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映画・演劇のレビュー

『マチネの終わりに』

2019-12-04 19:20:12 | 映画

とても期待したのだが、残念な映画になった。大人のラブストーリーという触れ込みだったが、ラブストーリーとしても中途半端だし、生き方についての映画としても、だめ。平野啓一郎の小説の小説の映画化という高いハードルを乗り越えられなかった。もちろん、西谷弘監督作品だから、しかも、というか、当然、フジテレビの制作だから、メジャー大作仕様だ。万人向けの映画が目指されることも必至だろう。だけど、あえてこの原作を選んで、テロや社会状況も織り込んで、甘いだけの映画にはしないという覚悟をもって挑んだはずなのだから、もしかしたら、という期待もあった。

というか、50代の男女のプラトニックな恋を描くというのは今の日本映画において凄い冒険ではないか。もちろん、福山雅治と石田ゆり子がふたりとも実年齢が50歳というだけで、役の設定はもう少し若い。40代だろう。有名なギタリストである彼がスランプに陥るという設定もおもしろい。そんな時、彼女と出会い恋に陥る、弱くなっている心とどう向き合うか。彼女への想いが仕事にどう影響を与えるか。そんなこんなが上手く描けたなら、これはかなり異色の映画になったかもしれない。くたびれ始めた男と女がもう一度自分の人生を見直すドラマとしても作れる。美男美女でも歳を取る。自信をもって生きてきた自分の人生に、疑問も持つ。そんな時間をこの映画は切り取ることが可能だったはずなのだ。もう若くはない、くたびれ始めた男女のあがきのようなもの。それが納得のいくロマンチックなラブストーリーとして提示できたなら、なんだか凄くはないか。

パリ、東京、ニューヨーク。3つの都市、3度の出会い。人生を揺るがす恋。ロマンチックな、まさに映画らしい映画でいい。だけど、それだけにとどまらない、これがそんな映画ならうれしい、のだが、そうはならない。綺麗ごとのその先に大切な「何か」があれば、それだけでもよかったのだが。とても、残念だ。


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