無風老人の日記

価値観が多様化し、自分の価値判断を見失った人たちへ
正しい判断や行動をするための「ものの見方・考え方」を身につけよう。

本当の「現実」とは何か

2008年02月12日 | Weblog
今日の言葉

◎自由を放棄することは、人間としての資格を放棄することである。
 人間としての権利を放棄することである。
 すべてを放棄する人にとっては、いかなる補償もありえない。(ルソー)

先ずは、下記の記事を読んでもらいたい。

【主張】岩国市長選 現実的な判断が下された(産経新聞)2008.2.11

在日米軍再編に伴う米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転問題を争点とする山口県岩国市の出直し選挙が投開票され、受け入れを容認する前自民党衆院議員の福田良彦氏が当選した。

在日米軍再編は日米同盟の維持に不可欠なものだ。

岩国市民がようやく現実的な判断を下したといえる。

艦載機移転問題で市民の意向を聞くのは3回目である。そもそもこの移転は一昨年5月、日米両政府が合意した米軍再編に関する最終報告書に盛り込まれた。住宅密集地での騒音が問題化していた米軍厚木基地の空母艦載機59機の拠点を岩国基地に移す計画だ。岩国基地では滑走路の沖合移設が平成20年度に完了することから、防衛省は艦載機移転に伴う騒音は現状より軽減されると説明していた。

だが今回敗れた井原勝介前市長はこの移転に反対し、一昨年3月自らの発議で住民投票を実施、反対が投票者の87%を占めた。
翌月の市長選も計画撤回を訴えた井原氏が圧勝した。

これに対し、国は移転反対を理由に新市庁舎の補助金35億円の支給を見送った。

(無風注:「支給を見送った」とは本質を誤魔化した表現、「今まで基地関係の受容れに対し出していた補助金を打ち切った」のである。今回の移転受容れとは別の補助金。受容れなければ今まで出していた補助金をストップし、受容れれば更に100億円出す、といった権力者のやり方は“キタナイ”としか言いようが無い。)

市側は財源に合併特例債を充てた予算案を提出したが、今度は受け入れ派が多数の市議会が4回否決し、井原市長は辞職して選挙となった。

日米安保体制を円滑かつ実効的に運用するには基地を抱える地元の理解は欠かせない。
政府は関連自治体に対する政策的配慮に加え、これまで以上に丁寧な説明責任を果たすべきだ。

見据えてほしいのは、日本が置かれた安全保障環境である。

日本は、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルの脅威に直接さらされている。
北の核廃棄を目指す6カ国協議では昨年10月「核計画の完全申告」と「核施設の無能力化」の年内実施を共同文書に盛り込んだが、北朝鮮はいまだに履行していない。
中国の軍事力強化も着々だ。9日にはロシア空軍の爆撃機が伊豆諸島南部を領空侵犯した。

冷戦構造が厳然と残る北東アジアで、日本の平和と安全を確保するには日米安保体制を強化しなくてはならない。国の守りについては自衛隊や米軍だけの問題ではない。国民一人一人が国防の大切さを考え、負担を分かち合うことがなによりも必要だ。岩国市長選をそうした契機にしたい。…記事引用終り

まさに、政府・戦争肯定派の意見を代表している論説なので、全文を載せてみた。

(1)岩国市民がようやく現実的な判断を下した

私が前の日記で書いたように「現実的」=「既成事実に屈服せよ」であり、政府が憲法無視等の悪い既成事実を作っておいて、それに従え!としている。政府の意見代弁新聞である。何が「ようやく(権力に屈服した)」だ! それでもジャーナリストか!

(参考)津久井進の弁護士ノート~2008年1月2日http://tukui.blog55.fc2.com/blog-date-20080102.html

(2)在日米軍再編は日米同盟の維持に不可欠なものだ

天木直人のブログ~2008年2月11日http://www.amakiblog.com/archives/2008/02/11/

上記ブログは、岩国市市長選について書いてあるのだが…。

(引用開始)
■そして日本国民は、ひたすら対米従属を唱えて米国の一方的な軍事要求を呑んでいくという古い体質の政治家・官僚のために、さらに分裂させられていくだろう。

米国自身が変わろうとしている時にである

ただでさえ国民が強者と弱者とに分裂させられている時に、そして、今の日本はこんな問題で対立している時ではないのに、である。

■小泉政権5年半の最大の罪悪は、憲法9条に手をつけることなく憲法9条を否定する政策を既成事実化してしまったことだ。

そして護憲政党はそれを阻止できなかったばかりか、国民を目覚めさせる事ができなかった。

もはや米国にとって改憲はどうでもいい事なのだ。改憲問題は日本が決める事だと突き放している理由がそこにある。米軍再編に日本が協力すればいいだけなのだ。

■真実を語らずに金と力で米軍再編を進めようとする政府に正統性はない。
「基地受け入れは反対だが政府と協議して解決していくなど」という矛盾を繰り返す新市長は、沖縄知事や名護市長の葛藤を繰り返す事になる。

■かつて小泉政治に騙された多くの国民が気づき始めたように、岩国市民も国民も、そのうちに矛盾に気づいて大きく振り子を振り戻す時が来ることになる。

なぜならば、米軍再編を受け入れていく事は、あらゆる意味で間違いであるからだ。

一部の政治家や安全保障問題で生計を立てている人たち、さらには利権目当ての人たちを別にして、多くの善良な国民にとっては米軍再編は一利もないからである。

■痛みを我慢しろという小泉改革は何だったのか。官僚の天下りや利権政治が温存され、大企業や高額所得者の税負担は手つかずのままだ。改革と叫びながら、何の改革もしなかった。できなかった。
した事といえば、民営化といい、競争社会といい、国民生活の犠牲と引き換えに米国の市場原理最優先の競争社会に、日本を「改革」しただけであった。

おかしいと思わなくてはいけない。ついこの間まで世界第二位の経済大国であった日本が、そして勤勉で優秀な日本人が過労死に追いやられるほど働いてきたのに、なぜ国の経済が困窮していったのか。
弱者や老人の面倒を見切れないほど余裕がなくなったのか。

我々が汗水たらして国に納めた税金から「桁違いの金が米国に流れ込んだ」ためだ。

日本を財布代わりに見立てた米国が悪いのではない。日本を属国として占領し続けた米国が悪いのではない。
米国のそのような要求をはねつける事もせず、ひたすら日本国民に犠牲を強いてきたこの国の自公政権こそ糾弾されるべきなのだ。
生活困窮の最大の原因は対米従属外交にある。


■日本国民の生活を優先すべき政府・官僚は、自らの保身の為に対米従属を優先させてきた。米国と交渉する気概をはじめから捨てて、こちらから進んで米国に迎合してきたのだ。

米海兵隊のグアム移転に3兆円の金をつぎ込む。
米国のテロとの戦いの戦場であるアフガン、イラクに政府開発援助をつぎ込む。
紛争地に援助することなどは私が外務省の経済協力担当官のときは考えられなかった事だ。

米国のテロとの戦いに協力するため自衛隊の海外活動を主要業務に格上げし、恒久派遣法をつくろうと急ぐ。
米国の高価な武器を、さらに不当な値段で購入し、役に立たないミサイル迎撃システムを都心の真ん中に配置して訓練する。

どこれもこれも莫大な税金の無駄遣いだ。
それだけの税金でどれだけの老人の人生が救えるか。
薬害犠牲者、被爆犠牲者が救えるか。
年金問題を解決できるか。
増税を避ける事が出来るか。

■在日米軍問題を極左イデオロギーの占有物にしてはならない。
米軍再編に無条件に協力しようとする自公政権の対米従属政策は、日米安保体制の是非をはるかに通り越した、日本の安全保障問題とはまったく関係のない「米国の戦争」に、日本の金と人を差し出すという、誰が考えても間違った政策なのである。

本来ならば日本を愛し、日本の国益追及を最優先する保守、愛国主義者が真っ先に反対すべき問題なのである。

いや立場を超えて、右も左も反対しなければならない問題なのである。

■それにしてもメディアがどうしてこの事を国民に伝えないのか。
反骨精神を忘れたメディア…。…以上引用終り

(3)日本の平和と安全を確保するには日米安保体制を強化しなくてはならない

(天木氏の同上ブログを再び引用)

イラク戦争に反対して外務官僚を棒に振った私は、にわか平和主義者、護憲主義者のごとく、思いを同じくする人たちと一緒に平和の重要性を訴える事になった。

平和はすべての外交に優先されなければならない。

日本の平和を守るには憲法9条を変えてはいけない。

憲法9条を世界に高らかに掲げる事こそ最強の安全保障政策である。

そう私は確信するに至った。…引用終り

中村哲氏講演会よりhttp://members.jcom.home.ne.jp/katori/nakamuratetsu.html

中村哲(なかむらてつ)氏=医師。国内病院勤務ののち、1984年パキスタン北西辺境州の州都ペシャワールに赴任。以来、20年以上にわたってハンセン病を中心とする医療活動に従事。現在はアフガニスタン北東部の3ヶ所の診療所を中心に、山岳無医村での医療活動を続けている。2000年より、大かんばつに見舞われたアフガニスタンでの水源確保のため、灌漑事業を継続して行なっている。

(中村哲氏の言葉引用)
(実際にアフガニスタンで医療活動・灌漑事業をしていると、憲法9条に「現実的に」守られてきたことを肌身に感じている、として)
中東においては…日本は戦後復興をとげたアジアの国として一種の憧れの対象でした。半世紀に亘り経済的豊かさにも拘らず他国に戦争を仕掛けなかった国、平和の国・日本として親近感を持たれて来ました。…中略…日本人だから命拾いをした、助けてもらった、というのも9条のおかげだと思っています。

それが、自衛隊の海外派兵が始まってから雲行きが怪しくなってきました。

日本人だから守られてきたのに、日本人だから命を狙われる、という妙な事態になってきた。…中略…

よく、理想だけではやっていけない、ちゃんと現実を見なければ、と言いますが、それこそが“平和ボケ”の最たるものです。それは…人の生死の実感を持てない、想像力や理想を欠いた人の言うことです。

現実を言うなら、武器を持ってしまったら必ず人を傷つけ殺すことになるのです。
そして、アフガニスタンやイラクで起こっているような「人が殺し合い、傷つけ合うことの悲惨さ」を少しでも知っていたなら、「武器を持ちたい」などと考えるわけがないのです。

国際貢献したいのなら、いろんなやり方があります。それは本来武力とは何の関係も無い。理論的に考えても「軍隊を以ってする支援」なんてあり得ません。

私はアフガニスタンで灌漑事業を進めていますが、別に軍隊に守られて作業しているわけではありません。
逆に派兵している国は攻撃対象になって、作業は難航している。

一つの例を挙げます。
私達が作業している用水路と平行して、米軍の軍用道路を造っているトルコの団体があります。
それは、兵隊に守られながら工事をしていますが、これも住民の攻撃対象になっています。トルコ人の誘拐・殺害が残念ながら後を絶たない。

現実を知らないから「軍隊に守られるのは危険」とか「軍隊そのものが危険」という認識が持てないのです。

「丸腰の強さ」を、現地にいると実感します。

国家の使命とは「国民を守ること」です。自国の国民を危険にさらし、他国の人の命をも危険にさらすことは、国家の使命と逆行します。…いま日本の評価は中東で「アメリカに原爆を落とされた気の毒な、しかし努力して復興した国」から「アメリカの同盟国(軍)」へと変化しつつあります。…

日米同盟がないと日本は生きのびられない、という言説もきちんと考える必要がありますね。目先の利益だけに捉われると見えるものが見えなくなってしまいます。

国を挙げて錯覚しているのではないか。…

同盟国との、その瞬間の関係を保つことや、単なる景気回復など、一時の利害の為に憲法に手をつけるのは破局への入り口だと断言してもいい。

現実論として「憲法で禁じられているから出兵しない」というのは、誰に対しても非常に説得力のある答えではないでしょうか。…

戦争もつきつめれば、外交手段の一つです。
九条の主旨はつまり「武力による外交手段を放棄する」と言うものです。
ということは、武力に頼らない外交手段を、あらゆる手を尽くして模索する、という宣言でもあるんです。

それをきちんと果たしてきただろうか。

それがまず、大きな疑問ですね。…引用終り

無風注:余談だが、中村哲氏は、母方の叔父が「花と竜」の火野葦平、祖父が若松の親分だった玉井金五郎である。

中村哲氏は著書:『辺境で診る 辺境から見る』(石風社)で次の様にいっている。

◎『戦争協力が国際的貢献』とは言語道断である

(読者の読後感引用)

     湾岸戦争でも、イラク戦争でも、
     ほとんどの日本人は、日本が戦争をした、
     という意識はないと思います。
     かくいう私も、ありませんでした。

     でも、日本が支援したお金によって
     爆撃がくり返され、その誤爆により、
     大量の人が亡くなっています。

     そして、この本によれば、
     現地の人は、日本を『米英のイヌだ』と見ています。…引用終わり

次回に続きます。