ROSE POSYのハンドクラフト・ブログ

”手仕事”の楽しさをお伝えできればと思います。ROSE POSYオリジナル作品もどうぞお楽しみ下さい。

展示会詐欺

2008年03月02日 | ジュエリーよもやま話
今日はちょっとおっかないお話です。

あるジュエリー作家の方が大変な目にあったエピソードです。知人からのまた聞きなので正確ではないかもしれません。

しかし、この手の話を聞くのはこれが実は2人目なのです。1人目は数年前に直接、被害に遭ったご本人から聞きました。2人目の話があまりにも状況が似ており、二人とも個人で経営している作家さんであるということ、”展示会”というキーワードという共通点があったので、まさかと思いました。
 
  

被害に遭ったデザイナーさんは、自営のアトリエで企画デザインから制作まで手がけている男性です。量産系ではなく、一点物のフルオーダーを中心に活動していらっしゃいます。この男性を仮にAさんとします。このAさんに、ある日、ジュエリー小売会社のバイヤーと名乗る人から連絡があり、いきなりまくしたてました。

「わが社のお客様は、ほぼ9割がリピート顧客ですので、デザインにうるさい人が多いのです。デパートに売っているような、ちょっとやそっとの平凡なデザインのジュエリーではお客様の御眼鏡にかないません。A先生は、まさに私どもが長年探していたデザイナーさんなのです。Aさんの作品を是非わが社でも販売させていただきたいのです。ぜひ一度お会いできませんでしょうか?」

「なぜ、僕の作品や連絡先を知っているのですか?」

「実は、身分を隠して、先生の個展を拝見しました。もう一目惚れしてしまいました。日本ジュウリーデザイナー協会の会員名簿にも掲載されていらっしゃるので、先生なら間違いないと確信した次第です。ぶしつけで大変申し訳ありません。」

さっそくAさんは、その方に誠意を感じて直接会うことにしました。会ってみると、相手は若い女性で、しかも美人。ジュエリーや業界の知識が豊富で、疑う余地がないほどだったそうです。

その女性は、会社の紹介の後、「半年後にお得意様だけの特別展示即売会があるので、ぜひそこで先生の新作を発表させてください」と、展示会の招待パンフレットを見せました。Aさんは快諾して詳細な打ち合わせが始まりました。その後はその会社の立派なオフィスの応接室で展示品の企画について、念入りなミーティングが数回行われたそうです。

Aさんは半年後に開かれる展示会のために、他の仕事をすべて断って、渾身の力を込めて展示会用の15点ほどの作品を制作し、その会社に納品しました。もちろん事務所に直接行って納めたそうです。

納品後、Aさんは、たまっていた仕事をやっつけなければならないので、展示会には行きませんでした。

ところが・・・・

展示会が終わり、数日を過ぎても、担当者から連絡がありません。Aさんは不安になって、担当者の携帯と会社に電話で連絡を取ってみた所、いずれも
 
「この電話番号は現在使われておりません。」・・・・・。

嫌な予感がしたAさんは事務所に直接行ってみました。事務所の看板はなくなっており、もぬけの殻になっていました。まさか・・・・。
あとは皆さんのご想像どおりです。

もし、Aさんが展示会場に見に行っていたとしても、気づくのが早いか遅いかの違いだけだったでしょう。

会社がいったん作品をお預かりし、売れた分の代金を後日支払う約束になっていました。売れ残った分は相談の上、会社が買い取るか、返品するか決めるということになっていたそうです。もちろん委託販売の契約書類、預り証、展示品の明細票も発行されましたが、架空の会社では、ただの紙くずです。

その展示会は”富裕層が対象”、との触れ込みだったため、もちろん制作したのは、高級ジュエリーで、高価な宝石代や地金代も貯金を使い果たしての持ち出しです。個人経営なのに、あまりにも痛すぎます。



偽装のオフィスを借りたり、会社案内や展示会の招待状(それには過去の展示会の盛況な様子まで写真に載っていた。)まで作ったりして、これは単独ではなく組織犯でしょう。

どんな詐欺罪でも同じことがいえますが、”向こうから来た美味しい話には気をつけろ”、ということしかないですね。・・・というか、そんな高額商品の委託販売は危険すぎます。いったん全部買い取ってもらい、売れなかった分を返金・返品する、それなら被害が食い止められたでしょう。(ごめんなさい、私、宝飾の販売はまるでシロウトですんで、業界のジョウシキをしりません。)