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映画・演劇のレビュー

劇団きづがわ『真珠の首飾り』

2013-12-13 20:41:05 | 演劇
 これはとてもオーソドックスな芝居だ。正攻法で自分たちのメッセージを声高に伝える。伝えたいことがあるから、それをしっかり伝えきる、そのための芝居だ。しかし、それがひとりよがりの押しつけにはならない。気持ちのいいほどにストレートなメッセージがちゃんと届く。しっかり受け止めた、と言える。そんな芝居なのだ。演出の林田時夫さんの熱い想いが客席に沁み渡る。

 日本国憲法がいかにして作られたのか、という戦後秘話を通して、GHQと民間人の手によるたった1週間ほどで作られた憲法草案が、日本の戦後から今までの日本人の根幹を作ることになる。アメリカ人の作った理想が日本人の未来となる。だが、そこにあるのは、日本とかアメリカとかいう問題ではなく、人としてどう生きるか、という問いかけだ。この芝居が見せたかったものはそこに尽きる。理想は現実の前で力を持たないわけではない。理想のないところに未来はない。

 先週見た劇団未来ヴァージョンは100分の作品だったのに対して、この作品は125分ある。(途中で10分休憩を挟んで2部構成)だが、そこには大きな差はない。コンパクトにまとめても、じっくり見せても同じように作品内容がゆがめられることなく、伝えきることが出来たのがいい。今回たまたま(だろうが)競作されたが、ここで必要なことは、自分たちの個性をいかに作品に反映させ、オリジナルのよさを伝えきれるかどうかだろう。そういう意味でもこの2作品はどちらも、とてもよく出来ている。

 22歳で人生の半分以上を成し遂げたといえるくらいに充実した時間を生きることが出来たと、ベアテは言い切る。そういう実感を持てることって、凄いことだ。芝居はそんな彼女の視点から描かれる。「ベアテの目から描かれたあの日々」というこの視点が、この作品のポイントだ。彼女を巡るドラマというミニマムな側面を大事にしなくては、これは成立しない。彼女はただの語り部ではなく、この群像劇の確かな主人公なのである。その一点が未来版よりも明確にされてあったのが、よかった。これは情に流させる芝居なのだ。クールな劇団未来の芝居とは違う。(もちろんどちらがいいとか、わるいとか、そんな話ではない。)

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