
今までの吉田修一とはがらりとイメージを変え本格派推理物のスタイルで犯罪小説を見せてくれる。しかし、犯人探しなんかには当然ならない。
21歳の保険外交員、石橋佳乃が、福岡市と佐賀市を結ぶ国道にある三瀬峠で殺される。犯人は長崎郊外に住む若い土木作業員、清水祐一。出会い系サイトで知り合い、痴情の縺れから殺害に至ったものと思われる。とても簡単な事件だと思われた。しかし、殺人に簡単も難しいもない。人の命が奪われてしまうのである。そこに軽い重いなんてあるはずがない。
背後に複雑な事情が絡まりあっているわけでもない。とても単純な心の綾が、それぞれの中にあり、それを吉田修一はいつものように淡々と見せていくだけだ。なのにその静かな語り口にどんどん引き込まれていくことになる。
読み始めた時には、当然のように殺人犯の男がタイトルロールの≪悪人≫だと思い読んでいた。しかし、読み進めて行くうちに、いったい誰が≪悪人≫なのだか、よく分からなくなっていく。吉田修一の描くこのシンプルでその実、奥が深いタイトルの描くものに取り込まれていく。
このインパクトの強いタイトルはキム・ギドクの『悪い男』に匹敵する。タイトルがよく似てるというだけではなく、その強烈な衝撃が鋭く本質を射抜いていくからだ。
彼女と彼は、誰に会いたかったのか。そして、誰と出会ってしまい、何を見ることになるのか。それがこの長編の中で掘り下げていかれることになる。久々に読み応えのある大作と出会えた。
21歳の保険外交員、石橋佳乃が、福岡市と佐賀市を結ぶ国道にある三瀬峠で殺される。犯人は長崎郊外に住む若い土木作業員、清水祐一。出会い系サイトで知り合い、痴情の縺れから殺害に至ったものと思われる。とても簡単な事件だと思われた。しかし、殺人に簡単も難しいもない。人の命が奪われてしまうのである。そこに軽い重いなんてあるはずがない。
背後に複雑な事情が絡まりあっているわけでもない。とても単純な心の綾が、それぞれの中にあり、それを吉田修一はいつものように淡々と見せていくだけだ。なのにその静かな語り口にどんどん引き込まれていくことになる。
読み始めた時には、当然のように殺人犯の男がタイトルロールの≪悪人≫だと思い読んでいた。しかし、読み進めて行くうちに、いったい誰が≪悪人≫なのだか、よく分からなくなっていく。吉田修一の描くこのシンプルでその実、奥が深いタイトルの描くものに取り込まれていく。
このインパクトの強いタイトルはキム・ギドクの『悪い男』に匹敵する。タイトルがよく似てるというだけではなく、その強烈な衝撃が鋭く本質を射抜いていくからだ。
彼女と彼は、誰に会いたかったのか。そして、誰と出会ってしまい、何を見ることになるのか。それがこの長編の中で掘り下げていかれることになる。久々に読み応えのある大作と出会えた。