全員は広間で軽く挨拶を交わし合いつつの立ち話で、現場への出発時刻を八時四十五分とする事とします。
北京を発つ前に今回の“京への緊急質問会”に関して打ち出し済みの総意姿勢、方針は七時半から一時間かけた朝食中に再確認します。
朝食の皿の紋様とは現代と変わりません。
水色の陶石(タイル)詰めの壁が包む朝食の食膳室の椅子と机の上の各自の盆へは、不銹鋼(ふしゅうこう、ステンレス)製のハサミ、紀伊山地最奥の檜製の二十六万価格のシャモジ等が、取り分自在なる量を湛えつつ待つ公家所領の高床なる田で取れし水気と糖度の高いうるち米、具は若狭湾の公家向けの養殖浅瀬で取れたワカメと小海老、京産の豆腐入りの京産赤味噌汁、御苑納品標高品質の京産の沢庵、京産のキュウリと壬生菜(みぶな)の西利漬け、山梨産のサクランボ、酵母菌はフランス伝来の正方形の食パン、パリに現存する市場直送のチーズの小切り、材料は全て京産の豚汁、実は喰えた物ではない木の実が収められている寒天を連れていきたがる食道の指示に従います。
無数の紙の器に並び待つ、大きな硝子の急須群には氷混じりの山梨産サクランボと長野産イチゴの六、四飲料、伏見の銘水、パリの市場とオランダのレーネスセ渡来のグランベリーが八、二飲料、伏見の銘水、インドネシア、フィリピン産のバナナが六、四飲料、公家領の風雅風景なる牧草地で採取されし、現在東京駅近隣の高級旅館納入なる味と酷似の牛乳、銘水の氷が入る種菌は金星伝来のヨーグルト、ヨーグルトと牛乳七、三飲料、伏見の銘水の氷水が入っています。
“経験済みの娑(スイ)から既にそうと知るが、改めて贅沢な市(大都市)と今朝は感じる。
特に水と米の味となると、明と清を足した歴史で敵わんと見る。
飲んだなる水とはその質のみならず、時の田の上での品種改良と栽培法のツタに絡んで咲く花を煎じた薬の筈だ。
いつの時代のどんな学者の知恵が実現したのだ。”
国外で自ら念入りに生やすとなった詰問事の表情は、自国にとって凶相事の親の雌雄(しゆう)の花のみを好みゆくなるツタ絡みの茎の種と知る一団は、この機の京の代表との対面に向けての姿勢、方針の再確認を談笑ながらに済ませます。
“穏便な笑顔でご不満への理、御開示の時をお待ちしていく事としよう。
面会経緯の起点、高麗滞在にあった京の公家への事前合意無しの路上物売り依頼については苦笑いの旗のはためかしで逃げるのみとする。
面会許可書面の発行者のご同席を当然想定せざるを得ないこちら側としては、藁売り行商の声を事の起点に混じらせた事による、ご高潔な筆並び(日々の執務理性)乱しへの辛辣な眼差しについては、こちらを責とする袴の裾踏みの気まずさと、弁解の機探し中との反省めいた佇みで堪える事としよう。”
面会に向かう二十一名にとっては、面会相手へ譲り渡す贈り物の代わりの暖かみのある安心感とは、全員に姿勢、方針の共有漏れは無いとの確信のみです。
一団は八時四十分過ぎに宿を発ったので、京側が書面で指定してきた面会場への全馬車の到着は九時二十分以内に済みました。
面会場の施設の属性とは御苑の分館の立ち位置を帯びたる、常駐者を京随一の能力の忍者組織の頭領とする高床式構造の武家屋敷で、場所は現在の上京(かみぎょう)区の承天閣博物館とその北側の空地を含む一帯に広がっていました。
高床式の二階構造から成るこの施設の、地上から二・二米の高さにある二階への入り口へは、出雲大社(いずもたいしゃ)の想像模型と似つつ傾斜の低い檜(ひのき)造りの地面への支柱の無い階段が長く延びています。
出雲大社想像模型
壁が無い一階部分に無数に並び立つ五米の高さの百入茶(ももしおちゃ)色のフランス地下製の合成金属の柱の地面には、灰色の石畳と白雪(しらゆき)が四角、三角と交互に忙しく幾何学模様状に敷き詰められており、これらとは訪問者の意識の床、気圧(けお)されるなら視界では穴抜ける意図らしき壁を選び、“我ら有りゆきたる時、無言の蔑視先とは無意味な朴訥さ也”と、詠唱してくるなる無言の印契(いんげい)です。
(百入茶、https://www.colordic.org/colorsample/2381.html)、(白雪、日本庭園に撒かれる小石素材名)
二階部分の外壁全面には同じく百入茶色で、両面双方からの視野情報の透過性は無い事は判別しない金星産の硝子が高さ四米の当該階天井まで張られており、等間隔置きに交互に並ぶ大小の丸太状の檜との折衷(せっちゅう)装束の相は、二階建てとの低層外装を控えめさとの口実としつつの前衛的な新築神殿への進取の雰囲気を京で隠そうとする意匠を一切見せず、建築権力の脊髄の根とは皇族及びあらゆる公家意思の無視の下の生育たるねおの水道管と同質であり、外星人との交際、無意思殿でした。(折衷、良い点を一つにまとめる事)
施設の内部広域には巨大な祭壇を擁する拝殿の間が居座っており、博物館の雰囲気を宿している、参拝を待つ者が詰める参集殿の各所の硝子張りの日本庭園や池では鯉、孔雀、海亀、鶴、トキ、原産地の大陸では絶えている猛禽類“凌(りょう)”、月で遺伝子操作されし尻尾が異常に太くリス振る舞いの灰色の毛の小猿、同じく首が異常に伸びる亀、翼の代わりに赤、橙(だいだい)色の派手な色の複数の力こぶが埋まる横暴補食衝動を叱責されし巨大な鶏が自然万象の具象役として外敵脅威を知らぬ自由をついばむ神惟(かんながら)の時を過ごしています。(凌、古語表記、漆黒と純白の羽を持つ、顔は鶏の鷲の大きさの異常な狂暴性を宿す鳥)、(神惟、自然万象を歯向かうべきではない至高の存在と捉える者が、その信条の下で太しめし魂、意識総体を自然万象と共にあるとする日々の中、真剣な陶酔と共に放り投げ気味に振らす、感慨を集める人間の在り様)
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