これは面白い。『シャイニング』の続編なのだが、スティーブン・キングの小説の映画化というだけではなく、大胆にもキューブリックの傑作映画の続編をも視野に入れた映画なのだ。テイストは明らかに違うのだけど、あの世界観を踏襲する。終盤雪に閉ざされたあのホテルにたどりつきたところからの怒濤の展開が素晴らしい。キューブリックのあの映画の世界が再現される。先日『IT』の続編をようやく見てどうして終盤の展開がつまらないのか、とがっかりした直後だったので、この映画の見事な猿真似は凄い。オマージュというよりも再現でしかないのだが、そこまでの展開がうまいから納得する。
超能力のお話なのもいい。「シャイニング」という言葉自身が「特殊な能力」という意味なのだからこの映画の前半が超能力集団との対決になっても構わないし、それってキューブリックとはまるで違う。だから、前半はB級映画テイストなのだ。だけど、あれよあれよという間にお話は展開していく、実にうまい。
主人公となる2人のそれぞれのドラマが丁寧に描かれていくのもいい。キングの映画化はお話の大筋だけを追うと単純になるけど、原作も枝葉の部分が面白いのだから、そこもちゃんとフォーローしてくれると嬉しい、2時間半の長尺だからそれが可能だったのだ。もちろん、それだけの長さを感じさせないというのが成功の理由で、実にテンポがいい。何をしても芸術映画になるキューブリックの跡を継ぎながら、確実に娯楽活劇でもあるこの映画はそれでもキューブリックへのオマージュにもなっていて、さらには独立した1本の作品として成功している。なんだか奇跡のような映画なのだ。まぁ、そうはいいつつも、それほど凄いとは期待せずに見たら楽しめる、と言うほうがいいだろう。前作でジャック・ニコルソンが演じた狂気の主人公の息子が成人したらユアン・マクレガーっていうキャスティングもなかなかみごと。ユアンがとてもいい。父親譲りに狂気の人を体現した。斧を持ったら父親そっくり。