唐茄子はカボチャ

映画と音楽と・・・

オリバーツイスト

2006年11月12日 | 映画 あ行
オリバー・ツイスト

ポニーキャニオン

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すっきりしない終わり方です。何というか、複雑です。どう書いていいのかわからないこともあって、他の人の感想もちょこっとみてみましたが、やっぱり賛否両論なようです。

良いかか悪いかという単純な分け方で言えば「良かった」です。いい映画だと思います。

でも、何かすっきりしないところが残るのはなんなのだろう・・・

最初に感じたのは、やはり、当時のイギリスの閉塞感。それは、美しい景色、絵画のような街なみが、ちょっと外れていくと・・・というよりは入っていくと汚い部分がどんどん見えて来るような感じ。子どもを使って盗みをしている人もそうですが、けんかがたえないぎすぎすした感じとか、とてもリアルな感じがしました。

当時の人権意識というか、とてつもなく子どもや女性をを虐待している大人の姿は現代に生きる人の目からはそんな次から次へと悲惨なことはありえないとも思ってしまうところもありますが、そこは、物語を盛り上げるための手段ではなく、その当時のイギリスの社会を忠実にリアルに再現したらこうなったということなんだろうと思います。

すっきりしないと思ったのはあのフェイギンを「親切にしてくれた」と感じたオリバーに対してかもしれません。そこまでやさしかったかな?と考えてしまったのです。本とお金を取りあげたり、絞首刑の話でおどしたり、代々伝わる薬だってどこまで本物か怪しいと思ってみてたし、だいたい子どもを利用して自分が儲けようなんて最低の男だと思ったわけです。あの女の子だって、フェイギンが機転を利かさなかったらこんなことにはならなかったですし。ある意味、極悪人として描いていればすっきりしたのかもしれません。でも、それでは話が単純になってしまいます。
当時のイギリスの社会の中で、子どもや働けなくなった人に社会的な保障も満足にされない社会で野垂れ死にしないで生きていく手段として泥棒をしているわけで、子どもを利用するけれども、逆に子どもに知恵をつけて養っているというみかたもできます。

自分は映像ではフェイギンの子どもに対するやさしさに気付かなかったけれども、オリバーはそれを感じたのですね。銃で撃たれてからオリバーが「命の恩人です」みたいなことも言ってたのも違和感があったのですが・・・オリバーは本心から言ってたんですね。その辺のところの自分の見たときの気持ちとオリバーの気持ちのかみ合わなさがこのすっきりしない感じを残した原因だと思います。

善と悪の区別というのは、色分けできない複雑なものだと思います。それを普通の映画では単純にしてくれるからわかりやすくなるわけですけれど、この映画ではその色分けできないところを描きたかったのかもしれません。社会背景が描かれ、そう思わせてくれます。

最後のフェレンギじゃない・・・フェイギンとオリバーのやり取りはすっきりしないくせに涙が出てしまいます。オリバーは「神よ赦してください」ってこっちに向かって言うんです。え?俺?おれがフェイギンを悪いやつだと思い込んだから?と思わずききたくなってしまいますが、みている人に直接訴えているようにも見えるわけですね。なぜ、この人の命を奪うの?と。赦してもらえないの?悪い人じゃないのに・・・って。そこのオリバーの表情にはこっちも固まってしまいました。

人が一人死ぬというのは本当は重いことなのに・・・命を軽んずる風潮に対してのメッセージかもしれません。

書いていたらなんかすっきりしてきた。

風景やロンドンの町並みは本当に違和感が無くて、きれいで・・・そして汚くて・・・とてもよかったです。

良いか悪いかきかれたら、やっぱりいい映画ですよ。うん、いい映画だ。

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