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バウハウス・デッサウ展(東京藝術大学大学美術館)

2008-06-15 14:19:42 | Weblog

 戸外は晴れて梅雨の合間のよい天気。藝大大学美術館のバウハウス・デッサウ展は盛況だった。 

                                            

 第1部:バウハウスとその時代。まずヴァルター・グロピウスの「ヴァイマール国立バウハウス宣言書」(1919)がワイマール共和国の息吹を感じさせた。「あらゆる造形活動の最終目標は建築である」との言葉が、バウハウスがヨーロッパ宮殿建築史の末裔であることを示す。

                                                         

 カンディンスキー、パウル・クレーの影響下に製作されたカール・ヘルマン・ハウプト「赤い人物」(1925):この水彩は画面中の赤い人物が題名の通り印象的。

 バウハウス・ワイマール金属工房製作「テーブルランプMT9ME1」(1923-24)はガラスとスティールからなりモダンで今、照明器具店で売っていてもおかしくない。このタイプの照明はバウハウス・ランプと呼ばれる。 

                                           

 1920年に起きた軍人のクーデター事件の後、ヴァルター・グロピウス「3月の犠牲者のための記念碑:試作モデル」(1920-22)が製作され公募入選する。これに基づき記念碑が建設される。その後、ナチス政権による退廃芸術との烙印のもとでのその破壊、また戦後の再建の歴史はワイマール共和国以後の過酷な歴史を思い起こさせる。

 ここまでが地下2階の展示である。 

 エレベーターで3階に移動すると、第2部:デッサウのバウハウスの展示である。デッサウ市は社会民主党政権のもとにありバウハウスの最盛期がここで現出した。(1924年にデッサウに移転。)

                                           

 「ヨ-ゼフ・アルバースの予備課程での演習」:「素材研究」に関する諸作品(1926-27頃)は興味深い。紙・ブリキ・真鍮板・ダンボールなどの素材がある。

 「ヴァシリー・カンディンスキーの授業」:「色彩論」などの中での生徒の諸作品(1926-29)は彼の理論重視の姿勢を示す。これと対照的に「パウル・クレーの授業」の諸作品(1927-28)は柔軟・自由な雰囲気である。 

 「ヨースト・シュミットの造形工房」:「直線と円(棒と環)から回転を通して双曲面体、球体などへ」と名づけられた実験装置(1930)は面白い。

 アウグスト・アガツ「裸体習作:オスカー・シュレンマーの裸体素描授業での演習」(1927)は“本質を見つめよ”との師の言葉への忠実さを示し迫力がある。

 デザイン:マリアンネ・ブラント「2層ガラス球の吊り照明ME94、デッサウ校舎の照明器具」(1926)がモダン。 

                                          

 何枚かの写真作品(1928-33頃)は当時のドイツ社会またバウハウスの学生たちの日常を垣間見せ、新鮮である。特に「バウハウスの食堂にて」(1932)は意図的に風変わりな構図を採用し時代の気分がよく出ている。 

 圧倒するのが舞台関係映像。オスカー・シュレンマー「トリアディック・バレー」(1922、再構成1969-70)、クルト・シュミット、ゲオルグ・テルチャー「メカニカル・バレエ」(1923、再構成1988)、ラスロ・モホイ=ナジ「メカニック・エキセントリック」(1924、再構成1988)、オスカー・シュレンマー「バウハウスダンス」(再構成1993)。いずれも不思議な感じのダンスである。魅力的で見ていて飽きない。 

 バウハウスの家具は現代にそのまま通用する。デザイン:カール・フィーガー「寝室セット:ベッド等」(1927)、デザイン:マルセル・ブロイヤー「裁縫台、バウハウスモデル家具(テルテン集合住宅用)プロトタイプ」(1926-27)、「組テーブルとスツール、モデルti6a,b,c」(1930)など。                       

                                                             

 第3部:バウハウスの建築。ここでは現代建築の原型を発見する。設計(1925-26):ヴァルター・グロピウス「バウハウス・デッサウ校舎:模型」、「デッサウのマイスターハウス」はいずれもデザインがどの方向から見ても均整がとれ美しく印象的である。 

                                          

  バウハウス・デッサウ展は、現代の工業デザイン、建築などの起源を認識させるとともに、若さと創造性に満ちた時代を感じさせ感動的だった。