ドイツ同時代演劇リーディングシリーズとして上演された本作品はリーディングと言いつつも限りなく普通の演劇公演に近い上演スタイルとなっている。これはイロリムラのプチホールという狭い空間を生かして、このスペースだから可能な本格演劇公演だ。シンプルなのにとてもよく考えられた舞台美術が素敵だ。マンションの1階から11階までを象徴した木枠の中を役者たちは上から下へ、下から上へと移動する。もちろん横移動もする . . . 本文を読む
僕は断然ジャッキー派だ。僕たちの世代はブルース・リーから多大な影響を受けている。だが、夭折した彼より、ずっと生き続けるジャッキーの挑戦を断固支持する。まぁ、どちらがどうとか、そんな問題ではないことなんか、誰より自分自身がよく知っていることなのだが、それでもまず、こんな話からこの映画のことを語り始めたい。
『酔拳』からずっとリアルタイムでほぼすべての作品を見てきた。最初はバカバカしいと思うこと . . . 本文を読む
思いもしないところで、思いがけない芝居と出会ってしまうと、なんだか生きていてよかったよ、と思うくらいにうれしくなる。宴劇会なかツぎの芝居は前回も見ているので、なんとなくの、イメージがあった。でも、今回は作、演出が変わっているから、前回のイメージとはまるで違う作品になっていてもおかしくはなかったのだ。だから、これは不意打ちではない。僕が、ぼんやりしていただけの話だ。でも、こういう驚きがたまにあると . . . 本文を読む
これは結構大変な芝居なのだ。それをNGRのアトリエの、あの小空間でやろうとするのは画期的な挑戦だと思う。むちゃを承知でそれを楽しみ、押し通すのは浦部さんの少年っぽさゆえで、それが今回いい方向に発揮された作品になったのがうれしい。
5人のNGRの女優たちも、この狭い空間で、ドタバタあり、ダンスありで大忙しのこの芝居をよく乗り切った。繰り返される衣装替えもあって、体力勝負のこの芝居を、必ずしも若 . . . 本文を読む
きっとそのうち当麻さんはやる、と思っていた。だから、今回が『マッチ売りの少女』だった時、やっぱりね、としか思わなかった。というか、ようやくか、とも。でも、僕たちが思う以上に当麻さんは覚悟を決めてこの作品に挑んだのではないか。これまでのSSTプロデユースでの作品の総決算としてこれに挑んだはずだ。この劇場で、ずっと別役作品を手掛け、2人芝居を通して、ささやかな幸福と、それが如何に脆いものかを、描き続 . . . 本文を読む
5つの短編による連作長編。一部微妙にリンクしている。オムニバスだが、トータルなイメージを提示したいようだ。それがこのタイトルだろう。(原題もこのままではないか)登場人物は、どのエピソードも2人のみ。基本的に男女2人が(男同士のカップルの話がひとつあるが)向き合う20分ほどの時間がリアルタイムで描かれていく。なんと宣伝によるとこの映画の監督は韓国の岩井俊二と評判らしい。
カメラは、彼らから目を . . . 本文を読む
タイトルロールの作品は同棲して半年、もう一編の『自然に、とてもスムーズに』は、3年目の同じカップルの日常を描く連作。彼らの日常がさりげないふたりの会話から立ちあがってくる。最初はあんなに幸せだったはずなのに、今ではとても息苦しい毎日だ。それを乗り越えるために、女は結婚に踏み切りたいが、男にはそんな気はないし、それには反対にちょっと不安。きっと結婚によって、何かが変わるわけではない。(経験上僕たち . . . 本文を読む
本年度のアカデミー賞で作品賞を受賞した。とても地味な映画で日本では劇場公開時はまるで話題にならなかった作品なのに、アカデミー賞効果で、3月には劇場で再上映され、続いてDVD化もされた。確かに悪くはない。だが、これが数ある作品を押しのけ、最優秀作品賞を獲るほどの映画だとは思わない。まぁ、昨年の『アーティスト』も小粒過ぎて、これが最優秀作品賞なんか? と思ったけど、今回もなんだか物足りない。もちろん . . . 本文を読む
アクサルの『11人いる!』を見たとき、惜しい、と思った。企画としては申し分がない。男性だけの集団として活動する彼らのレパートリーとして、この漫画を持ってくるのは上手い選択だ。だが、ミステリータッチのこの作品の肝は密室での犯人探しではなく、ここに個性が際立つことで、彼らがどう成長していくことになるのか、そこをちゃんと見せきれなくては意味がない。ドラマとしての奥行きに欠けるから、表面的な派手さが余計 . . . 本文を読む
かなり今、心が弱っているだけに、こういう小説が、実際以上に心に沁みてくる。これは先日読んだ誉田哲也『幸せの条件』に続く「農業もの」だ。主人公はあの小説と同じで、24歳。但し、こちらは男だが。まぁ、そんなことはどうでもよろしい。どちらも稲作を通して今までの生き方を見つめ直す、という話だ。都会で生活することで、疲れてしまった現代人にとって農業は夢の世界の出来事なのか。現実はこれらの小説で描かれるよう . . . 本文を読む
中上健次の世界を若松孝二が描く。『連合赤軍』(正確には『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』だが)以降むかうところ敵なしの勢いで驀進してきた若松監督の遺作になってしまった作品である。生きていたならこの後もまだまだ新作を続々と作り続けていたはずだ。だから、この作品は彼の到達点ではない。ただの通過点に過ぎなかったはずなのだ。でも、これが最期になった。しかも、なぜかこういう文芸映画のような作品である。 . . . 本文を読む
相棒シリーズ、なんていうタイトルで1本の映画が作られることに驚く。それくらいにTVシリーズ『相棒』は人気番組なのだろう。しかもこのスピンオフ作品は水谷豊がほとんど登場しない。もちろんスピンオフなのだから本来の主役が出る必要はない。脇役であるキャラクターをメインに据えて、同じ世界観のもと作品を作るのだから、当然だろう。だが、こんなにも地味なキャスティングで大丈夫なのかと、僕のような門外漢はいらぬ心 . . . 本文を読む
ベトナムからの笑い声の黒川猛による一人芝居。企画ユニットTHE GO AND MO'Sとして1年間で6本京都で活動してきて、今回が初の大阪公演となった。僕は、初めて見たのだが、とてもバカバカしくてすごい。よく、こんなにもあほらしいことをちゃんと真面目に見せきれたものだ。感動する。見終えたなら、その瞬間から忘れてしまうくらいにくだらない。先週見たのだが、パンフを見なければ、内容が思い出せなくて困っ . . . 本文を読む
岩井俊二監督久々の新作は全編アメリカロケで、アメリカ人キャストで撮られたアメリカ映画。でも、映画の製作母体は日本なのだろうけど。製作規模は小さくて、自主映画のようなスケールなのだが、自主映画の安っぽさはない。日本人キャストは蒼井優だけ。(後で調べると、アメリカではなく、カナダだった。)
別にどうということのない話なのだが、最初から最後まで、緊張感が貫く。岩井俊二とよく似た男が主人公を演じてい . . . 本文を読む
豊田利晃監督はどうしてこんな映画を作ろうとしたのだろうか。前作の『モンスターズクラブ』の時も同じようなことを思った。(思い返せば『蘇りの血』の時もそうだった。)今回も、ただ戸惑いばかりが大きい。話自身はとても興味深いのだが、この話の中で監督の思いがどこにあるのか、それがよくわからないのだ。
新興宗教の若き教祖(藤原竜也)が、交通事故を起こし、それがきっかけで団体を抜けたくなる。その心境の変化 . . . 本文を読む