコマンドが次々と現れ、”これで終わり”、という線が引けません。知ると知らないでは大違いです。1時間かかって作っていたものが、新しいコマンドが1つ増えただけで10分で出来てしまうようになる世界なのです。

新しくはじめた人のほうが当然、最新の情報を教えてもらえるわけで、うらやましいわけですが、そうしたギャップとハンディを埋める意味でも、自分自身を”最新の状態”に保つために学校での情報収集は重要であり、先生とは”長く細いパイプライン”でつながっている必要を感じています。

長々と書いてしまいましたが、

 結論 

しなくてもよい苦労をする分の時間の節約をしたい方、早く上達したい方は、やはりスクールに行くことを私はお勧めします。

ソフトウエアや学校は、どれが自分に合っているかは人それぞれと思います。ジュエリーCADの総合サイトというのがありますので、一通り眺めて検討してみてはいかがでしょう。ジュエリーCADを教えてくれる学校に体験講座や説明会があればどんどんトライしてみるといいかもしれません。

以上が、ROSE POSYの意見でした。