実話の映画化なのだけど、このはちゃめちゃぶりには驚かされる。プロレスにすべてをかける家族のお話。よくあるスポコンものなのだけど、安心して見ていられる。こんな嘘くさいお話なのに、実話というのがいい。エンディングで紹介されるモデルとなった家族の肖像(写真で紹介されていく)が、映画の家族そっくり(まぁ、モデルとなんてるのだから、あたりまえでしょうが)で、笑える。ドキュメンタリータッチの映画ではない。絵に . . . 本文を読む
自分に何ができるのか。何を望むのか。心臓移植手術で命を取り留めたのに、何に対しても無気力になり、生きるハリを失ってしまった。そんな女性が主人公。冒頭はそんな彼女のめちゃくちゃな日々がスケッチされる。あきれ返る。見ながらさすがに「それはないわぁ、」と思う。そんな彼女がひとりの男性と出会い、そんな彼のポジティブな姿勢に、最初は「なんなんだ、こいつ、」と自分を差し置いて思うのだけど、彼と一緒にいるうちに . . . 本文を読む
こんな地味なクライムサスペンスがひっそりと映画館で上映される。たまたま見たのだけど、これがなかなかの拾い物。最初から最後まで緊張感が持続する。次はどうなるのかと、ハラハラドキドキさせられる。でも、奇想天外なアクション映画ではない。よくある潜入捜査物なのだけど、すべてから見放された男が家族を守りながら、生き残りをかけて戦うというお話が、落ち着いたタッチで丁寧に描かれる。どこかで見たような手垢のついた . . . 本文を読む
3人の男女による今(2018年)と昔(2011年)をそれぞれの視点から描く。大学時代棒高跳びをしていた。2人は同じ大学の陸上部のチームメイトだ。友人であり、ライバルでもある。しかも、名前も同じ。佐藤倫太郎と佐藤林太郎。かたや平凡な記録保持者、かたや全国レベルの花形選手。そんなふたりを見守る一人の少女。彼女は彼らの跳ぶ姿を絵に描く。自分も跳ぶことを体感したくて一時は陸上部に入部する。(でも、すぐにや . . . 本文を読む
6人の作家たちによる短編連作アンソロジー。共通するテーマはタイトルにあるように、「行きたくない」という気持ち。それがエスカレートすると「生きたくない」になるのは必定のことだ。それぞれの作品が様々な角度から「行きたくない」想いを切実に語る。僕も少し同じような気分だったから、わかる。仕事に行きたくない、という想いを抱えながら電車に乗る。その電車の中でこの本を読む。もちろん、共感する。そして、職場にたど . . . 本文を読む
この芝居を見ながら、大竹野によるこの台本は他の彼の作品と較べてあまり上手くないな、と思った。「大竹野正典ぼつじゅう企画」の作品をずっと見てきて、というか、彼の作品をずっと見てきて、つまらないと思ったことはなかったけど、今回この芝居を見ながら「この台本はつまらない、」と思わされた。でも、これが20代の若かりし日の作品だということを考えると、今の僕がそう思ってもしかたないことだろう。そ . . . 本文を読む
公開から5ヶ月が過ぎても、まだ上映は続く。お正月まで上映が続くのではないか。7月の公開時に見たけど、もう一度見たくて、劇場に行った。今年は異常気象で、秋の台風の折、東京でも大雨が降り、日本中で河川の氾濫や大規模の浸水が続いた。荒川が決壊していたならこの映画そのままに風景が現出していたかもしれない。まるで、この映画が予見したことが現実になったようだ、と思った。
ずっ . . . 本文を読む
寺田夢酔が今回取り上げたのは三島由紀夫の『近代能楽集』。「班女」「熊野」「葵上」の3つのエピソードを2本立で上演する。重い芝居だから、3本一挙上演ではしんどい、という配慮か。
僕が見たのは「班女」と「熊野」。2本で1時間20分。あっという間の出来事だった。なんとも不思議な空間に誘われる。そこはリアルではなく、象徴的で、極度の緊張を強いられるそんな空間だ。少人数の男 . . . 本文を読む
見始めてすぐ、気分が悪くなってきた。この芝居の描く世界は僕のふだんの日々と地続きだからだ。学校へ行くことが苦痛になっている僕の今の現実を芝居でまで再現されてはかなわない。吐き気がする。もちろん、それは大袈裟だけど。
それにしても、この芝居が描く学校現場はとてもリアルでしんどい。この芝居に登場する先生達は疲弊している。こんなことが続くと、いつの間にか学校が苦痛になってくることだろう . . . 本文を読む
なんと2時間50分の大作である。これはありえない長さだ。劇場に入るとき、その上演時間を知り、啞然とした。しかも、内容はバカバカしいコメディである。そんなものを延々と3時間近く(休憩10分を挟んで)見せられるのか,と思うと、見る前からうんざりした。自己満足の笑えないコメディが延々と続く地獄を想像して身震いした。
前半、当然のように悠々たるタッチで、ゆる~いコメディが . . . 本文を読む
4世代の女たち。長崎の旧家を舞台にして祭りの日に久々に家族が揃う。80代の祖母と60代の母親。40代のふたりの娘。さらには次女の20代の娘。そこに11歳の近所の子も加わるから、なんと、都合5世代にわたる女たちの群像劇になる。彼女たち6人が集う。さらにはそこにやがて生まれてくるはずの未来の子どもたち2名も含めて、8人のお話。代々続いた「家」というものが消えていくことになるのではないか . . . 本文を読む
年末といえば忠臣蔵、なんていう時代ではもうないけど、今年は久々に忠臣蔵映画が登場した。松竹映画のお得意のちょっとふつうじゃない時代劇シリーズとして。『殿、利息でござる!』のあのテイストの映画だろうと楽しみにして劇場に向かったんだが・・・う~む。
これはむごい映画だ。これだけの大作映画なのに、このつまらなさ。しかも、監督はハズレなしの中村義洋! なのに、なんなんだ、このくだらなさ。お話がまるでない . . . 本文を読む
こんなヘンテコな映画が作られ、TOHOシネマズで公開される。最近はなんでもありで、楽しい。B級映画だけど、キャストも地味というか、ほとんど知らない人だけ(僕が知らないだけかもしれないけど)で、自主映画に毛が生えたくらいの低予算作品なのに、なんだかアイドル映画みたいなテイストで、主人公の2人を売り出し中の若手俳優にでも演じさせても成立する。毒のある映画だけど、マイルドなテイストなので、誰が見ても大丈 . . . 本文を読む
これは面白い。『シャイニング』の続編なのだが、スティーブン・キングの小説の映画化というだけではなく、大胆にもキューブリックの傑作映画の続編をも視野に入れた映画なのだ。テイストは明らかに違うのだけど、あの世界観を踏襲する。終盤雪に閉ざされたあのホテルにたどりつきたところからの怒濤の展開が素晴らしい。キューブリックのあの映画の世界が再現される。先日『IT』の続編をようやく見てどうして終盤の展開がつまら . . . 本文を読む
とても期待したのだが、残念な映画になった。大人のラブストーリーという触れ込みだったが、ラブストーリーとしても中途半端だし、生き方についての映画としても、だめ。平野啓一郎の小説の小説の映画化という高いハードルを乗り越えられなかった。もちろん、西谷弘監督作品だから、しかも、というか、当然、フジテレビの制作だから、メジャー大作仕様だ。万人向けの映画が目指されることも必至だろう。だけど、あえてこの原作を選 . . . 本文を読む