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映画・演劇のレビュー

『バビロンの陽光』

2012-04-17 19:57:57 | 映画
 12歳の少年と彼の祖母が、少年の父親(もちろん祖母の息子でもある)を探して旅にでる。タリバン政権が崩壊して、3週間、軍に徴用されていた父親と再会するため2人は、故郷の村から旅立つ。少年は一度も父に会ったことがない。父が連れていかれたのは12年前だからだ。  とても生々しい戦争の傷跡があらゆるところに残る。ロードムービーなのだが、まるでドキュメンタリーのようだ。少年が見るすべてが、僕たちの目にも . . . 本文を読む
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『バトルシップ』

2012-04-16 21:01:39 | 映画
 何も考えなくていい映画が見たかった。ただ、ぼんやりとスクリーンに向き合い、うわぁすごいよ、とか、言って感嘆の声を上げるだけでいい。頭を使うのは嫌で、ただ、おお、とか、うへぇ、とか、うひょぉとか喚いているうちに終わるような幸福な時間を過ごしたかったのだが、なんだかそこまで、ノーテンキを楽しめる映画ではない。しかもB級映画テイスト満載が、裏目に出ている。『ハンコック』の監督なので、少しは期待したのだ . . . 本文を読む
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『ルート・アイリッシュ』

2012-04-13 22:04:14 | 映画
 今週から新学期が始まって、とてつもなく忙しい。今年は3年の担任だし、それより何より、クラブだ。身体の調子が最悪で、先月の末から右肩が痛くてまともに腕も上げられないのに、ノックもちゃんとやるし、試合にも入って生徒の相手をしてきたのだが、それもあって痛みはどんどん増してくる。さらには原因不明の右脇腹の強度の痛み。あげくはまともに身体も動かせなくなる。さすがに怖くなり、医者に行ったが、原因はよくはわか . . . 本文を読む
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オリゴ党『事件の夢、夢の事件』

2012-04-11 21:28:36 | 演劇
 夢オチの話を2時間、飽きさせることなく紡ぎ上げていくというのは、かなりの力量を要する。タイトルだけでなく、作品の冒頭で、これは夢オチであるから、なんでもありなのだ、と断定した上で話を始めるミステリー。その掟破りの大胆さは、作者の余裕のあらわれだ。それだけ言っておいても観客を2時間楽しませる自信が岩橋貞典さんにはある。観客はこの大胆で緻密に組みたてられたお話から目が離せない。  これはサブタイト . . . 本文を読む
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中田永一『くちびるに歌を』

2012-04-11 20:58:29 | その他
『吉祥寺の朝比奈くん』のゆるさがなかなか心地よかった中田永一の最新作。五島列島にあるとある島で暮らす中学生たちを主人公にした長編。合唱部の子供たちのお話だ。  産休補助で1年間音楽の教師としてやってきたとてもきれいな女先生にあこがれて、下心満載の男子たちが合唱部に入部してくる。従来の女だけのクラブから、男女混合のクラブになって、戸惑いながら、新しいスタートを切る彼らの中3の日々を描く。お話自体は . . . 本文を読む
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魚住直子『ピンクの神様』

2012-04-11 20:53:31 | その他
 魚住直子初の大人向き作品集、ということなのだが、主人公は大人も混じっているが、やはり子供が中心だ。小、中学生のクラス内の人間関係を扱ったものが多い。読みながら胸が痛くなる。これは誰もが心当たりの有ることだろう。新しい学校での、新しいクラスでの最初の時間。ちゃんと友だちが作れるのか、とても不安。  それは、大人になっても同じだ。社会人として、職場に入った最初の時、うまく人間関係を作れるのか。消防 . . . 本文を読む
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劇団ひまわり大阪俳優養成所18期研究科『お気に召すまま』

2012-04-09 20:45:57 | 演劇
 横山拓也さんの作、演出による作品だから、見に行った。初演は見ていない。売込隊ビームで、これをやったわけではないようだ。メイシアターの企画ものとして上演された作品らしい。もっと、とことん原作を改変したなら、よかったのだが、さすがにそれは出来なかったのだろう。原作であるシェイクスピアの戯曲に縛られて、中途半端な内容になっている。ここから何を見せようとするのかが、よくはわからない。  原作の持つ世界 . . . 本文を読む
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『ヘルプ 心をつなぐストーリー』

2012-04-09 20:08:59 | 映画
 こういう心暖まるヒューマンドラマが、全米で3週連続№1ヒットする、っていかにも、って感じだ。でも、アホっぽいアメコミ・ヒーローものが、受けるよりもいいのではないか。特別すごい映画、というわけではない。だが、丁寧に作られてあるし、2時間半に及ぶ長尺なのに、最後まで飽きさせない。それほど長さを感じさせない。  1960年代、まだ黒人メイドが差別されていた時代の話だ。ひとりのちょっと勘違い白人女が、 . . . 本文を読む
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『わが母の記』

2012-04-07 08:54:59 | 映画
 原田眞人監督が、こんなタイプの文芸映画を手掛けるなんて、なんだか不思議だ。それくらい彼も歳を取ってしまった、ということなのか。でも、彼が手がける以上、ふつうの文芸映画なんかにはならない。これはまず、戦いのドラマだ。そういう意味では『タフ』や『ガンヘッド』の頃と変わりない。母と子が対立しながらも、お互いと向き合い、家族という大きな枠のなかで、それぞれが甘えることなく、自分を貫いていく。ここに母と息 . . . 本文を読む
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岩井俊二『番犬は庭を守る』

2012-04-06 19:49:25 | その他
 3・11以降をテーマにした映画や小説、演劇は怒濤のように作られた。この後もまだまだ続く。当然のことだ。さまざまな問題が山積されている。岩井俊二監督は、ドキュメンタリー映画『friends after 3.11』も今、公開されているが、この小説は明らかに劇映画の題材だ。映画化を前提にして書かれたのだろうが、このままでは内容が過激では、なかなか企画が通らないのではないか。    もし、映画化されたな . . . 本文を読む
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『ポエトリー アグネスの詩』

2012-04-05 09:48:01 | 映画
 イ・チャンドンの新作である。ようやく、見ることが出来た。1日1回上映になっていて、しかも、お昼の上映しかないから、1日休める日にしか見れない、というハンディーを乗り越えようやく劇場で見ることが叶う。うれしい。この傑作を見逃すくらいなら、10本の映画を見落とすほうがましだ。つまらない映画が束になって見叶わない映画がある。ならば、当然凄い映画をちゃんと見るべきだろう。  震える。スクリーンから一瞬 . . . 本文を読む
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『僕等がいた』

2012-04-05 08:42:21 | 映画
 春休みの映画館は10代の女の子たちでいっぱいだった。これは今を生きる子供たちのための恋愛映画である。たぶん。大ヒットマンガの映画化という黄金のパターンなのだが、安易な映画ではない。『ソラニン』『管制塔』の三木孝浩監督だから、当然の話だ。お話自身は少女漫画でしかないような内容だが、それをバカにするのではなく、誠実に映画化しようとしている。高校2年生の男女の恋愛をテーマにして、その周辺のことは一切排 . . . 本文を読む
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コンブリ団『ムイカ 再び』

2012-04-02 21:52:52 | 演劇
 第17回OMS戯曲賞を受賞した『ムイカ』の再演である。今回は初めて見たときのような驚きはない。当たり前のことだ。2度目なのだから、どんな方法をもって何を語るのかもちゃんとわかっている。  でも、前回は、そうではなかった。ムイカが六日で、8月6日であることすら、気付かずに見始めたから、衝撃的だった。はしぐちさんが話の枕に故郷の広島の話を持ち出してきただけで、どこから本題に入るのか、なんて油断して . . . 本文を読む
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かのうとおっさん『ようこそガンダーラ温泉』

2012-04-02 21:51:56 | 演劇
初めてかのうとおっさんの単独ライブを見ることになった。今までも、彼らの出演した数々の芝居や、短編コントを見てきたから何をいまさら「初めて」と強調するのも何なんだが、単独ライブは今回でvol.15と銘打たれてある。それだけ公演を続けているのに、ようやくこうして長編作品を見るのだ。感慨深い。だから殊更「初めて」を強調する。しかも、この作品は彼らにとっても、劇場で長編芝居のスタイルでする久しぶりの公演 . . . 本文を読む
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『シェイム』

2012-04-01 20:21:45 | 映画
 この突き放したような見せ方が快感になればいいのだが、残念ながら僕にはそうはならなかった。どこまで行っても共感もできないし、(主人公に、ではなくこの映画に、である。この主人公には最初から嫌悪感しかない)監督であるスティーブ・マックイン(凄い名前だ!)の見せたいものが、伝わらない。  抑えた描写は悪くはないし、淡々とこの男の生活を追うのも好きだが、セックス依存症(というより、それすら苦行のように見 . . . 本文を読む
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