唐茄子はカボチャ

映画と音楽と・・・

椿三十郎

2010年06月09日 | 映画 た行
椿三十郎 通常盤 [DVD]

エイベックス・エンタテインメント

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この前見た黒澤明監督の作品をみて、興味を持って、それで、この映画がどんな感じになっちゃっているのかを観たくて、あまり期待もしないで観ました。他のレビューを見ると、黒澤作品と比較してぼろくそ言っているのにまじって、黒澤作品は抜きにして、映画自体を高く評価している人もいたので、そういうのも気になってました。

黒澤作品の中でも、人気の高い(のかな?)この作品を何でリメイクしようと思ったのか、、そこにどんな力が働いたのでしょうか。(幸せの黄色いハンカチがハリウッド映画になったというのも驚きですが・・・)

この作品に挑むにはかなり勇気がいると思います。比較するなというほうが無理な話で、どうしても、本の作品との比較をされてしまいます。この映画が好きな人なら、ここのシーンは、どう表現するのだろう・・・どう解釈するのだろう・・・ということになりますからね。

だから、おのずと、巨匠黒澤明に挑戦する気構えがない限り、出来ないと思うのです。素人じゃないんだから、きっと、映画を作る人ならなおさら手が出ない。立ち向かうには壁が大きすぎる。それ以前に、手を出そうなんて、思いつかないと思うんだけど・・・

そこに手を出した。手を出してしまった・・・という感じなのかな?後悔してるんじゃないかな?監督も出演者も。だって、作った本人たちだって、おのずと、過去の作品との比較をすると思うんです。

そして、比較したら、恥ずかしい気持ちになるんじゃないかなと。いや、もし、恥ずかしくなるような気持ちがあれば、完成する前に、途中で投げ出すでしょう。いや、作る前に、あきらめるでしょう。
きちんと作品として仕上げたということは、比較されても遜色ない作品が出来たと自負しているということだと思います。

比較するなというんだったら、比較されるような条件でつくってはいけません。椿三十郎をパクッた映画を作るならまだしも、椿三十郎をつくったんですからね。

そして、この作品は、黒澤監督の作品に立ち向かっていったのか。
自分の目からはそれは感じませんでした。

この作品の唯一面白いと思えるところは、脚本です。黒澤作品の前にこの作品を見たら、面白いと思う人がいるかもしれません。やっぱり脚本はしっかりしているから、それなりに、場をもたせることは出来ます。でも、それを、この作品の力だと勘違いしてはいけないんじゃないかな?

人の描き方がとても軽いですね。
奥方様も、ただの「足りない人」になっちゃってる。
奥方様の能天気な発言の中に鋭く光るなにか。その何かがないんです。気品というか、その人の生きてきた知恵というかつよさというか、そういうものがあったから、椿さんは扱いづらいというか、どこか勝てないものを感じているので、ああいう態度になると思うんだけど、これだと、ただの能天気な人なだけですもんね。
敵のお侍さん・・・また名前が出てこないけど、最後に斬られる人も軽い。これが現代の人に見やすいように変えたということであれば、よっぽど現代人は「足りない人」になってしまったのかもしれません。

椿三十郎の織田さんは、一生懸命さはわかります。でも、それだけです。この役どころ自体が、過去の作品に縛られていることがよくわかります。そうである以上、過去の作品を超えることはできません。どうせ人物を軽くするなら、思い切って、軽い浪人にしてしまった方が良かったんじゃないかな?
敵の人も、中途半端に軽くしないで、もっともっと「足りない人」たちの学芸会の方が、楽しめるかもしれません。

過去の作品をそっくりそのまま再現するか、逆にはっきりと違う方向にもって行くか、どっちかしかないはずです。

仕官するときの行列のシーンは、この前観たときに一番印象に残ったシーンですが、その計算された、スタッフが一体となってつくりあげられた映像が、見事に粉砕されてます。ずたずたに切り裂かれている感じ。

捕まった4人を助けるためにいっぱい切り殺すシーンは、相手が反撃するだけの余裕を与えないように、すばやく殺しまくるというここも計算されたシーンだと思うんですが、そこも、まったく無視して、はあはあいいながらチャンバラを披露します。あれだけ相手に刀を抜かれて正面から、かかってこられたら、絶対に死ぬのは椿さんのほうだったと思います。あそこのスピード感を殺してしまったのがダメです。解釈の違いだというかもしれませんが、違う解釈をするんだったら、それなりの説得力を持たなければいけませんよね。

最後の血飛沫の有名な決闘は、もう、どうでも良くて。だって、その決闘に至るまでがこれだとつながらないです。これだけ軽いこそ泥みたいな2人の関係であれば、怒りが収まらなくて決闘に及ぶという結果に向かわない気がします。それこそ、出し抜かれてしまった!わっはっはっは!で終わりそうなもんです。
しかも、血が出ない。あまりにも強烈な血しぶきシーンに対抗するにはどうするか、考えたんでしょうね。同じじゃ観る方はちっとも驚かないです。そのけっか、出ました。血が出ない作戦。これなら、みんな驚きます。しかも、一瞬の一太刀のたたかいじゃなく、長々ダラダラやっちゃえば、誰だって驚きます。監督に、してやられた!と、思うしかありません。

作品の要のシーンで、ずっこけます。やっちゃった感満載です。

ここまでズタズタにした以外性はすごい!誰も止められない。いや、誰も止める気にもなれない。

昔の作品の名まえに頼らなければならないのが今の映画界の現状ということでしょうかね。

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