恒例の「キネマ旬報関西読者の会ベストテン」の投票に参加した。これは関西で昨年の12月公開作品から今年の11月までに関西で劇場公開(映画祭含む)作品を対象にしてのベストテンだ。もう40年くらい前から(たぶん)参加している。なかなか選考会には日程が合わず、最近では投票のみの参加になっている。
ベストテンの投票をしてから気づいた(というか、妻から指摘された)のだが、『LOVE LIFE』を入れ忘れてい . . . 本文を読む
没後80年「萩原朔太郎大全2022」記念映画とある。でもこれは朔太郎を主人公にしたものではない。主人公はなんと三好達治だ。萩原朔太郎の娘・萩原葉子の小説『天上の花 三好達治抄』が原作だと、見終えてから知る。三好達治の詩は好き。『乳母車』なんて何度も授業でやっているけど、その度に胸が切なくなり痛む。授業で朗読しながら泣きそうになり困る。生徒の前で泣いていたら変な奴だと思われるし。だから頑張って泣かな . . . 本文を読む
今週も膨大な量の本を読んでいる。1週間で9冊ほどだ。その中にはすでに書いている今年一番の傑作長編『光のとこにいてね』や『過怠』という長編も含まれる。簡単にその2冊以外で読んだ本の感想を書き残しておこう。
児童書は2冊。魚住直子の『考えたことなかった』と佐藤まどか『雨の日が好きな人』。どちらも少し残念だ。お話の目の付け所は悪くないのだけど、展開のさせ方がよくない。猫がしゃべる。「おれはお前の未来だ . . . 本文を読む
今年も邂逅はspace korallion〈スペースコラリオン〉でクリスマス公演を実施した。今回初めて脚本、演出をしろみそ企画のなかしまひろきに依頼した。その結果、今までの邂逅とは一味違う作品に仕上がっている。このクリスマス公演では毎回様々な実験が施されていて本公演とは違う仕様になっているのが楽しい。渾身の力作で挑む本公演とは違い、肩の力の抜けた作品が新鮮だ。時には本公演よりも凄いものを見せてくれ . . . 本文を読む
これは以前アイホール+岩崎正裕プロジェクト(正確には「平成19年度 AI・HALL+岩崎正裕共同制作作品」)として公演された作品の再演だ。台本は高橋恵のオリジナル。この渾身の1作を今、満を持して虚空旅団作品として再演する。高橋恵、作演出によるこの新バージョンがどんなかたちで出来上がるのか、とても楽しみにしていた。コロナ禍で散々つらい思いをしてきた高橋恵と「虚空旅団」が、看護師を目指す学生たちの群像 . . . 本文を読む
『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督作品。生まれつき聴覚障害があり、両耳が聞こえない女性のプロボクサーが主人公。実話がベースにはなるけど、あくまでもフィクション。映画は派手な描写は一切なく、もちろん恋愛もない。だから『ロッキー』ではない。ただただ岸井ゆきのが演じる女性(ボクサー)の日々を静かに見つめるばかりだ。お話らしいお話すらほとんどない。だから、これはよくある熱血「スポコンもの」でも感動「実録も . . . 本文を読む
この冬一番の大作映画が公開された。ジェームズ・キャメロンの久々の最新作、そしてそれはあらゆる意味で空前絶後の超大作だ。『殺人魚フライングキラー』から『ターミネーター』と低予算で凄い映画を作っていた初期の彼の映画が好きだった。『ターミネーター』は公開前に試写で見て感心した。こんな面白い映画を作るんだ、と感動した。最初はなんだかしょぼいSF映画のように見えて(未来の荒廃した光景をその辺に散らばる骸骨の . . . 本文を読む
山本能楽堂を舞台にしてまるで能舞台のような静謐な空間を造形する林慎一郎の新作。開演前から警備の男がそこにはいる。もちろん無言で目を光らせている。夜の闇の中にたたずむ。この冒頭から作品世界に引き込まれる。そこに男がやってくる。舞台中央、この芝居唯一の舞台装置の中に入る。そこは電話ボックスで、彼は居眠りをする。この白い砦のような空間は周りの闇から身を守るための場所だ。そこに警備員がやってくる。「こんな . . . 本文を読む
AチームはBチームの野放図な肉団戦とは違い、洗練された芝居になっていた。そこには演出のイトウワカナさんの美意識がしっかりと前面に出る。役者たちの衣装もユニホームにしていて統一した。ピンクのヤッケと白のポロシャが眩しい。
こちらは冒頭、まず新人が出てくるシーンから始まる。彼は黙々とひとり店長から言われた作業をしている。丁寧に買い物カゴの消毒をする。そこに5人の先輩たちが順番に登場するというかたちで . . . 本文を読む
久しぶりに『青木さん家の奥さん』を見る。これまで高校演劇も含めてたぶん10回は見ているだろう。もちろん南河内万歳一座による初演も見ているはずだ。もう30年も前の話なのであまり覚えていないけど、ただ凄まじいエネルギーの無駄使いのような芝居だったことははっきりしている。そして、それがこの作品の魅力であることも。
今回DIVEがこれを取り上げふたつの作品として仕上げた。実は今週は芝居を見れないはずだっ . . . 本文を読む
既に2巻が刊行されているけど、まず当然この1巻から読み始めた。前半はなんだかもたもたしていてつまらないかも、なんて思うがだんだんこの世界にはまっていく。主人公はもうすぐ15歳になる少女、矢口楓。弓道に興味があったわけではない。だから偶然だ。でも、気が付いたらこれが彼女の毎日の生活の中心になっていく。そんな彼女と同じように最初はなんとなく読んでいたのにいつのまにか、気づくと僕はこの小説の世界に引き込 . . . 本文を読む
今年のベストは先週読んだ『光のとこにいてね』で決まりだと確信していたのだが、さらに1冊。凄い本と出合った。年末怒濤の傑作ラッシュだ。うれしい。2週間後に今年のベストテンの選考をするつもりだけど、さて何になるのか。というか、今年は予定通り300冊読むという目標が達成できそうだ。そちらもうれしい。今年はその中からのベストテンである。楽しみ。でも、1月とかに読んだ本は内容を忘れている。それどころか読んだ . . . 本文を読む
フィル・ティペットがなんと30年の歳月をかけて作ったという執念の一作。ストップモーションパペットアニメの金字塔。凄い造形だ。『デル・トロのピノッキオ』と前後して見たのでついつい比較してしまうけど、どちらも凄まじい。ふたりの方向性はまるで違うけど凄いものを作ったという意味では双璧をなすのではないか。ただこれは『ピノッキオ』とは違い何が何だか訳がわからない映画で、唖然とするしかないような代物だ。84分 . . . 本文を読む
Netflixの劇場公開作品。昨年に引き続き今年もこの時期に同時公開作品が多数配信されている。これはその1本。今シネリーブル梅田でも上映されている。もちろん配信で見た。同じタイプのストップモーションアニメ『マッド・ゴッド』は劇場で見たのだが、もし2本とも劇場公開のみで1本を選ぶならこちらを見ていただろう。
デル・トロのTVシリーズ『ギレルモ・デル・トロ 驚異の部屋』(全8話)を予習を兼ねてという . . . 本文を読む
佐藤泰志の原作小説映画化第6作。こんな地味な作家の小説がこんなにも大切にされ映画化されるなんて奇跡だろう。それくらいに彼の作品は気鋭の映画作家を刺激する。これまでの5作はいずれも秀作揃いだった。そんな佐藤映画だったのだが、今回は少し乗れなかった。いままでの函館発の映画から舞台を東京近郊へと移したことが影響した、というわけではない。監督の力量不足というわけでもない、はずなのだ。これは今油が乗り切って . . . 本文を読む